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赦しによってメンタルはどの程度回復するのか?

人を憎み続けることにはエネルギーがいります。そのため怒りや恨みは自分の体を傷つけ時に精神疾患につながることがあります。では怒りや恨みを手放し、自分を傷つけた相手を許すことで精神疾患は改善するのでしょうか。今回取り上げる論文は赦し療法が精神疾患の改善に与える効果について検証したものになります。

精神的幸福を促進するための許し療法:系統的レビューとメタ分析
Forgiveness therapy for the promotion of mental well-being: A systematic review and meta-analysis

この研究では以下に示すEnrightモデルとREACHモデルに基づいた赦し療法を行った研究の結果を取りまとめ、実際どの程度の効果があったかを調べています。

  1. Enrightのモデル

  • 4段階のプロセスからなる20単位のプログラム

  • 第1段階:心理的防衛の特定、怒りの表出、害の認識

  • 第2段階:赦しの意味の探求、赦しの可能性の考慮

  • 第3段階:認知の再構成、共感と慈悲の発達

  • 第4段階:意味付け、過ちへの気づき、新たな人生の目的の発見

  1. REACHモデル

  • 5段階の赦しのアプローチ

  • R:傷つきを想起する

  • E:加害者に対する共感を発達させる

  • A:赦しを無償の贈り物として考える

  • C:赦すことへのコミットメント

  • H:困難な時に赦しを保持する

結果としては、

  • うつ病: 小さいが有意な効果量(-0.37)

  • 不安: 有意な効果なし

  • 怒り/敵意: 中程度の効果量(-0.49)

  • ストレス/苦痛: 大きな効果量(-0.66)

とのことで、比較的しっかりとした引き下げ効果があることが示されています。ちなみに効果量の目安としては、インフルエンザワクチンの一般的な予防効果の効果量が中等度(0.5)と言われています。

Q: 赦すことで体調も良くなるのでは?

明日読む論文:
許しを与えるか恨みを抱くか:感情、生理、健康への影響
Granting forgiveness or harboring grudges: Implications for emotion, physiology, and health

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