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宗教や信仰についての雑記 #96

◯「なぜ私だけが苦しむのか」を読んで①

先日、「なぜ私だけが苦しむのか」(H・S・クシュナー著 斎藤 武訳 岩波書店 同時代ライブラリー)という本を読みました。
この本は、アメリカに住むラビ(ユダヤ教の教師)である著者が、息子を早老症で亡くした悲しみを通して得たものを綴った本です。

この本の原題は、“WHEN BAD THINGS HAPPEN TO GOOD PEOPLE”(善良な人々に悪いことが起きるとき)で、その主題を扱った代表的な書物として「ヨブ記」を挙げています。
そして、そのヨブ記をめぐって信仰を持つ人々が信じたいこととして以下の3つの命題を挙げています。
・神は全能である
・神は正義で公正である
・ヨブは正しい人である
著者は、善良な人々に悪いことが起きたときに信仰を保つためには、それら内の1つを否定しなければならないとしています。

彼が選んだのは最初の「神は全能である」ということでした。
善良な人の身に降りかかった悪いことは神が起こしたものではなく、神にはそれを止めることはできなかったというのです。
おそらくそれは、ラビとしての教育を受けてきた著者にとっては苦渋の選択だったでしょう。

その選択の結果現れた神の姿は、苦悩する神、慰める神でした。
人と共に苦しみ、その人の苦しみを和らげようと慰める神の姿は、遠藤周作が「イエスの生涯」で描いたイエスの姿とよく似ています。
また、苦しむ衆生を救おうと誓願を立てた阿弥陀仏とも共通するものがある気がします。

人が耐え難いほどの苦しみの中で、長く深い模索を経て求める超越者の姿は、場所と時代を超えて共通するもののように思えます。

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