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腸内細菌と私 第5章 納豆菌はなぜ便秘や下痢に良いのか


納豆菌はなぜ便秘や下痢に良いのか


納豆菌には便秘や下痢の原因になる、腸の腐敗菌の働きを抑制する効果があります。その理由の一つは、納豆菌のしぶとさです。専門的にいえば、納豆菌は芽胞菌という種類の単細胞生物ですが、飲めば腸の中で腸内細菌の善玉菌として働き、ビフィズス菌のような善玉菌の増殖を助ける働きがあるのです。とはいってもビフィズス菌や乳酸菌とは種類がちょっと異なります。ビフィズス菌や乳酸菌は、その名前の通り菌の形をしていますので、熱や酸などに弱い性質があります。つまりちょっと温度が上がったり、胃酸などに触れたりするとすぐに死んでしまいます。
ところが納豆菌は、菌ではあっても周囲の環境が繁殖に適さない状態になると胞子状になって熱や酸に強い形になるのです。乳酸菌やビフィズス菌は胃酸に触れ60度、30分の加熱で簡単に死にますが、納豆菌は80度、30分の加熱でも死にません。胃酸にも強いのです。また日光や乾燥、さらに低温にも強く、マイナス100度であっても生き続けます。そこが同じ腸内細菌であっても他の細菌と違うところです。
同じ腸内細菌であっても菌の形をしたビフィズス菌などは、口から胃、そして小腸に行くまでに、胃酸などに侵されてほとんど死んでしまいますが、納豆菌はしぶとく大腸まで辿り着きます。

O・157には納豆菌が効く

と題した記事を毎日新聞(平成9年7月27日)で見ましたが、納豆菌には、病原性大腸菌O・157の増殖を止めて消滅させる働きがあることが、倉敷芸術科学大学の須見洋行教授の研究でわかりました。抗生物質のなかった時代、戦前の日本海軍ではコレラやチフスの予防や治療に納豆を使っていたといいます。納豆菌に抗菌作用があることは知られていますが、猛威を振るうO・157の「予防食」として効果が確認されたのは初めてでした。
納豆菌はジピコリン酸という特有の抗菌物質を含んでいますが、実際はジピコリン酸単独の実験より抑制効果が大きかったといいます。納豆菌には他にタンパク質分解酵素なども含まれており、これらが共同して病原性大腸菌の増殖を抑え、最後には死滅させると見ています。
須見教授は「納豆菌は抗菌剤のように他の有益な腸内細菌まで殺してしまうことはなく、逆に乳酸菌など増やす納豆を見直してほしい」と話しておられます。
 
乳酸菌

最大の善玉菌 乳酸菌は糖質を分解してたくさんの乳酸を生み出す菌です。乳酸菌は私たちの生活に非常に馴染みの深い菌で、ヨーグルト・チーズ・漬物・味噌などの発酵食品や乳酸菌製剤などの医薬品の製造に利用されています。
一方、人間の胃腸管にも自然環境中のものとは異なりますが、やはり糖質を分解して多量の乳酸を産生する腸管固有の乳酸菌が存在します。腸内の乳酸菌はさまざまな物質の産生等によって人間に大きな影響を及ぼしています。詳しくは前に述べた通りですが、人に悪影響を与える物質は産生しません。何らかの疾患があると、乳酸菌群は減少します。生活習慣病の多くに便秘症状が見られるのは、そのことをよく示しています。このことから腸内の乳酸菌は人間の健康や疾病と深くかかわっていることが推測されます。
悪玉菌が増えてしまったとき、この善玉(乳酸)菌をいかに早く増やしてあげられるかがカギとなります。食品の排水処理の場合、食材の違いで菌層が異なり、新設の処理施設を稼動させる場合、簡単に馴養するには同業者の汚泥菌をもらってきて投入すればすぐに立ち上がり、自然に馴養すれば数週間を要することはその道の常識です。人間のおなかの中も同じことがいえます。腸内細菌から分離培養された菌はすぐに繁殖を開始できますが、外来種の乳酸菌の場合は馴養期間がかかるのです。
 
ビール酵母

タンパク質の合成に欠かせない
ビール酵母は10ミクロンぐらいの真菌類の有用微生物で、麦芽糖をアルコールと炭酸ガスに分解してエネルギーを得るもので、自らも増殖します。
ビール酵母には次のような多くの食効があるといわれています。タンパク質の合成に欠かせない高分子化合物の核酸が非常に多く、ガン抑制効果の高い多糖類が豊富に含まれています。
 
◎ビタミンがたっぷり
ビール酵母は、ビール独特の味や香りをつくり出すだけでなく、非常に栄養価の高い食品にもなります。アミノ酸が豊富で約20種類のアミノ酸が含まれています。つまり体に必要な8種類の必須アミノ酸もバランス良く含まれているのです。次にビタミン群が豊富です。ビタミンB1、B2、B6、B12、パントテン酸、コリンが含まれているのですが、ビタミンB群、中でもビタミンB1を多く含むのが特長です。ミネラルではカリウム、カルシウム、マグネシウムが豊富です。ビール酵母の3分の1は食物せんいです。食物せんいが豊富で便秘解消効果もあります。
このようにビール酵母は優れた栄養成分と有効成分を含んでいますが、現在知られている酵母のなかで、もっとも栄養価値が高く、食効を持つといわれています。そのため、ビール酵母をそのまま乾燥させたものが医薬品として販売されているものもあります。
 
◎生命をつくる基礎的な物質を含む
さらに酵素類ではマルターゼ、ラクターゼ、アミラーゼ、トリプシン、インベルターゼ、メルヒアーゼ、エレフシン、リパーゼ、ベルターゼ等の消化酵素をはじめ、酸化還元酵素のグルタチオンペルオキシターゼ、カタラーゼ、チマーゼなどがあります。
さらに、ミネラル類も豊富なほか、エルゴステリン、レシチン、核酸、グリコーゲンなども含まれています。このうち核酸は生命をつくる基礎的な物質として成長、生殖、遺伝などに関係する重要な物質であり、代謝作用として大切な働きをしています。

イチョウ葉エキス

 
◎血をサラサラにする
イチョウの葉エキスの薬効は、近年非常に注目を浴びています。特に脳血管の血流を良くし、脳血管障害の予防に有効であることがわかってきました。ドイツではイチョウの葉は医薬品として扱われています。アメリカの調査では、イチョウの葉エキスが脳内の血液の流れを良くする効果があったと発表されています。
イチョウの薬効が顕著なのは緑葉で特殊なフラボノイド(二重フラボノイド)とギンコライドという物質によります。イチョウの葉エキスには、血液をサラサラにする作用があり、また体内免疫や炎症、アレルギー、血栓症、喘息などに効果があるといわれています。疲労回復やアルツハイマー病、肩こり、冷え症、神経痛、更年期障害などに効果があるといわれています。ボケ防止に役立つというのもよく知られています。

なっとークィーン|株式会社健将ライフ (onakagenki.com)

次回は 第6章 自然治癒力をとり戻すために
自然治癒力と免疫

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