ドラマ「何かおかしい2」第2話「おだいこさま」について考察・感想

ドラマ「何かおかしい2」第2話「おだいこさま」
ネタバレあります。

恐ろしい秘密を抱えた家族という鉄板モチーフと現代テイストがマッチしていて引き込まれました! 悪人が笑うラストにはゾクリ。シーズン1とは違った余韻に呆然からの陶然。

さて、一件への上村さんの関与について検証していきます。

この話を構成する主なエピソードは、「サトシさんの実家での奇妙な出来事」→「おだいこさまの風習発覚」→「土屋DによるSNSへの書き込み」→「サトシさんの弟の逮捕(身代わり)」→「サトシさんの謝罪・自殺未遂」→「リストカット画像のSNSへの投稿」となります。

結論から述べると、上村さんはサトシさんの暴行疑惑と日陰の弟の存在を事前に把握していた。狂言自殺とその画像の投稿も2人が共謀して行ったことだと考えます。ただしおだいこさまの風習発覚と土屋DによるSNS投稿は計算外だった。

順を追って見ていきます。


①実家での事前取材時の奇妙な出来事

サトシさんの実家を訪れた田島ADが切り取られた写真やサトシさんによく似た人物を目撃したことが、おだいこさま発覚につながります。ですが、ここで疑問がいくつか。

なぜアルバムから1枚だけ写真が落ちたのか。よりにもよって消された弟の存在を示唆する写真が。どうしてクロコの弟はあの日に限ってあんなにはっきり姿を見せたのか。

両親も弟も隠すこと/隠れることに慣れているはず。あの歳まで世間から弟の存在を隠しておおせたのです。あんなヘマをするでしょうか。弟が取材への好奇心に負けたとは考えにくい。サトシさんは人気俳優だそうですから、マスコミは珍しくもないでしょう。

ゆえに田島ADが体験した奇妙な出来事はサトシさんの家族がわざと仕掛けていたものと推測されます。何のために? クロコの弟の存在を仄めかすために。


②おだいこさまの風習発覚・土屋DによるSNS投稿

雨穴さんがドラマ本編に登場。視聴者とドラマ世界の橋渡し的ポジションなのでしょうか? そういえばシーズン1では登場時に原案とテロップが出ていましたが、今シーズンでは名前だけですね。

閑話休題。内山さんが雨穴さんとコンタクトをとり、サトシさんの実家が双子を差別して育てているらしいとわかります。

ここで、ドラマ内で「おだいこさま」というガジェットが果たす役割を考えます。

タイトル回収であり、弟がサトシさんの身代わりとして逮捕されるという異常な状況に説得力を与えています。しかし、逆に言えば視聴者と番組関係者への動機説明以上のはたらきを為していません。

むしろ、サトシさんの弟の逮捕をスクープし、狂言自殺で世論を味方につけようとするなら「おだいこさま」の風習がバレてしまうことは不都合なはずです。現代においては因習レベルでおかしい話ですし、弟が身代わりになったと勘づく人が出かねませんから。

「おだいこさま」については上村さんも知らなかったか、知っていても隠すつもりだったのではないでしょうか。

土屋DによるSNS投稿は、上村さんにとって計算外の出来事だったのでは。土屋Dが仲間を使ってSNSに書き込んだ時、上村さんは不快そうな顔をしていました。

流れを見ても、上村さんが「おだいこさま」の暴露を計画していたとは考えにくい。

土屋Dの性格からして、サトシさんの秘密を知ればネットに書き込みかねない。でも、内山さんが雨穴さんにメールしなければ、雨穴さんがメールを見ていなければ、「おだいこさま」について知らなければ、土屋Dが「おだいこさま」を知ることはなかった。

もし上村さんが「おだいこさま」暴露を狙っていたならば、もっと確実な手を使ったはず。


③サトシさんの弟の逮捕(身代わり)

土屋Dの投稿でSNSがサトシさん批判に傾き始めた時に、ちょうどよくサトシさんの暴行疑惑の話が出ました。上村さんは偶然と誤魔化していましたが、さすがに都合が良すぎます。本当は、田島ADの奇妙な体験からサトシさんの実家へ中継班が向かう → サトシさんの弟の逮捕場面に遭遇 → 暴行疑惑の雑誌記事を出す、という流れを想定して準備しておいたものでは。

逮捕シーンをとらえられるかは若干賭けですが、関係者には事前にある程度予定が伝えられているのでしょう。有名人が連行されたりパトカーに乗せられたりする映像は割とテレビなどで見かけます。


④サトシさんの謝罪・狂言自殺

サトシさんは弟に罪を擦り付けるとともにイメージアップを企んでいる。弟の逮捕からの素早い謝罪は事前に計画していたもの。ただ、土屋Dによるおだいこさまの暴露というイレギュラーが起きてしまいました。

サトシさんが弟をクロコとして使っている、という投稿に荒れるSNSをサトシさんに確認してもらおう、とスタッフがスタジオに伝えている時、サトシさんはスマホを取り出してチェックしています。上村さんからのメッセージを受け取ったものと推察されます。

そこでトラブルの発生と謝罪へのスタンバイ指示が伝えられた。だからサトシさんはあんなにも俊敏に反応し、迷いなく土下座できた。

狂言自殺もあらかじめ計画されていたこと。刃物がその証拠です。その辺に落ちているとは考えにくい。リストカット用に隠し持っていたか、トイレまでのどこかに隠しておいたのでしょう。

田島ADがサトシさん探しに遣られたのは、サトシさんのリスカ姿に驚いてすぐにその場を離れそうだったから。サトシさんの傷をよく観察すれば、死ぬには浅すぎることや右手を怪我しているという不自然さに気づかれかねません(スマホを操作する様子から、サトシさんは右利きと思われます。万が一にも命に関わらないように利き手と反対の手でリストカットしたのでは)。

サトシさん探しを実際に田島ADに命じたのは土屋Dですが、上村さんは土屋Dより立場が上ですからその気になれば別の人にやらせることも可能です。そのまま田島ADを行かせた = 彼女が適任だと判断した。

内山さんや土屋Dではサトシさんに近づいてしまうかもしれない。田島ADなら女性だから男子トイレに長居したくないという心理も期待できます。一番立場が弱いので雑用を押し付けても誰も違和感を持たない。土屋Dが何も言わなければ上村さん自身が田島ADに指示を出していたのでは。


⑤リストカット画像の投稿とSNSの反応

サトシさんの狂言自殺画像の投稿はサトシさんが死を考えるほど責任を感じていたとアピールして同情を買うとともに、オビナマを終わらせるために行われた(最終回より)。

撮影・投稿したのは上村さんかその仲間でしょう。SNSでは上村さんの望み通り叩かれていますが、オビナマを打ち切らせるまでには至りませんでした。


ところで、この話はリスナーの反応がコロコロ変わるのが印象的です。

クロコ扱いに最初は批判的だったのに、サトシさんのインパクトある謝罪で「家族の形のひとつ」など肯定的な論調になります。と、思いきやリストカット画像にはやり過ぎと苦言を呈しています。倫理観が歪んでいるのかいないのか……。

ここで思い出します。そもそも「おだいこさま」の件に気づいているのはオビナマneoのメンバーだけです。

土屋Dの投稿文は「サトシは双子の弟をクロコとして使っている」だけです。おだいこさまを知っていれば対となるクロコの意味もわかりますが、知らなければクロコという単語からおだいこさまには繋がりません。

土屋Dの投稿を見たリスナーは「クロコ」をどう解釈するでしょう。真っ先に思いつくのはドラマ本編でも言及されていた歌舞伎の黒子。だから「弟に身の回りの雑事を押し付けて歌舞伎の黒子のように扱っている」あたりが無難なところでしょう。ニートの弟を養う代わりに家事を任せていた、くらい好意的な見方も十分ありえます。

サトシさん自身も弟に身辺の世話をさせていることは認めても、「おだいこさま」など直接的なワードは口にしていません。だからリスナーは弟が洗脳状態にあるなんて思いもせず、サトシさんの「弟も大人なのだから嫌なら家を出て行く」という発言を信じた。

女性への暴行はサトシさんのふりをした弟がしでかしたこと。双子なのに違いすぎるサトシさんを弟は妬み、あまつさえサトシさんを騙った。そんな酷い弟のためにサトシさんは土下座までして、代わりに真摯に謝罪した。こんなストーリーが出来上がり、全てを知っているスタッフやドラマ視聴者にとっては異様なタイムラインが生まれたのではないでしょうか。

さて、結論。上村さんはサトシさんの暴行疑惑と日陰の弟の存在を事前に把握していた。狂言自殺とその画像の投稿も2人が共謀して行った。おだいこさまの風習発覚と土屋DによるSNS投稿は計算外。

お読みいただきありがとうございました。

花岡さんの前シーズンでの映像がちょっと流れたのは予想外で嬉しかったです。しかもドS王子失脚シーン。今回のサトシさんとの対比にもなっているとしたら心憎いチョイスです。

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