ストークキングの森

その村には双子が産まれると口減らしのために【キャベツ畑】に捨てるという風習があった。


残酷な話だと思う。キャベツ畑がいかに危険な場所であるか、この村に生きる者で知らない人はいない。そんな場所へ、生まれて間もない無力な赤子を放り出すのだから。


その日、ひとりの赤子がキャベツ畑に捨てられた。


その夜、口減らしに精神が耐えきれず、母親はキャベツ畑にふらふらと迷い込んだ。
夜のキャベツ畑は人ならざるモノの世界。無防備な人など生きていられるはずもない。
母親の首から上が不意に消え、遅れて血が噴き出した。食いちぎられたのだ。


コウノトリ


獰猛で貪欲な鳥獣は、母親を食らいつくし満足すると、足下の赤子を訝しげに見た。そして何の気まぐれか、赤子を拾い飛び立った。
結果的に言えば、母親は身を呈して自分の子を救った事になった。


生き延びた赤子が、僕の実の兄がコウノトリの王として目の前に現れるのはその19年後の事だ。

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