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    • 再生

      ベースボーカルで唱える御詠歌 Goe((ika))

      2020年9月15日から2024年3月31日までの東京生活はその時々で濃淡はあれど、そのほとんどにおいて 「小原綾斗になりたい近づきたい」 が軸にあり続けたと思います。 髪も肩にかかるほど伸ばしたし、薄い髭も無理やりに伸ばしたし、ファッションも真似しました。彼が通った古着屋に出入りしたりもしました。とにかく形から入ろうとしていたと思います。 思想も探ろうと思っていくつかの娯楽作品にも触れました。映画もアニメも漫画も、もちろん音楽も。実は脱衣麻雀のヌードコレクションも買いました。 そこから得たものがたくさんありました。価値観も寛容になり、交友関係も広がったと断言できます。しかし、その分犠牲にしたものもあった気がするのです。 ———————————————————————————— いわゆるartistたちはその作品が芸術的か商業的かというカルマを背負っている。「BGM」という表現はmusicが、人々を楽しませるものとして出発した背景を最大限に考慮した謙虚さの顕れである一方で、非常に月並みな表現でもある。現実世界においては一枚のレコードが1人の人生や価値観を変えることもあるだろうし、民主革命の原動力になることさえあった。音楽はそれだけのパワーを秘めている。だのに音楽は所詮「「BGM」なんです」なんていう姿勢は謙虚どころか不誠実とさえ言えてしまうだろう。"預言者"の歌詞を読むと『「BGMのせい」で「人生は革命」であることに気付かされ「恥の多い暮らし」に恐縮し「BGMちょうだい」』と言っていた消費者が、『「人生は革命」であることに向き合い「BGMじゃない」音楽を「生き恥をかいて歌う」』まで開き直ってしまったと読み取れる。これは小原綾斗の内面の吐露かもしれない。自分の作品が、自分の歌詞がリスナーや社会に与える影響力を直視して、半ば照れながらも自分のことを"預"言者と表現したのだ。「イカれてるって思うのかな」はその照れ隠しにも思える。「未来のこと話せるより 今なに思ってるのか知りたい 馬鹿なことって分かるけれど 気持ちよく送り出してよ」は内面の吐露的な前半の歌詞と打って変わって、明らかにリスナーへのメッセージ的である。これをどう受け取るかは個人差があるだろう。そもそも「(((shiki-soku-ze-kuu )))」や「NEHAN」のように仏教色丸出しの楽曲を取り揃えているのも社会批判を行い、リスナーに対する説法をするつもりだからというのは考えすぎではないだろう。 Tempalayに夢を預けられた男(一方的にそう思い込んでいるだけ)が、久々に聴く楽曲がこれでは頭を抱えてしまう。いまさら公認を与えられたような気分なのだ。 "預言者"というタイトルは少なくとも私にとってはそういう意味で特別なものに感じてしまうのである。

      • 女賢しくて牛売り損なう? 『「虎に翼」第1週感想』

        「100年先も覚えてるかな?知らねぇけれど、さよーならまたいつか!」 市川房枝らが女性参政権獲得を目的として婦選獲得同盟を設立してからちょうど100年、日本国憲法が発布されて約70年、そして、三淵嘉子が女性初の家庭裁判所長に任命されてから約50年の年、2024年。前期連続テレビ小説「虎に翼」についての所感を書いていきたい。 今年度から新社会人である立場から見ると味わい深い作品。新卒ってみんなどこかみんな借りてきた猫みたいに「スンッてなる」から。数年前の自分が見ていたらまた