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受験英語と「don't think」

こんにちは!
今回は「~と思う」を意味する「think」の否定形について書いていきたいと思います。

学校では、「私は彼は来ないと思う」という和文を英訳するとき、

I don't think he is coming (または he will come 等々).

と訳すと習い、

I think he is not coming (または he will not come 等々).

とは訳さないと習うと思います。

「『来ない』と『思う』」という日本語に引きずられて、

「I 『think』 he is 『not coming』…」と訳してしまうわけです。

これまで「受験英語ではこう習うけれど、実際は違う」という記事をいくつか書いてきましたが、今回については受験英語で習うことは「正しい」です。

一方、「I think he is not coming」が文法的に間違いかというと、そうではないようです

文法的に間違いではないのですが、使われる範囲が限られているのがポイントです。

「I think he is not coming」と言うときは、「彼は来るだろう」と想定されていることが前提です。

しかし、約束の時間を過ぎても彼の姿は現れない。
このように「予想に反した」ときに言うのが、

I think he is not coming.

です。

日本語に訳してみるなら、

「彼が来るとは私には思えない」

となるかなと思います。

「I don't think he is coming.(私は彼は来ないと思う)」よりも強い否定になるのです。

「彼が来るとは私は思わない」でも良いのですが、そうすると「私は」が強調されている気がするので、「私には思えない」という表現にしました。

2つの英文とそれぞれの和訳を並べてみましょう。

I don't think he is coming. 彼は来ないと私は思う
I think he is not coming. 彼が来るとは私には思えない

面白いことに、日本語と英語で否定の位置が綺麗に入れ替わっています

ですが、同時に、英語と日本語では、「否定➡肯定」「肯定➡否定」の順番が揃っています

「don't think(否定)」➡「he is coming(肯定)」
「来ない(否定)」➡「思う(肯定)」

「think (肯定)」➡「he is not coming(否定)」
「来る(肯定)」➡「思えない(否定)」

これは私個人の語感なのですが、
「~すると思う」という日本語の表現の否定形は、
「~しないと思う」
だと思います。

「~すると思わない」ではないのです。

「~すると(は)思わない」は「~しないと思う」よりも、否定の度合いが一段階強い感じがします。

これも私の語感ですが、日本語は文を否定で終わらせるのを避ける傾向にあり(これは使用者たる日本語母語話者のメンタリティに拠ると思います)、

否定文を作るにしても、
「すると思わない」よりも「しないと思う」と肯定形で終わらせるのを好むのだと思います。

他の例を挙げると、「しません」よりも「しないです」の方が角があまり立たないように聞こえないでしょうか。

となると、「~すると…」という部分を耳にした時点で、聞き手は文が「思う」と肯定で終わることを期待するわけで、

そこで「思わない」と否定で文を終わらせることで意外性が生じ、否定の度合いが普通以上に強くなるのです。

英語でも似たことが起きます。

肯定文か否定文かは、ふつう、「think」の部分で決まります
「think」なら、文全体は肯定、
「don't think」なら、文全体は否定で終わると予想されます。

そこで、「I think」と肯定形で始めて、聞き手が「あ、肯定文で終わるんだな」と思っているところに「he is NOT」と否定形が来ることで、聞き手の予想が外れる分、否定の意味合いがより強くなるのだと思います。

従って、
「I don't think he is coming」は、特に含みのない否定文なのに対して、
「I think he is not coming」は、強い否定の文になるのです。

I don't think I'm coming to the party. 
私はそのパーティに行かないと思います。
I think I'm not going to the party.
そのパーティに私が行くとは思えない。(含意:来てほしいんだろうけれど、行きたくない)

I don't think I'm going to pass the exam.
私は試験に合格しないと思います。
I think I'm not going to pass the exam.
自分が試験に合格するとは思えない。(含意:合格するものだと他の人は思っているんだろうけれど、無理だと思う)

このように、「think…not」は文法上間違いだ、というのは間違いで、
文法的には正しいけれど、限られた文脈でしか使えない
というのがより正確な説明のようです。

ここまでお読みいただきありがとうございました!🍀

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