見出し画像

【Zatsu】謎コンビニの成長戦略

仕事っぽい話

実店舗の飲食・小売は「立地ビジネス」といわれます。店舗の場所が客の入りを大きく左右する。人通りの良い場所に店舗を構えれば自然とお客さんが来てくれるし、逆に立地が悪ければ呼び込むために工夫が必要で、競合に対して相当なハンデを負う(同業他社とお客さんを奪い合うわけだから)。

だから、人通りがあり、かつ滞留する駅ナカなどは最高の立地だし、駅と住宅街を結ぶ大通りなんかも、仕事帰りの人をつかまえるには好条件。もっとも在宅ワークの増加で人流も変わり、これまで通りにはいかなくなっているけれど。

そんななか、本日はちかくの住宅街にある1件の大手コンビニチェーンをご紹介します。おそらくオーナー店(本部とフランチャイズ契約を結んでいる店舗)だと思うんですが、とにかく非常識(いい意味で)。

まず見た目がおかしい。どれくらいおかしいかというと、連れて行った友だちが「なんでこんな住宅街にビレッジバンガードがあるんだよ」と狼狽するほどです。
いちおう大手コンビニの看板は出ていますが、面影を感じさせるのはそこだけで、段ボールのカットケースを店頭に並べ、独自仕入れのお菓子を投げ売り価格で販売している。
店内もいろんなものが壁にかけられたり積まれており、輸入菓子や高級ハム、チーズなど成城石井かなという品ぞろえ(マジです)。ワインですか? もちろん力を入れているらしく、ラック3つくらい使って1列すべてワインを並べています。ワインコーナーじゃないよ、通路に沿ってズラーっと端まで1列ワイン棚。どうやらソムリエがいるらしい。どんなコンビニなんだ。

品ぞろえだけでなく、セールスマインドもすごい。クリスマスには店員がサンタの格好をして店頭へ集合し、忍者のように「ザッ」と散り散りに住宅地へと消えていく(ポスティング&ごあいさつ)、この程度は見慣れた光景です。
普段は、駅前で店長が「コーヒー無料券+2色刷りオリジナルチラシ」を配布している。このチラシも、手書き風なんですよ。おそらくこれは意図的にやっていることで、ワープロソフトで作ったチラシってたぶん見ないで捨てられちゃうんだよね。一見するとゴチャッと書かれているチラシなんだけど、写真もちりばめられていて、目を引く工夫はされている(文字だけのウンザリ感をうまく回避している)。で、親しみを感じる手書き文字。手書きだからじっくり見ないと読めないんだけど、「なになに?」と目を凝らしている時点で、もうすでに読まされている自分に気づくというね。非常に巧妙に考えられている。

一番ビビったのは、購入に対するワンプッシュの強さ。よくレジで「○○キャンペーンやってます。おひとつどうですか?」みたいなのはあるじゃない? ファーストフードとかでもさ。
この店ではさらに上。このあいだ店内で買い物をしていたら店員がススーッと寄ってきて「ホットスナック今ならお得ですけどいかがですか?」
見たら、コロッケふたつをプラスチックパックに入れて、お盆にのせながら店内の買い物客に声かけて回っているのよ。

もうコンビニじゃねえ!

「あ、はい」買っちゃったよ、思わず。「おいしそうですね、ありがとうございます」お礼まで……ああ。

でも、こういう攻めの姿勢が功を奏してか、この店すこぶる売り上げがいいらしい。やっぱ「売り上げ」イコール「パワー」だね。フランチャイズって統一感が大事なんだけど、そんなの関係ない。勝ったものの勝ちだ。理論 of ジャイアンですよ。

ただし、あれこれ書きましたけど、結果的にこの店舗のオーナーって、非常によく考えているなぁと感心する。
この住宅街って、立地面からすると必ずしも有利ではない。その中でワインとかチーズとか、高価格帯のものをそろえて、もう何年も続いている。しかも売り上げ実績も上げている。ってことは、市場調査に相当つっこんでいるはず。直営店じゃなくて、オーナー店だからね。限られた資本のなかでそれをやっているというのがスゴイ。

しかも店員さんがみんな感じがよく、あいさつもさわやかで、従業員教育が徹底している。レジに客がふたり並ぶと飛んでくるしね。で、気持ちよく買い物して帰ってもらう。住宅街のコンビニってことは、必然的に常連客を相手にすることになるわけで、一見さん相手の商売とはちがって、気持ちよく帰ってもらう(=次回の来店につなげる)って非常に大切な視点。ましてや、立地的に不利ならなおさら。もっとも、最近はネットの口コミ影響が大きいから、どういう事業形態だろうが「終わりよければ」の視点は大事なわけだが。

あと、店員さんが子どもにやさしかったりとか、お客さんとのコミュニケーションを積極的にとって接点を持つとか、いろいろ気づく点はある。要するに、ファンを増やそうとしている(ブラインディング)んだろうと思う。
ここにコンビニができる前、別のコンビニが近くにあったんだけど、そこはぜんぜんダメダメで潰れたんだよね。
そのあとで、このオーナー店は顧客を開拓し実績をたたきだした。
ということはだよ、次にやってくるのは同業他社が近くに店舗を構えるか、あるいは本店から送り込まれてくる直営店が客を奪いに来るか。
立地だけで考えると、決して良いわけじゃない。巨大資本にパワーゲームを仕掛けられれば勝ち目はない。旨みだけ持っていかれるかもしれない。

そこで生き残り、さらに成長するためにとったのが、ファンを増やす取り組み、住民とローカルにつながる取り組み、ビレバンをほうふつとさせるような独自色を出して、2色刷りの手作りチラシを作って、インスタやTwitterなどでタッチポイントを増やしながら溶け込んでいって、代替されないよう地域に深く根を張っていく戦略。

ホントのところは知りませんけどね。でも、ここは考えることに非常にパワーを割いているなあと、買い物をしながらしみじみ感じさせられます。オーナー店でここまでできるのは感心しきりだし、逆にオーナー店だからこそできる部分もあるのかもね。

それはそうと、さっき行ったときドリンクケース見たら、俺がいつも買っていた銀河高原ビールがなくなっちゃったみたいなんだけど?
どうなってんだよ!
(°д°)ハァ?

この記事が参加している募集

業界あるある

マーケティングの仕事