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臨床推論 Case85

Infection. 2003 Oct;31(5):362-5.
PMID:14556065

【症例】
25歳 男性 

【主訴】
咽頭痛

【現病歴/現症】
⚫︎ 3日前から咽頭痛を認めているため受診
⚫︎ 発熱はなくBT36.6℃
⚫︎ 両側、とくに右側優位に腫脹と発赤、膿瘍を認めた

⚫︎ 両側に著明な頸部リンパ節腫脹を認めた
⚫︎ ラボ:WBC9140/μL Hb13g/dL CRP1.2mg/dL

⚫︎ 咽頭のグラム染色は以下の通り

What’s your diagnosis ?








【診断】
淋菌による扁桃炎

【経過】
⚫︎ 扁桃スワブで淋菌のPCRが陽性であった
⚫︎ 病歴からhomosexual manと判明し、unprotectのoralおよびanal sexual intercourseを6日前に男性と行った
⚫︎ HIVは陰性であった
⚫︎ また尿道のPCRは陰性であった
⚫︎ クラミジアの合併を考慮し、アジスロマイシンとシプロフロキサシンで治療し5日後には症状消失した

【考察】
⚫︎ 淋菌が咽頭炎を引き起こすことはあるが、症状がないことが多い
⚫︎ しかし滲出性扁桃炎を引き起こすことはあまり知られていない
⚫︎ 1962-2003年の文献報告された経口淋菌感染512例のうち扁桃炎と診断されたのは61例であった

⚫︎ ただし咽頭炎と扁桃炎をごっちゃにされている可能性、扁桃腺についてはわざわざ記載がない可能性がある
⚫︎ この61例のうち39例64%で有症状で咽頭痛を伴うと報告されている
⚫︎ これは淋菌による”咽頭炎"と報告されている症例の症状約50%よりも多い
⚫︎ Wies先生は口腔咽頭淋菌感染患者において、咽頭の炎症所見と咽頭痛の有無との間に相関関係は認めず、咽頭痛とoral sex習慣との間には相関性を認めたと報告あり
⚫︎ 文献で報告されているものは必ず扁桃腫大あり、ある程度の炎症がみられた
⚫︎ 黄白色の滲出液所見は12例20%で認め、両側頸部リンパ節腫脹は6例9.3%で認めた
⚫︎ 発熱は5例8.2%と口腔淋菌感染では稀である
⚫︎ 口腔所見のみで陰部所見を認めないこともある

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