アラサー80kgがオンラインパーソナルに挑戦する話:プロローグ

今年、三十路へと突入する女
2024年4月の時点で体重80kg
これまで30年大きく痩せた経験は一度しかなく、その原因も超絶ブラックなやりがい営業系居酒屋バイトでほぼ絶食状態で働いていた時に落ちていった13kg。

なお、バイトを辞めたあと瞬間でリバウンドし、そこから着実に最高記録を更新し続けている。
ちなみに13kg落ちた当時の体重は56kg。つまり、元の体重は…と、考えるだけで頭が痛くなる。

そんな経験から、食べなきゃ痩せるという歪んだ成功体験を抱いて10年。その間、これはヤバいと思った時に食事制限と適当な運動をして申し訳程度痩せ、痩せたことに満足して早々に生活を戻してリバウンドする。
仕事で疲れたから、週末だから、頑張っているから。そう理由をつけて自分を甘やかし、短い頻度で繰り返す暴飲暴食。
増え続ける体重よりも己のストレスを発散することを優先した結果がこのザマだ。服が着れなくなっても、デザインよりサイズで服を選ぶようになっても、日に日に醜くなる体をまるで他人のように思っていた。

面白いくらいに太っていきますねぇ。あなたねぇ。

鏡に映る弛んだ身体は面白いくらいに醜い。肩は膨らんでいるし顎から首にかけてのくびれはない。鎖骨だってない。胸は垂れて腹は出て尻は弛んでいる。それを許容できるのは自己愛なのだろうか。

このまま重い体を引きずって死んでいくんだな。老いると体重が減ると聞いたが、それすらも想像ができなかった。永遠に膨らんでいく己の体はいつか弾けるか溶けるか自重で潰れるかしか選択肢がないのではないか。それも面白いな。あはは。


でも、私は今日オンラインパーソナルの申し込みをした。

な、なんで?

仕事が落ち着いてお金に余裕ができて真っ先に頭に浮かんだのが「パーソナルジム行ってみたい」だった。
オンラインの友人と毎日楽しく過ごしている人生。
社会に身を置く1人としてせこせこ働きつつも、裏で素人小説を書いて売って小銭を稼ぐしがないオタク。
決して安い買い物ではないのに、手を伸ばしたのはそれこそ究極の自己愛かもしれない。

お前さ、ちょっと頑張ってみない?
ここで、ちょっと痩せたらさ、面白いんじゃない?
幸いにも、減った体積を嘆くような間柄のパートナーは存在しない。

ここで痩せられたらラッキーじゃん。と脳内に住んでいるギャルが囁いた。

こんなふんわりした理由で良いのかな。まぁ、良いんじゃない。誰かに迷惑かけるわけでもないし。


必死になるのは恥ずかしい。なんて、年柄にもなく廃らせた思いを見ないふりして。
面白いじゃん、なんて誤魔化しながら、めちゃめちゃサイトを見比べてジムの見学に行った。あーだこーだと理由をつけて体験後即契約させようとする爽やか笑顔ムキムキマンの圧ををかわしながら、比べに比べて悩みに悩んで、貴重な平日休みを費やしてジムを選んだ。

服なんてどうでもいい。友達からなんて言われようが、異性にどう思われようがどうでもいい。好きなものを我慢して得られるものに価値は感じない。

それでも、写真に映る自分の姿の醜さを目の当たりにする瞬間はどうしようもなく恐ろしかった。

一枚でも自分が映る写真を見て、その時の情景だけを思い浮かべてみたい。

あの日、居酒屋バイトが長引いて、終電を逃した後にヤケクソで撮った自撮りのように。


人生最後の自己投資に踏み切ったのは、確かに到達した56kgが忘れられないからだ。

記録

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