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口が重い

私はあまり話さないタイプだ。

自分を出さないできたこともあって、話下手が劣等感でもある。気持ちを上手く言葉にできず、歯がゆい思いばかりするので、いっそのこと何も話さないでいる方が、気楽でいい。

でも、そんな自分を好きでないし、言いたいことは溜まる一方だから、口下手は損で悪い事、というイメージしかなかった。それは直すべき欠点と受け止めてきた。

口下手も無口も、決して悪いことではない、と頭でわかっても、どうしてもそれを認められなかったのは、私の中に、昔の体験で出来た心の傷があったからだと知った。


それは「あなたは口下手だから、あまり喋らない方が良い」

と、むかし母に言われた言葉だった。


話が上手い母は、喋らず、大人しい私が口をきいても会話にならないので、下手な話をするより、黙っていた方が良いと思ったのだろう。母も、話は上手くないといけない、ときっと思っていたに違いない。

だからそれは、口下手はいけないこと、という傷となって残り、何十年たっても消えることはなく、本当に私は口下手になってしまったのだ。

この傷は価値観になり、もっと上手く話さねばならないのに、そうできない自分はダメなのだと結論づけてしまってもいた。


母に、あまり喋らない方が良い、と言われた事を、素直に、しかも否定的に受け止めたことで、今の自分があるけれど、大昔の、たった一言が、これほど大きな力で私を支配してきたことは、驚き以外の何物でもない。

でも、この傷が癒えたなら、素直に、口が重い自分を認められるような気がするのだ。





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