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【第2話】美容師楽しくない(解説編)/あのスタッフなぜ辞めてしまったのか?

2店舗目の出店を目指してスタッフを補充。
順風満帆に見えたサロンの成長も、
経営者の采配次第で暗礁に乗り上げることも。
さて、今回は何があったのか?
第2話 美容師楽しくない ストーリー編よりご覧ください。

文・解説/多田 暢[melt]

第2話 美容師楽しくない(解説編)
離職のサインはどこにある?

登場人物
オーナー………今年、初の新卒生2人を加え、
       翌年に2号店の出店を目指している。
アシスタント…美容学校を卒業したばかりの
       新米美容師(女性)。

1.「できなくて当たり前」の意識共有を

①オーナーの視点
ある日の営業後、アシスタントの2人が先輩スタイリストから注意を受けていた。そのスタイリストは、細やかな接客でお客さまからの指名も多い。
➊アシスタントの視点
私の中では、一生懸命やっているつもりだったけど、やっぱり気付けない部分もまだある。なかなか思ったようにうまくできない。
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解説
新卒生はできなくて当たり前。現場での動き方は、簡単に身に付くものではありません。仕事に慣れていない時期の注意こそ、指導する内容を具体的かつ明確にし、丁寧に行なうことが大切です。
離職警戒レベル 💣

2.注意者のスキル把握とフォロー

➁オーナーの視点
その後もよく、2人は同じスタイリストから注意を受けていた。
➋アシスタントの視点
一体、どこが悪かったんだろうか。
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解説
注意の理由や原因が分からなければ、改善のしようもありません。第三者によるフォローが必要でしょう。なお、特定の人が何度も注意するより、あえて分散させると◎。注意者のスキルが足りていない場合もあります。
離職警戒レベル 💣

3.求められるレベルとのかい離

③オーナーの視点
このまま、もっと予約で埋まるサロンにしたい! と、接客マナーや単価アップなどの勉強会を積極的に実施していった。
➌アシスタントの視点
最近は、やけに勉強会が多い。美容師の仕事が忙しいことは、頭では分かっていたけど、“楽しい〞かどうかが、最近は、分からなくなってきてしまった。
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解説
業績を向上させる取り組みも大切ですが、新人アシスタントにとっては求められるレベルが高すぎました…。その前には頻繁に注意を受けていたので、心のダメージも心配です。
離職警戒レベル 💣💣

4.発せられていた明確なサイン

④オーナーの視点
バックルームに入ると、アシスタントの1人が机に突っ伏して寝ている。その後もたびたび、休憩時間を寝て過ごす彼女の姿を目にすることが多くなった。
➍アシスタントの視点
疲れが取れない日が多くなった。ちゃんと寝ているのに、なんだか眠い。考えることが多くなって、〝楽しい〞より、〝大変〞と思う日が多くなっていた。
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解説
周囲の人にも分かるほど、体に異変が起こってしまっています。あれだけワクワクしていた入社時から、短期間でこれだけの変化が出ています。早急な対応が必要です。
離職警戒レベル 💣💣💣

5.単純な引き留めは効果薄

⑤オーナーの視点
退職の思いはどうやら強いみたいだ。いつから離職を考えていたのだろうか。
➎アシスタントの視点
私はもう決めていた。美容師という仕事は、私には向いていない、と。
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解説
向いていないかどうかは本当は誰にも分かりませんが、単純に引き留めても根本の原因が解決しなければ、結局は退職へと向かうでしょう。新しい環境はストレスも多いもの。先輩がそれを理解し、フォローしてあげることが肝心です。
離職警戒レベル 💣💣💣💣

(まとめ)ワクワクを持続させる

 新人スタッフは誰しも、モチベーションが高い状態で入ってきます。それが徐々に下がっていくわけですが(下がらないのはむしろ不自然)、この下降幅をいかに緩やかにするか、がポイントです。

 僕の場合は、「6ヵ月」を一つの基準にしており、新卒生の入社から半年間は徹底的にケアします。ほとんどの子は最初の3ヵ月で仕事に慣れ、次の3ヵ月で自分自身の役割を理解してくれるもの。ですから、まずはその子なりの努力を認めて評価し、居場所をつくってあげることを優先します。

 注意する際は、声のトーンや表情もなるべく穏やかに、理由を伝えることに徹します。20歳の子が年の離れた〝大人〞に叱られるのは、そもそも怖いものだと思いますので。

〈第3話は「独立編」(最終回)〉

PROFILE 多田 暢(ただ・のぶる)/1988年生まれ。東京都出身。日本美容専門学校卒業後、都内の大規模店に就職。6年間在籍し、広報部門やプロジクトリーダーなどを担当したことで、人事や労務、働き方に興味を持つ。
2015年、吉祥寺に「melt」をオープン。その後、’18年に2号店の「emis」、
’20年に3号店の「cofy」を同じく吉祥寺に出店。「スタッフの生活水準の向上」と「質の良い働き方」をテーマにサロンを運営中。

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