この世界は変だ

 この世界は変だ。

 まず言葉が変だ。
言葉は感情を表すためにあるはずなのに、本当に心から何かを感じたときは何も言えなくなる。
深く何かを考え、言葉を選んで発言しようとすると、その間に、はじまりの衝動の思いはどこかへ消えていってしまう。
結果自分が何を感じたのかの本当は自分にもわからなくなってしまう。
いろいろなものを見たり聞いたりして、感じたことを隣にいる誰かに精緻に語ろうと思念することがある。でも時間は、相手は、私を待っていてはくれない。間やタイミングが合わないと言う気になれない。
言ったとしても、「考えすぎだ。」と一蹴されるだけだろう。
悲しいことに、もし私が逆の立場だったとしても同じことを言いたくなってしまう。
もしその人がノッてきたとしたら、それは少々気色が悪いと思う。
つくづく救いようのない人間だ。

 なのにこの世はまるで全員が善人のように振る舞うことを強いられる。社会に出ている人はうっすら俳優とか女優の気質があるのだと思う。
それら全てが薄気味悪い。常に誰かに見られている気がする。そしてその誰かの視線を気にして、私はがんじがらめになっている。蜘蛛の巣に捕われた虫だ。いっそ蜘蛛に食べてもらって一生を終えたい。
 善人の面をした悪人は得をし、悪人の皮を被った善人は損をする。そんな社会に出て揉まれることになんの価値も見出せないでいる。

 もうみんな死んでしまえ。

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