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【Zatsu】謎コンビニの成長戦略2

仕事っぽい話

前回も書いた、近所の地域で繁盛している大手コンビニ。オーナーがやり手で、いろいろと戦略的に動いて売り上げもエリアNo.1の店です。

そこが、当店独自の緊急企画と銘打って、新しいキャンペーンをぶちあげました。まずは、店で手渡されたチラシをご覧ください。
みなさんは、ここに秘められた意図が読み解けるでしょうか。


この店舗のみの限定企画。フランチャイズとはいったい……。


概要はこうです。
公共料金の支払いをすると、支払い用紙の枚数に応じてプレゼントがもらえる。たったそれだけ。

おれが感心したのは2点です。

ひとつは実施時期。
これはわかりやすい。あたりは住宅街だから、春に引っ越してきてきた人がたくさんいるわけだ。
当然、新規顧客の獲得チャンスなんだけれど、そのためにはまず店の存在を知ってもらうこと、利用してもらって再来店への敷居を下げることだね。
新生活をとっかかりに、自分の店のお客さんになってもらうためには、いまが勝負をかける絶好の時期ってわけだ。
1回目の公共料金支払いをどこでやろうかな、というとき、ちょうどこのキャンペーンが飛び込んできたら、まぁ行くよね。
この時期に、公共料金支払いキャンペーンをぶつけるというのは、非常に理にかなった戦略なんだ。

もうひとつは、お支払い枚数分のプレゼント。
わかります? 枚数に応じてというのが重要なんです。
支払い金額は関係ないんだ。枚数がポイント。

よくコンビニでやっているくじ引きがあるじゃない? 「購入金額いくらごとに1回くじが引ける」というやつ。
あれは、購入金額=売上だから、売り上げを上げるために購入金額とくじ引きの回数を連動させているというのは、いたってあたりまえの理屈。

でも、公共料金の支払いは、それ自体はコンビニに何のうまみもない。ただの代行サービスだから、はっきりいって「公共料金の支払いだけで帰る人」はお客さんじゃないんだ。でも、たいていの人は来店のついでに何か買っていく(思わず買ってしまうように店は陳列やビジュアルを工夫している)。だからこそ、コンビニは収納代行をおこなっている。そうじゃなけりゃ、あんな無駄なことやらないよ。

そこで、今回のキャンペーンをもういちど見てください。
支払い用紙の枚数に応じてプレゼント。
くじ引きのように、「支払金額に応じて」でもよさそうだけど、そうじゃなくて「用紙の枚数に応じて」プレゼントをもらえる。
たくさんの種類の公共料金を支払うと、それだけたくさんプレゼントがもらえるというもの。

なぜでしょう。

答えは、おそらく来店頻度です。
公共料金でも、インターネットの支払いでも、ものによって支払い締切日も違うし、用紙が送られてくるタイミングも違う。
だから、用紙を受け取るたびに、お店にもっていって支払いをすればお菓子がもらえる。店にしてみたら、なんども「ついで買い」をしてもらえるチャンスが生まれるんだ。
1回の買い物でお店にもたらす利益は10円を軽く超えるだろうから、うまい棒をあげたところで十分ペイするってわけだね。

これが「公共料金の支払い2,000円ごとにお菓子ひとつプレゼント」だったらどうだろう。バラバラに届いた用紙をまとめておき、2,000円に達したら店舗へ行くか、あるいはそこまでお菓子に魅力を感じなければ、わざわざ店舗まで足を運ばないで、カード払いや銀行引き落としにしちゃうかもしれない。
いずれにせよ、来店頻度が大きく下がることは間違いない。

このコンビニは、従業員教育が非常に行き届いていて、みなさん元気で親切で、きびきびと働いている。笑顔で接客もものすごく感じがいい。それでいて、セールスやワンプッシュトークもちゃんとやっている。品ぞろえもこだわって差別化しており(前回の記事参照)、何度か来店すればファンになってもらえる自信があるのかな。
でも、まずは来てもらわないことには始まらないからね。

という2点が、このチラシを見て思ったことです。
もちろん、おれの考えすぎかもしれない。オーナーさんの話を聞いたわけじゃないから確証もない。でも「当たらずとも遠からず」な気がする。
こういうことをちゃんと考えて、そして愚直に実行する。そういう店舗が生き残るんだろうな。

一方でやるべきこともせず、考えることもせず、苦しまず、あがきもせず。そんな店もある。
実際、コ口ナで小売店舗は相当つぶれた。
だから感染症のせいにするのはそれなりに根拠もあるし、簡単だけどさ。
それっぽい汎用性の高いフレーズで環境のせいにしていれば、誰からもとがめられないかもしれないけどさ。

咎められないことが最終目的なのかね。
私が悪いわけじゃない、と主張できればそれで満足?

そういう人は、明確に非難されることはないかもしれない。けれど、同時に相手にもされなくなり、やがて忘れ去られる。そのスパイラルにはまりつつあることを悟ったとしても、プライドが邪魔して認められない。

このコンビニはがむしゃらに、ある意味なりふり構わず商売しているんだけれど、その姿勢を見るにつけ、「また無茶してんなぁ」とあきれながら、ついつい応援したくなるわけです。

ファンを作る、お客さんのロイヤリティを上げる、ってのは、そういうことじゃないかなとつくづく思います😉

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