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エミン・ユルマズ『世界インフレ時代の経済指標』の感想&解説

国際エコノミストのエミン・ユルマズ氏の新著を読んだ感想です。


◆基本情報

・ページ数:203ページ
・所要時間:2時間
・内容:経済指標から相場の大局観を読み解く方法

エミン・ユルマズ氏はトルコ出身のグローバル・エコノミストです。
日本留学後は東京大学、野村證券の投資関連部門を経て現在は複眼経済塾(投資学習ワークショップ等の運営会社)の塾頭をされています。

各国経済の相関関係をマクロに読み解く事を得意としており、最近では2022年の米国インフレや現在の日本株の高騰などを言い当てています。

日本人以上に堪能な日本語と初心者にやさしい解説が人気のエコノミストです。

◆所感

・経済指標の読み方の基本がわかる
・各指標のどこが、なぜ重要なのかがわかる
・辞書的に何度も読みたい

本書は雇用統計やCPI(消費者物価指数)などのいわゆる「経済指標」の意味と読み方について解説された本です。

単に米国を中心とした各経済指標について紹介されているだけではなく、なぜ重要なのか、誰にとって重要なのか、指標が良い(悪い)とどこに影響するのかがわかりやすく解説されています。

経済は各国・マーケットで独立したものではなく、つながり影響しあっています。

どこかで地震が起これば遠く離れた所で時間差で津波が発生する様に、経済指標にも先行性/遅行性のものがあり、各指標の結果が他のどの市場に影響を与えるかを理解する事で『相場の大局観』を読み解く事ができます。

一度通読しただけで完全に理解するのは難しいと思いますが、各指標の発表は多くても月1回ですので、発表前後にその指標の解説ページだけでも辞書的に読み返していく事によって理解が深まっていくと思われます。

◆デフレ脳・低金利脳から脱却する

ここ30年、つまり私たちや、私たちを育てた親世代の日本経済は長きに渡るデフレ時代でした。

デフレ経済下では現金価値が上がり、投資をする魅力が薄れるため「現金のままにしておく」ことが合理的な行動でした。

しかし現在は世界的な、50年ぶりの大インフレ時代への転換点を迎えています。従来のままの価値観では「貯金が正義」とひたすらお金を溜めた結果、物価だけがひたすら上がり現金価値が大きく目減りするという事になりかねません。

歴史上の金利水準というのは実は平均20%らしいです。
そう考えると現在の数パーセントの米国政策金利というのはまだまだ上昇余地があります。ましてや日本のゼロ金利、マイナス金利というのはかなりの異常値です。

米国はリーマンショック以降、10年以上に渡り量的金融緩和を実施してきましたが、それを数パーセント金融引き締めしただけで物価の大高騰や株式市場の暴落に見舞われています。これが20%に上昇した場合の市場や家計への影響は計り知れません。

本書は経済指標を元に世界経済の方向性、転換点を把握する力をつける事を目的としています。

主要な米国経済指標はもちろん、諸外国の経済指標や企業業績から経済の動向を把握する方法も解説されており、投資をしている方はもちろんビジネスマンの方にもお勧めできる一冊です。

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