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蒸発しないわたし

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卒園式

事情があって、本名ではなく通称の名前で生活をしている。

子供の卒園の証書には、本名と通称の名前を併記してもらうようにお願いしていた。

証書を受け取る保護者は年長で一人だけ。

なんと私は、何の連絡もなしに勝手に決められていたようだ。昨日、園から受け取った手紙で分かった。

込み入った事情があると分かっている家庭(しかも、名前の読み間違えなどを気にしていると連絡済み。)に、こういう役割を勝手に持

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強さと信頼

「付き合ってから自分に自信が持てるようになったんだ。」

前夫の強さや自信は他人に依存したものだった。そういった人間の語る「強さ」や「自信」には、澱みを感じる。独特の突っかかりを感じるのだ。

強さという表現は、人間関係の中で上に立とうとして見せる強さと、自分が一人で立とうとする強さの二つがある。

前者の強さは、虚勢を張りたい弱い人間のもの。

後者の強さは、一人の人間の中にあって、他者には関係

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預けるということ

生活保護を受けていると園の保育料は無料になる。保護が8月に入ってから廃止になったと自治体から連絡があったのだが、そのまま8月から保育料がかかることになった。保育料が無料でも保育料を引き落とす口座の申し込みをする必要があったため、入園の際に手続き済みであったはずなのに、通帳を見たら8月の保育料は引き落とされていなかった。

聞くと、手続きが取れなかったので園を通じて納めることになっているらしい。園長

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保護を受けるということ

前の夫の家を出るに当たり、預貯金が使えなくなったので生活保護を受けることになった。この仕組みはよくできている。「最低限度の生活」の金額のはずだが、避難するより前の生活よりはずっと余裕のある生活が出来るのである。勿論、最初はエアコンやら掃除機やらの電化製品を購入しなければならないので大変だが、保護の金額内で生活を切り詰めるのは、難しいことではなかった。以前の生活で、かなり切り詰めた生活をしていた私に

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相談するということ

配偶者の暴力を逃れるために、この国は一応のシステムを用意しているらしい。それが機能しているかしていないかは、私が今判断することではない。私と子供が健康に生活できるかどうかという結果がこの先あるかどうかは、何年、何十年も経たなければ分からない。また、自分に起きた出来事は、入居することになった施設によるのか、地域によるのか、それとも、この国全体のことなのかすら私は知らない。私は、経験したものまでしか説

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追い込む人

父は家にいる時間はずっとTVばかり見ていた。母は、自分の親が生きている時は、延々と長電話をしていた。兄弟ともかなりの長電話をするのが習慣になっているような人だった。

私に子供が産まれたとき、こう言われた。

あんたには、TVを見る時間も自分の楽しみに使う時間もこれからは、もうないのだから。

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離れたはず

ある月曜日、男性保育士のそばにいた子供の同級生が、お教室で準備が終わって外に出てくると、「土曜日来るってい行っていたのにどこに行っていたの教えてよ。」としつこく聞いてきた。大きなお世話である。だいたい、週末どうしようがこっちの勝手だ。

暫く続けて土曜保育をお願いする日が続いていた。先週の土曜をどうするのかは子供には前もって話をしていなかったが、私から予定を聞いていなければ、習慣的に次の土曜も来る

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駆け込む理由

「東慶寺花だより」を読んで、考え込んでしまうところが多くあった。東慶寺は江戸時代に離縁をしたい女性が駆け込むお寺である。

昔も今も、女が離縁したいと思う理由に大して変わりはない。読んでいて幸いだったのは、自分とは関係のないような話や、出てくる女性達が婚姻期間中に受けている出来事がそれぞれ一つくらいで、つらすぎない事だ。また、離縁を突き付けられた男性の側も、ある所できちんと諦めているのが分かるのも

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