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爺さんの一日、一景、一笑 #19 携帯料金

「今月は、電話料金が3万円もかかった。高いわ」
と長らく一人住まいの八十歳過ぎた叔母が言う。
「3万円?その携帯電話で一体何しているの?まさかゲームでもしているわけじゃない?」
と、所謂古びたガラケーを指さしながら聞く。
「電話だけよ。メールなんかよくわからないので使ったこともない。ただ、よく県外の友達にかけることが多いので、高いのかね。そうよね、相手は遠い東京だからかね。だから、夜は必ず八時以降にかけるようにしているのよ」
『県外?八時以降?昔の固定電話だった頃の話をしているのか、電話をするだけで3万円?絶対おかしい。』
 電話料金の請求書の明細をみた。
確かに基本料金と通話料で31,500円とある。よく見ると、通話料がいくら長くかけても定額のいわゆるかけ放題になっていなかった。
 直ぐに電話会社に電話した。
「どういうこと。年寄りをあまりバカにするなよ。今時、電話だけしか使ってない携帯料金を、かけ放題にするのが普通だろう。十年以上も前に固定電話を止め、携帯を使い始めているのに、サービス料金の改定を知らせるのはいつでもあったはずだ。年寄りが気づかないと、そのまま高い料金のままほっとくとは、あまりにあくどい商売するな」
と、多少強引にまくし立てた。
『年寄りとはいえ、ホントは使っているこちらが、早く気づかない方が悪いのだけど』
 結局、今月から、料金は3,000円均一のかけ放題の金額になった。
実に、十分の一にまで安くなったことになる。
年寄りに限らず、いつでも何でも関心や疑問を持っておかないと、こんなことになる。

 二か月後、請求書を嬉しそうに私に見せながら、
「見て、すごく安くなったのよ。ありがとう。お礼にワイシャツを買ってあげるから、どれがいい?」
見せてくれたチラシには、一着980円とあった。
ケタが違うんじゃない?ま、ええけど。

 翌月。
 叔母の所へ電話をしても、いつも話し中となっているので、どうしたのかと家を訪れた。
「また、えらく電話ばかりしているんじゃない?」
「そうなのよ。携帯料金が『かけ放題』で安くなったと友達に話したら、友達がお礼にメロンを送ってきてくれた。一個持って帰って。そうそう、みんな知らなかったみたいよ。だから、みんなで元を取ろうと頑張って電話しているのよ」
『お~、たくましい!』

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