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音楽家ワーグナーの慌ただしい人生


ワーグナーってどんな人?


<ヴィルヘルム・リヒャルド・ワーグナー(1813年~1883年)>

 オペラで大活躍したロマン派時代の音楽家ドイツへの愛国心が強く、思想家としての知名度も高かった。ワグネリアンという熱狂的なファンがいる。生涯を通じて借金に追われる。革命に参加して指名手配もされる。その人格にふさわしい苛烈な人生を送った。

 有名な曲:『タンホイザー』『ローエングリン』
      『トリスタンとイゾルテ』『二―ベルングの指輪』

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ワーグナーのエピソード

借金と夜逃げとオペラ『さまようオランダ人』

 ワーグナーが26歳の頃。
 その頃にはすでに、ワーグナーは多額の借金を抱える生活を送っていた。
 ワーグナーは考えた。
(借金を0にするにはどうすれば良いのだろう……?)

「そうだ!密航だッ!こうなったら夜逃げして借金を踏み倒すしかない!」

 ワーグナーは人々の目を盗んで、外国行きの船に乗り込んだ。

 しかし、この密航は予想外の苦難にみまわれた。
 航海中の嵐に巻き込まれ、船が岸へ向かえなくなってしまったのだ。
 その結果、乗客たちはしばらく船上で生活せざるをえなくなった。

 船上での生活は2日,3日・・・7日、8日と続いた。それでもまだ港には辿りつけなかった。乗客たちは終わらぬ船上生活に嫌気がさしていた。

 船とともに波に揺られながら、ワーグナーは『フライング・ダッチマン号』というドイツの幽霊船伝説を思い出していた。いつまでも岸に着けることもできず、永遠に海上をさまよい続けるドイツ船のお話だ。

「そうだ。あの伝説をオペラの題材としよう」

 ワーグナーはこの経験から得られたインスピレーションをオペラに生かそうと考えたのだ。ワーグナーはただでは転ばない男だった。

 結局、その船は3週間もの間、海に浮かび、その果てにロンドンへと到着した。
 ワーグナーは無事に密航を完遂したのであった。

 そして、1842年、オペラ『さまよえるオランダ人』が誕生した。

革命、そして指名手配

 1848年3月、ドイツで革命の動きがあった。

 ワーグナーはこの革命運動に積極的に参加し、ドイツに対する思いや願いを演説で語った。そして、ドレスデン蜂起が起きるとワーグナーはこれに参加した。

 ドレスデン蜂起は革命の空気を抑え込みたい政府軍と、そんな政府に対して怒りに燃えた革命軍との戦いだった。

(この革命はドイツのための革命なのだ! 真に国を想うのならば、革命を成功させねばならない!)

 そう考えていたワーグナーはドレスデンの暴動に積極的に関わった。

 ワーグナーは教会の鐘を鳴らし、兵器庫を襲撃する民衆を鼓舞した。
 また、政府軍に革命軍が押され始めると今度は教会の屋根に上り、全体を見渡して革命軍に指示を出した。そして、ワーグナーはそのまま一晩を屋根の上で過ごしたという。

 しかし結局、ドイツで起こったこの革命運動は失敗に終わった。
 その結果、ワーグナーはドイツ政府からの指名手配を受けることになり、愛する祖国から追われる身となってしまった。
 ちなみに、もし、この時ワーグナーが捕まっていれば、彼は終身刑になっていた可能性が高いらしい。

 そんなワーグナーを助けたのは、音楽家フランツ・リストだった。彼はワーグナーの亡命の手助けを行い、ワーグナーは無事スイスへと逃れることができたのだ。

 以降、ワーグナーは愛する母国を離れて活動することになった。ワーグナーがドイツへの帰還を許されたのは、それから10年以上も後だった。

ルートヴィヒ2世の支援

 ワーグナーの音楽の熱狂的なファン、いわゆるワグネリアンの中には、とんでもない人物までまぎれ込んでいた。
 バイエルンの国王ルートヴィヒ2世もまたワグネリアンだったのだ。

 ルートヴィヒ2世は憧れのワーグナーを部下に探させ、宮廷に招いた。
 そして、ワーグナーに多大な支援を行ったのだ。
 おかげで、宮廷から解雇されるまでのしばらくの間、ワーグナーは資金不足に臆することなく音楽活動ができるようになった。

 そして、ワーグナーは自分の作品を上演するためだけの、まさに自分専用の劇場まで建ててしまったのだ。

 ちなみに、そこで行われる『バイロイト音楽祭』という音楽イベントは今日まで続いており、ワーグナーの作品を中心に上演されている。

<感想>

 ワーグナーは本当に不思議な音楽家だ。性格面で見れば、とても愛されるようなキャラクターには思えない。なのに、彼にはワグネリアンという熱狂的なファンすらできた。ただの所感だが、ドイツを深く愛し、その愛を作品に詰め込んだからこそ、それほど熱狂的なファンが生まれたのかもしれないと感じた。

 次回は、ワーグナーと同じくオペラの分野で活躍した『ジュゼッペ・ヴェルディ』についてお話したいと思う。それではまた。

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