現代では信じられない明治の冷夏

1898年から続く日本の平均気温統計で、最も気温の低かった夏は1902年であった。現在の平年値より2.54℃も低かった。実際にどれくらい気温が低かったのか。東京を例に見てみると7月の平均気温が21.8℃、8月の平均気温が22.9℃であった。平均最高気温にしても7月が25.6℃、8月が26.2℃であった。現在の北海道旭川市の8月の平均最高気温は26.6℃であるのでこれより低かったのである。真夏日も年間で9日間しかなかった。しかし、8月に限れば1905年の方が涼しく、東京の平均気温は22.2℃、平均最高気温は25.7℃であった。これは旭川のさらに北の美深町の現在の平年値に相当する。このような冷夏は人間にとっては快適でも稲にとっては大敵である。これらの年はいずれも明治の大冷害年として知られている。日照時間だけなら、これらの大冷夏年よりも2017年8月や2020年7月の方が短かった。もしも地球温暖化が無かったら、2017年や2020年は1902年や1905年をも上回る記録的冷夏になっていたかもしれない。

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