ドラマ「何かおかしい2」第11話「人探し」について考察・感想

ドラマ「何かおかしい2」第11話「人探し」
ネタバレあります。

偶然の恐ろしさをまざまざと見せつけられました。偶然が普通の人を悪に染めて、他の人の人生まで狂わせてしまう。魔がさすことは誰にでもあります。自分は偶然の魔力に抗えるだろうかと背筋が冷えました。

さて、今回の件について検証していきます。
(小林俊太郎さんを探していた人のことは、番組内での呼び方に倣って「リスナーさん」と表記します)

今回のイベントは二本立てです。結論を先に書くと、

*小林俊太郎さん探し
・リスナーさんは誤配送で元男子生徒Aの現在の名前と多額の印税収入を知り、ラジオで探して強請ろうとした。
・上村さんは捜索対象の小林俊太郎さんが元男子生徒Aであることに気づいており、番組内でトラブルを起こしてくれそうな「ヤバい人枠」でお便りを採用した。目的はオビナマ潰し。

*花岡さんにガセネタを掴ませる
・上村さんは元少年Aの周辺を調べるうちに美人局3人組を見つけて、彼女らを利用して花岡さんを陥れることを思いついた。動機は過去のヤラセ番組でのトラブルの恨み。
・田島さんは美人局3人組にガセネタを仕込み、花岡さんのもとに送り込んだ。動機は調子に乗っている花岡さんが気に食わなかったから。
・内山さんは放送中にタイミングを見てガセネタを指摘し、花岡さんに恥をかかせた。動機は花岡さんをもともと良く思っていなかったのと、仕事を半ば奪われたから。
・花岡さんは力也さんへのドッキリの恨みを晴らしたいがため、早まってガセネタを掴まされた。
・力也さんからのドッキリの陰にも上村さんの誘導があった可能性。

出来事を順番に見ていきます。


①小林俊太郎さん探しのお便り

小林俊太郎さん宛の封筒の中身をみたリスナーさんは、強請りのために小林さん(元男子生徒A)を探すべくラジオにメールを送ります。

宛先は偶然その時に聴いていたオビナマ。人探しのシチュエーションもその時オビナマで流れていた曲の歌詞のパクリ。

ちなみに歌とメールの共通点は
・喫茶店の隣の席から懐かしい名前が聞こえた。
・名前を卒業文集で確認した。
・ラジオにリクエスト。
・伝えたいことがある。
……ほぼ丸写しですね。


②上村さんが小林俊太郎=元男子生徒Aと気づく

これまでの話から、上村さんは割と番組へのお便りをチェックしているようです。その中でリスナーさんからのメールを見つけて、文面と歌のあまりの符合を不審に思ったのではないでしょうか。

リスナーさんのメール文のパクリ元になった曲は、ラジオで流れるくらいですから流行歌か有名曲と考えられます。そうでなくても、その日に流れた歌なら頭に残っていてもおかしくありません。

リスナーさんに何らかの意図があると察した上村さんは唯一の手がかりである「小林俊太郎」が何者か調べ、元男子生徒Aに行き着いたのでは。

「小林」も「俊太郎」もよくある名前ですが、最近「罪人シックスティーン」が映像化されて話題になったため、本腰入れて検索すれば容易く見つかったことでしょう。話題ゆえに「小林俊太郎」と見た瞬間に南東京高校連続刺殺事件に結びついた可能性もあります。


③上村さんが美人局3人組を見つける

捜索対象の小林俊太郎さん=元男子生徒Aとわかっても、リスナーさんの正体や目的は不明のままです。これでは番組で取り上げても面白い展開にならない懸念が大きい。それに、肝心の小林俊太郎さんが現れない可能性も大いにあります。

そんな時は情報収集が定石です。男子生徒Aの犯行動機は「いじめを見て見ぬ振りする大人への復讐」ということになっています。とりあえず調べるとしたら、当時の南東京三校の様子や男子生徒Aの周囲の人間などか適当そうです。

こうして上村さんは学校内トラブルとして美人局3人組による教師への恐喝を嗅ぎつけたのでは。さらに美人局3人組のその後を追って、力也さんの学校に転入したことを突き止めた。


④力也さんが花岡さんにドッキリを仕掛ける

この話を構成するもう一本の糸です。

花岡さんと力也さんはこのドッキリまで仲が良かったそうです。性格的には正反対で、相性が悪そうに見えますが。

花岡さんは田島さんの知人の地下アイドルすらターゲットにするくらい、手当たり次第に暴露しています。並の人なら花岡さんを敬遠したくなる。花岡さんの方も訴訟や厄介事は御免でしょうから、なかなか人に気を許せない。

2人を結びつけたのは力也さんの単純さでしょう。力也さんは根拠のない自信から、自分には恥じるところなどないと思っていた。だから花岡さんに平気で近づいた。花岡さんも、力也さんに脅威を感じなかったから気楽に付き合っていた(適当にあしらっていただけかも)。

要するに花岡さんは力也さんを舐めていた。だからドッキリに必要以上の屈辱を覚えたのでは。

このドッキリへの復讐と人探しの話がこれから絡み合っていくわけですが、偶然にしてはうまくいきすぎです。

もしかしたらこのドッキリは上村さんが唆したのかもしれません。SNSや動画のコメ欄なら匿名でそれとなく提案できます。


⑤上村さん、内山さん、田島さんが結託する

番組で波風立てたい&過去のヤラセ番組関係者の中で全く反省の色の見えない花岡さんに痛い目を見せたい上村さんは、力也さんと花岡さんのいざこざを利用しようとしました。

暴露系配信者である花岡さんの武器は暴露。力也さんへの仕返しにも暴露を使おうとすることは容易に予想できます。

人探しの件もあるので、全てを上村さん1人で仕込むのは困難です。内山さんと田島さんを仲間に引き入れます。2人とも花岡さんを良く思っていません。内山さんはオビナマの仕事を半ば奪われており、田島さんは芸能人気取りの様子が気に入らないと発言しています。

上村さんは力也さんの過去を知っていそうな相手として、美人局3人組を田島さんに教えます。田島さんは彼女らに会いに行き、ネタを引き出してガセネタに変えて吹き込んだ。そして3人組を花岡さんの元へ送り込んだ。

美人局3人組からネタ提供を受けた花岡さんは、上村さんにロケの提案をしてきます。みがうまくいっている証左です。上村さんはOKを出して日程を調整し、内山さんにいつ暴露が行われるか伝えます。内山さんはそれを元にガセネタ指摘の準備を進めます。


⑥人探しスタートと花岡さんによるリベンジ

生放送中の出来事に入っていきます。

リスナーさんからのお便りが紹介され、小林俊太郎さんに関する情報提供が呼びかけられます。同時進行で花岡さんのロケが中継されます。

花岡さんは諍いのきっかけとなった肉の味比べに正解した上で、力也さんが教師時代に地毛が茶髪の生徒の髪を切った話を暴露します。

ここの場面、結構ツッコミどころが多いです。安い肉と言ってますが100gで1000円って十分お高いのでは。それに地毛が茶髪の生徒の指導で、なぜ髪を切ったのでしょう。茶色が問題なら黒染めすればいいのに。

閑話休題。写真と現在の本人たち証言だけに頼った暴露は弱く、全体的に反応はイマイチでした。花岡さんは根拠の薄弱さや反論の余地の多さに気づかなかったのでしょうか。

ドッキリで辱められて頭に血がのぼっていたせい、というのももちろんあるでしょう。ですが、暴露までの間に冷静になる時間はあったはずです。花岡さんなりの考えがあったのではないでしょうか。例えば、下の2つのような。

1つ目は迅速さの追求。ドッキリから仕返しまで、間が空けば空くほど視聴者のテンションが下がってしまいます。だからほとぼりの冷めないうちにコトを起こさなくてはならなかった。

SNSの反応を見ても、リベンジを期待する声が多数上がっていました。

2つ目は、ネットにおいて真実より雰囲気の方が力を持ちうる点。エビデンスがなくても風評被害で人や企業がバッシングを受ける事例は多々あります。また、カワイバコやひきこさんの回のようにクロのような反応を引き出せれば、それが自白の代わり、何よりの証拠となります。

だから美人局3人組の話の真偽を疑ったとしても、力也さんのイメージダウンに繋がる可能性や焦って自爆してくれる可能性に賭けた。

実際、髪切り事案を暴露された力也さんは「この子じゃなかったような……」と髪切り自体は認めたとも取れる発言をしています。SNSの方でも「これでは弱い」「まだ判断できない」という意見に交じって「力也ならやりかねない」という投稿もちらほら。

花岡さん自身もネタの弱さを自覚していたからこそ、反駁の隙を与えないよう暴露後はすぐスタジオへカメラを返さなくてはならなかったのでは。


⑦小林俊太郎さんが現れる

この部分も誤配達と同様に偶然と考えられます。オビナマはやっぱり「持ってる」のでしょう。

上村さんには今の小林俊太郎さんに働きかける手段がありません。

「罪人シックスティーン」の出版元や映像化した会社に当たってみることはできますが、個人情報は教えてもらえないでしょう。元男子生徒Aについては特にデリケートな問題ですし。

もしかしたら小林俊太郎さんは日々エゴサーチに勤しんでいたのかもしれません。手記が最近映像化されて話題になったそうなので、世間の反応が気になるのは当然。そこからオビナマに辿り着いた、というのはあり得る話ではないでしょうか。


⑧内山さんによるガセネタの指摘

内山さんから「さっきのナーハー砲の続きがある」と申し出があり、花岡さんに中継が繋がれます。そこで内山さんは、髪切り事案のネタ提供者たちが悪質な美人局3人組であるという、多数の被害報告書き込みを紹介しました。

花岡さんのロケ終了後から小林さん発見あたりまで、内山さんが上の空だったのはこの書き込みを画面に呼び出している最中だったからではないでしょうか。

もしかしたら、SNS投稿も内山さんの手によるものかもしれません。全部が全部とは言いませんが、最初に呼び水となる投稿をして、それに賛同コメントをつけるくらいなら。ある程度勢いがつけば、あとはユーザーが勝手に盛り上げてくれます。

下に見ていた内山さんに失策を指摘された上に煽られた花岡さんの目つきの鋭さたるや。


⑨美人局3人組から罪人シックスティーンに繋がる

美人局3人組が高校時代にもトラブルを起こして転校していた話から、表向きの転校理由である南東京連続刺殺事件の話が出てきます。

美人局3人組の高校時代のエピソードは、上村さんが内山さんに吹き込んだものと推察されます。花岡さんを追い落としたいだけの内山さんには、そこまで3人組について調べる理由はありません。

上村さんには、捜索対象の小林俊太郎さんが連続刺殺事件関係者であると示せば番組を悪い意味で盛り上げられるというメリットがあります。

ここでははじめしゃちょーさんの力也さん擁護からうまい流れができましたが、それがなければ上村さんがアシストするか内山さん自身が付随エピソードのような形で切り出していたのでは。


⑩小林俊太郎さんの正体が判明

ウェブサイトの記事から、南東京連続刺殺事件の被害者の1人にして犯人が唯一殺害を悔いている相手の名前が「小林俊太郎」であるとわかります。

そこから土屋さんが元男子生徒Aの両手の爪を噛む癖を思い出し、捜索対象の小林俊太郎さん=元男子生徒Aと判明します。

ただし、上の図式が明らかになったのはスタジオ内のみ。リスナーにははっきりとは示されていません。察しの良い人なら勘づいてしまうかもしれませんが、決定打に欠けます。誰かが騒いでもオビナマのせいにはなりません。

最後のシーンで、上村さんは大きな計画の存在を仄めかしています。ずっとオビナマを打ち切りにしようと動いてきましたが、小林俊太郎さんが現れてしまったことで番組の魔力を思い知った。だから逆に利用することにした。それゆえ打ち切りを回避すべく、肩透かしを承知で衝撃の事実を伏せたのでしょう。



あらためて結論です。

*小林俊太郎さん探し
・リスナーさんは誤配送で元男子生徒Aの現在の名前と多額の印税収入を知り、ラジオで探して強請ろうとした。
・上村さんは捜索対象の小林俊太郎さんが元男子生徒Aであることに気づいており、番組内でトラブルを起こしてくれそうな「ヤバい人枠」でお便りを採用した。目的はオビナマ潰し。

*花岡さんにガセネタを掴ませる
・上村さんは元少年Aの周辺を調べるうちに美人局3人組を見つけて、彼女らを利用して花岡さんを陥れることを思いついた。動機は過去のヤラセ番組でのトラブルの恨み。
・田島さんは美人局3人組にガセネタを仕込み、花岡さんのもとに送り込んだ。動機は調子に乗っている花岡さんが気に食わなかったから。
・内山さんは放送中にタイミングを見てガセネタを指摘し、花岡さんに恥をかかせた。動機は花岡さんをもともと良く思っていなかったからと、仕事を半ば奪われたから。
・花岡さんは力也さんへのドッキリの恨みを晴らしたいがため、早まってガセネタを掴まされた。
・力也さんからのドッキリの陰にも上村さんの誘導があった可能性。


お読みいただきありがとうございました。

いよいよ次で最終回です!
ところで花岡さんの目、ハイライトがほとんど入ってないように見えるのは私だけ?

ご意見、ご指摘、ご感想などありましたらコメントいただけると嬉しいです。

この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?