東大合格まで残り641日。
あらすじ*
世界に一人ぼっちになりたい。そんな夢とも言えないが、心の内側にずっと住んでいる小さな願望を叶えるチャンスが唐突に"与えられた"。俺に与えられた能力の名前は"仲間想い(ソウルメイト)"。
16歳の子供には不相応な力だった。だが、不相応な夢には丁度良い。俺は夢を叶えることを決めた。
クラスメイトの"岸辺"を仲間想いで吸収し、順調に足を進めていたかのように思われたが…?
"俺"_えむかえは、直感していた。この能力は対象の力を"全て"奪う。
奪うとは、奪うということだ。これが戦争だったら、例外、つまり奪い返されることもあるかもしれない。が、能力に例外はない。しかし…
「減っている…」
減っていた。岸辺を吸収したことにより溢れていた脚力や、筋力。思考力などが目に見えるように"減っていた"。砂時計のように。目を離せば消えてしまうんじゃないかと、そう思うようなペースだった。
減っている脳で考える。能力に例外はない。しかし現に減っているのだ。考えられる可能性は一つしかない。
岸辺は、能力者だ。
俺は走り出した。急げ。奴から奪った力は徐々に失くなってきている。しかし、これが失くなっているのではなく_戻っているのだとしたら?
急げ。急げ!!脚力が減ってしまったのを実感する。急ぐんだ。奴を、岸辺を_岸辺を殺した場所に_
「遅かったな」
「岸辺…!!!」
やはり岸辺はそこに"いた"。だとしたら…殺す。殺すしか、ない。腕力で負けている気はしない。俺は岸辺に向かって走り出す。
「まあ待てよ。なんで俺が"生き返った"か。知りたくないのか?」
喋らせるな。こいつは時間を稼ぎたいだけだ。
時間をかければかけるほど、力はこいつに戻っていっている。だとすれば今しかない。今が最も勝率が高いのだ。岸辺に近付き、そのまま蹴りを入れる。軽い体だ。奴の筋力もまだ何%かは俺の中に残っている。
勝った!
「勝った…と。思っただろ。」
もう一発蹴りを入れ、馬乗りになって顔を殴る。時折腹や足にも蹴りを入れる。
そのまま10分が経った。
荒れた息を整える。
死んだだろう。奴の力はすっかり失くなってしまったが、まあいい。俺は歩き出す。
それにしても、こんな身近に"能力者"が紛れていたなんて。なぜ岸辺は隠していたのだろうか。それらしい理由はいくつも思い付くが、もう知る方法はない。
最後に顔でも見てやろうか。
俺は数歩戻り、岸辺の死体を探すと_
そこから見えたのは岸辺の死体ではなく、
走り去って行く岸辺だった。
「!?あぁ!?」
たまらず後を追う。不味い。街に出られたら奴をやる手段がない!!
警察にでも行かれたら全てが終わってしまう。傷のない岸辺を見て警察は嘘だと思うだろうか?どちらにせよ岸辺は俺が能力者だと言うだろう。そして警察は俺を検査にかけ、俺の"仲間想い"の能力を知る。それだけは不味い!
焦りつつ、心は冷静に。俺は考える。
岸辺の能力は何だ?
「岸辺ェ!!!!!クソ!!!」
走れ、走れ、走れ。岸辺は警察に行くぞ。走れ!!
俺は"仲間想い"を発動させた。
頼む。吸収のスピードが岸辺の能力を上回るよう。恐らく上回っているはずだ。でなければ5日前の時点で岸辺に全て戻っていなければおかしい。
徐々に足に力が戻って来る。反対に岸辺のスピードが落ちて行った。
やはり俺の能力の方が速い!俺は岸辺の首元を掴んだ。
「捕ま…えた…」
そのまま倒れ込み、俺は息を整えながら岸辺に聞く。
殺す前にこれだけは聞かなければいけない。
「お前の能力は、何なんだ…?」
岸辺は少し笑い、言った。
「今言おうと思ってたとこさ」
そして、日付が変わった。
岸辺はやはり、殺した。岸辺を殺すのは三回目だが、一番苦しかったように思う。それもよく覚えていないが。
"仲間想い"で殺すと岸辺の能力で再生される恐れがあったので、口を塞いで縛り、埋めた。死んだのを確認して家に戻った。奴の能力から言ってもここから復活することはないだろう。
岸辺の能力。それは「貸しを作らない代わりに借りも作らない」岸辺はそう語った。
つまり岸辺が受けたダメージは相手の攻撃したという実感と"相殺"される。吸収した岸辺が復活したのもそれによるものだろう。
まあ無敵だ。対して面白くもない。
今岸辺を殺せたのはラッキーだった。唯一の不安は岸辺の行方不明の容疑が俺に被らないか?と言う事だが、岸辺が行方不明なのは警察からすれば6日前からで、その時は"仲間想い"で一瞬で吸収した。
疑われっこないだろうというのが結論だ。とにかく、早く眠りたい。俺は樹の下に座り込む。岸辺に引っ張られたような気がした。
おやすみ、岸辺。1年も立つ頃には俺以外の全員をそっちに送ってやるよ。
疲れ切った頭で、そう言った。一瞬でも俺の中にいた、岸辺に。
今日やったこと
基礎門題精巧
数学ワーク
明日やること
英語ワーク
システム英単語
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