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【Zatsu】HGマンスリーマンション

まだ検討段階ですが、来年あたりに引っ越しを考えています。これまで10回以上転居しているので、引っ越し自体に新鮮味はない。でも、部屋を探しているときは楽しいんだよね。いろんな条件でネット検索して、候補一覧を比較検討しては一喜一憂しているあのとき。いざ不動産屋に行って内見、レイアウトをあれこれ考えているあのときが幸せなんだよ。

ただ、自由意思ではない、転勤に伴う引っ越しもある。数年前、転勤で関西に2年間住んでいたんです。しかも会社は何の前触れもなく突然いうんだよ、2週間後に現地へ行けと。指示があったのも、ちょうどいまくらいの季節だったね。人使い荒すぎ……。

荷造りもあるし、転居先の部屋探しも必要だし、なにより引っ越しシーズンはとっくに終わっているから入居可能な物件がない。空き物件がでてくるまでのあいだ会社がマンスリーマンションを借りてくれることになった。
しばらく家具付きのマンスリーマンションから通勤し、部屋が見つかったら本格的に引っ越す、という段取り。

「どこでも好きなマンションを選んでいいぞ」
そういって人事が渡してきたのは、営業所周辺のマンスリーマンション一覧だった。値段にバラツキがあるけれど、家賃はどうせ会社が払うんだ。おれには関係ない。
つらつらと眺めているうちに「★HGハイグレード★ ○○マンション」という表記がちょいちょい目についた。見れば、他の物件よりもやや家賃が高い。人事はどこでも選んでいいって言ってたな。よぉし、ハイグレードにしてやれ。いきなり転勤させようとする会社が悪い😏。
おれはニヤリと笑い、さっそくWebで入居手続きを取った。

支払いは会社がやってくれるので、おれは当日そのまま現地に行くだけ。キャリーケースに最低限の荷物を詰めて到着した時にはもう結構な時刻で、マンションの正面玄関エントランスは真っ暗。
オートロックの自動ドアを抜け、集合ポストから部屋の鍵を取り出し自室へ向かう。場所は建物1Fのほぼ中央だった。

まず脱いだコートを掛けようとして、収納がないことに気がついた。あれ、服はどこに掛ければいいんだろう。視線を走らせていると、床にロープが置いてある。壁にはフックが数か所。どうやら、ロープを壁に渡し、洗濯物と同じ要領でやってくれと。

HGハイグレードとは? (´∀`;)

まあいい。そんなこともあるだろう。なんせワンルームのマンスリーマンションだし、多くを期待するほうが野暮ってもんだ。

なんだか腹へったな。手荷物があったからここまで寄り道もしなかったし、こんな時間じゃ定食屋も開いていない。しかたない、コンビニで何か買ってくるか。

近所のコンビニでおにぎりとカップラーメンを買い込んで戻ってくると、マンションのいたるところから派手なビートが響いてくる。どうやら各部屋の玄関わきに設置されている洗濯機が一斉に稼働しているらしい。
ちょうどこんなカンジ⤵


HGハイグレードとは? (´∀`;)

なんだか変なマンションにきちゃったな。
ま、そのうち慣れるでしょ。それよりもメシだ。空腹で死んでしまうわ。ラーメンのお湯を沸かすのは……この電熱線コンロか。
――5分経過―― (((-'д-)y-~ フゥー
――10分経過―― ( °᷄д°᷅) イライラ
――15分経過―― :(💢 ゚Д゚) オオオ
もういらんわ!

おにぎりを食べつくし、携帯でも見ながらリラックスタイム。なんだか今日は、バタバタと疲れたな。バスタブが極端に狭いのはさっき確認済みなのでまったく期待していない。さっとシャワーだけ浴びてはやめに寝るか。
着替えを準備してバスルームに向かう途中、冷蔵庫のとなりにある「あやしいタンク」が目に入った。
人の身長くらいある大型のタンクで、部屋のなかで明らかに異彩を放っている。なんでこんなタンクが部屋の中に?
よく見ると説明書きが貼ってある。どれどれ。なるほど、これは給湯タンクか。で、この部屋で使用するお湯はここから供給される、と。
なお、夜間のお湯の利用には時間制限があり、1日あたり2時間まで、か。
なん……だと……?

さすがに2時間もシャワーは浴びないが、それまでに料理等でお湯を使うこともあるわけだし、この季節にシビアすぎやしないか? モヤモヤしつつも、今日はとりあえずさっさとシャワーを終え、就寝の準備。
ただ、ここって部屋の真ん中に30cmくらいの段差があるんだ。ワンルームだよ? ワンルームの中央にクレバスがあるってどういう発想よ。コーヒーやカップラーメンとか持ちながら歩いていたら、うっかり転落する可能性もある。ホントあぶない。

HGハイグレードとは? (´∀`;)

その日は早めにベッドへもぐりこみました。
次の日、昨晩のおにぎりやラーメンのゴミをビニール袋にまとめ、マンションのゴミ置き場に出して会社へ向かう。
仕事を終えてヘロヘロになりながらHGハイグレードマンションへ戻ってくると、あれ? おれの部屋の前に何か置いてあるぞ。
近づいてみると、それはおれが今朝捨てたはずのごみ袋だった。
なにやら手書きのメモが貼りつけてある。
「今日はごみ捨ての日ではありません。ルールを守ってください!」
(;´ Д`) エェェ、うそでしょ
マンションのごみ捨て場にルールがあるなら、入居時にちゃんと伝えてくれよ。ていうか、このごみを捨てたのがおれだって、どうしてわかる? 勝手におれの部屋の前に戻すんじゃねぇ。決めつけよくない!(まぁ実際におれが捨てたんだが、よくわかったね)

この部屋で、結局4か月くらい生活していました。慣れというのは恐ろしいもので、いつのまにか洗濯機のリズムも心地よく感じられ、部屋の段差もノールックでクリアできるまでになりました。

新しい部屋も見つかって退去する最終日、荷物を宅急便で新居へ送ることにしたのよ。携帯が鳴り、出ると宅急便のお兄ちゃんから。いまマンションの入口まで来ています、とのこと。
このマンションはオートロックなんだけれど、部屋の中から開錠できないので、わざわざ正面玄関エントランスまで迎えに行かないとならない。
身支度を整えて部屋から出ようとドアを開けると、
「どうも、おまたせしました~、○○急便です!」
「??」
「あ、お荷物これですね。お支払いは会社負担になっていますので結構です。じゃ、お預かりします~♪」
お兄ちゃんは、正面玄関エントランスとは逆の裏口から荷物を運び出し、車に積み込むと颯爽と走り去っていった。
裏口は鍵がかかっておらず、半開きのままになっていた。
オートロックの意味。

HGハイグレードとは? (´∀`;)

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