「闇雲にこわい2」2024/01/23

 ガラガラガラ、という音がしてみんな一斉に静かになり、音のする方へと顔を向ける。
「おはよう、みんな席着きなさい。」
と先生の声がすると、皆一目散に自分の席に着く。その光景は異様である。
かくいう私も先生が来た瞬間には、
椅子を引き、姿勢を整え、気を引き締めるのである。
 点呼が始まる。
点呼というのはなぜ毎朝やっていても、自分の番が来るときに毎度少し緊張してしまうのか。
その理由の一つに、声が裏返る自分を想像して不安を掻き立てられるというのがある。
いかんせん朝は声が出にくいため、突然教室の一番前の先生めがけて大きな声を出すというのは、ハードルが高い。朝からある程度誰かと話したりして、声を出しておかないと、痛い目を見る。

 先生が朝の報告をしている間、私はいろいろなことを考える。
 まずはどこを見ていれば良いのかということ。先生の目を見ると、印象付いて目をつけられそうなため、こわい。かと言って、先生に顔を向けたまま目線をまっすぐ置くと、ちょうど股間部に視線がいってしまい、あまりにも不埒だ。
よってこういうときは、自分の手元を見たり、予定表をちらちらと見ておくのが一番無難だろう。
 あとは横の子が何をしているのかも気になってしまう。もし、私の横顔を見て、こいつ、なんでもないときにもじもじしていて気持ちが悪い、などと思われていたら。もしくは、こいつ、なんかくせえぞ、近づくな。と思われていたら。
そう想像するだけで、背中からいやな汗が滲み出てくる。
 もし前の男子がいきなり、自慰行為をし始めたら?わたしはそれを見たら、普通に取り乱してしまうかもしれない。不測の事態とはそういうことであろう。いっそ私がそういうことを突拍子もなくやれたら、こわいものなんてこの世にないのにと思う。
 誰か私を安心させてくれ。意味のないような不安に苛まれるわたしをそばで見守って、微笑んでいてほしい。


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