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お嬢さん

 

 通勤バスが発車しようとしたところ、二人のおばさんがあわてて乗りこんできた。
「いいですか、座ってください」
と運転手が促す。
 空いた席はいくらでもある。それでも、おばさん達はどこに座ろうかと思案し、やっと決めた一番後の席に座った。
 それを確認してようやく、
「発車します!」
と、やや大きな声でアナウンス。
 ものの三分も経たない内に、次のバス停に到着。
 すると先程のおばさん達が、
「おりま〜す!」
と、席を立った。
『もう降りる?前に座らんかい!』
 運転手の横にある料金箱に、運賃を入れようと財布を開く。
「190円?安いわね!あら細かいのある?」
と今度は、二人でお互いの財布を覗くが、あいにく小銭は無いらしく、千円札を両替する。
 さすがに遅くなりバツが悪いと思ったのか、
「ごめんなさいね」
と謝った。運転手が、
「いいですよ、ゆっくりでお嬢さん!」
『お、お嬢さん!?』
思わず吹き出しそうになった!
 すると、そのお嬢さん達は、200円を料金箱に入れ、
「お釣りはいいから!」
と言いいながら、颯爽とそして笑みをたっぷりにこちらに向けて、降りて行った。
『素敵な笑顔ね。お嬢さん!!』
 


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