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地方も「相乗り」をやめよう

静岡県東部にある三島市は「水の都」として知られています。ここでは富士山域に降った雨水が地下を通って沸き上がってきます。三島と言えばウナギが有名ですが、ウナギが繁盛したのは、そのきれいな水でウナギがもつ生臭さを消すことができるからだと言われます。

静岡県はわたしが新人記者として赴任した思い出の場所です。静岡産と言えば、お茶やみかん、わさびが知られますが、わたしは静岡県民が一番誇りに思っているのは、「おいしい水」なのではないかと感じています。富士山からの恵みである静岡の水はおいしいのです。

川勝知事が退職届を提出し、4期15年の県政から退くことになりました。職業差別とも受け取れる発言をしたためですが、会見を聞く限り、明らかな差別発言であり、弁解の余地はまったくないと思いました。川勝知事をめぐっては問題発言が相次ぎ、批判が出ていました。長期政権による弊害だといえるかと思います。

わたしは川勝知事を知りません。川勝知事と言えばリニア中央新幹線の着工問題が知られます。着工の是非は別として、川勝知事が再選を重ねることができた一因として、県民が環境問題を重視したことが挙げられると思います。政治的なパフォーマンスに過ぎないという指摘もありますが、「水」を守ることは県民の琴線に触れるのです。

前任者である石川前知事は、県政担当だったとき取材しました。官僚出身の石川前知事は、温厚で知的な方でした。費用対効果が疑問視された静岡空港の建設を進める一方、文化芸術政策の強化や業務棚卸による行政改革に力を入れました。

しかし与野党が事実上相乗りしていたこともあり、県政は安定していたものの、予定調和的で活気があったとは言えませんでした。それが変わったのが民主党による政権交代が起きた年に誕生した川勝県政でした。あくまで外野からの個人的な感想ですが、「保守王国」だった静岡の印象がずい分変わりました。選挙も相乗りすることなく、与野党の対決がはっきりし、有権者にとっても選択肢が増えたように感じました。

中央政界と違って地方では、とくに野党第一党が対決を避けて相乗りするケースが多くみられます。これでは政治の活性化は図れません。地方政治に無駄な対決を持ち込むべきではないという意見もありますが、有権者に近い地方政治こそ、しっかりと政策を戦わせることが大事なのではないかと思います。


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