Brown Noise

この音、遠い彼方の記憶というか、
もう一つの人生でよく聞いていた音だ
昔のイランのバザールの音
人が出入りする入り口
風が砂ぼこりと共にバザールの中に入ってくる音
少し 海鳴りにも似てる気がする
海鳴りはもっと深くて怖い感じの音だけど
何か 似てる
話しはそれたけど
昔 私は男で イランのバザールで茶葉を売っていた
今のバザールは近代的だけど
昔はもっと天井が低くて造りも頑丈じゃなかった
人はもっと多かった
みんなここで成り上がろうとしていた
そういう人が多かった気がする
そして男だった私もそうだ
バザールの中の途中にある中庭みたいな風が通る場所
ここで私は行動観察をするのが好きだった
ただ突っ立ってるだけじゃなくて 
もちろんここで商談相手と多くは待ち合わせの場所に使った
商談相手を待つ間の時間が好きだった
少し空を見上げると
青とは呼べないけど青みがかった薄い水色の空を見ていた
中庭というか回廊に近いんだけど
ここは風が強く くるくる風が回りながら
砂ぼこりと共にバザールの中に吹き込んでいく
少し茶色がかった光景
細かい砂の粒子
なぜかとても記憶に残っている
そして沢山の人を騙し 自分だけが得をした
もちろん紅茶も愛していた
だけど女性は最後まで愛せなかった
たくさんの女性と体を重ねたが 
愛する人とは出会えなかった
そして沢山の女性も私を誰一人として愛さなかった
人を愛するってどういうことだろう
多分 それが今の私の中に感情として残っている
イランに行ってみたいが 確か国交がなかった国だと思う
アメリカが悪の枢軸と言った国
私が昔 小作人から頑張って商売人にまで成り上がったバザールを有する国
本当に紅茶が大好きだった
でも心臓病かなんかで40前半で突然倒れて亡くなっている
沢山の女性たちに囲まれながら亡くなった
でも
誰も愛さなかった人生
誰からも愛されなかった人生
その思いだけがずっと心の中に残っている 
死んだ後も
そして生まれかわった今も
今私は前世の時より少しだけ長生きしている
何か今後人を愛することをわかる時がくるのだろうか

#詩

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