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株は心理戦(1月29日号)

名村造船所の相場研究

日経平均株価は、1月22日に36,984円まで上昇し3万7千円を目前に急落し、1月26日には3万6千円割れまで下げ短期調整局面に入った。今後の先高期待が強い日経平均はさておき、個別の銘柄について論じたい。それは、当欄で一貫注力している7014名村造船所だ。あくまで筆者の私見として。

名村造船所の株価は、2023年3月27日に308円の安値を付け反転し、じり高基調から同年5月12日には一千万株の大商いで上昇波動を強め、安値から約5倍増に相当する1,546円を付けた。

7011三菱重工業も、名村造船所とほぼ同時期の2023年3月20日に4,460円の安値を付け反転し、本年1月23日に9,775円の上場来高値更新し株価は倍増している。7018内海造船は出遅れてはいたが、2023年8月から急騰しほぼ1カ月の9月8日、株価は約4倍増の7,830円の上場来高値を付けた。

名村造船所と三菱重工の2銘柄と内海造船とでは、相場の成り立ちに違いはあるが、今後の動向は一体的に捉えても良いかもしれない。

造船株より2年程先行していたのが海運株で、9101日本郵船を始めとする海運株3社(9107川崎汽船、9104商船三井)共に2020年中盤から底入れ反転し、長期上昇相場を形成している。この海運3社の相場について、終わったか否かの論議があるが、造船株の影響を受けたか否かは定かではないが、再び復活の兆しを見せていると筆者は見る。

再度、名村造船所に焦点を当てこれからの相場展開を推測してみたい。過去の相場を省みれば、2007年10月31日に2,510円、2013年10月1,560円の2つの相場の山がある。この二つの相場の山に対し、現在目指し目標としているのが1,560円であることは明らかだ。筆者は、1月23日に1,560円を抜いて調整するものと見ていたが、先週の1月23日は1,546円まで付け1,560円超えを回避して下落に転じた。筆者にしてみれば予想外の展開だった。1,560円を抜かなかったことで、今後の相場展開を推測する選択肢が増えたことになる。敢えて迷わせることを狙ったともいえる。まさに「株は心理戦」だ。更に加えて言えば、23日からの4日間で約2百円の下落幅を示現した。これまで同株は1千円台に入って、5~6日の上昇局面と8~9日の下降局面を繰り返している。基本的には上昇、下降幅は共に約200円程度だが、23日以降の4日間は2百円を超える急落となった。この背景には1,560円を抜けなかった失望売り、又は失望売りを誘ったと見ることができる。

同株の相場が一旦終わったと見れば、これ以上取り上げて論評する必要はないが、もし相場が更に継続すると仮定した場合を想定して論じてみたい。まず、何故1,522円を抜いたのに1,560円を抜かなかったのか。筆者は、1,546円で同株の第一章は完了したと先読みします。そして、第一の山の頂点である1,560円を抜いた時点から、第二章が始まると見ている。第二章が始まる前提として、上場来高値の2,510円を視野に入れていることは当然だ。その上で、第二章の完了後には第三章を残していると筆者は考える。それほど現在の造船株が内包する材料性に特筆するものがあると見ているからだ。

海運株と造船株は筆者の見方として、今後は更に同じ歩調を強めていくものと見ているからだ。その前提となるのが、名村造船所を中心とする海運株と造船株が内包している材料性に注目しているからだ。

隠れた重要な一つ視点に脱炭素の新規制がある。2023年に、IMO(国際海事機関)が導入する「燃料実績格付け制度」だ。船舶のGHG(温室効果ガス)排出量をリアルタイムで可視化して、航海終了時に環境性能を5ランクで評価できるもの。悪評化を受けると船のオペレーターやオーナーに改善計画の提出が義務付けられる。

日本郵船、商船三井、川崎汽船などの大手船社は、揃って2050年までのネットゼロ・エミッション化を目標として打ち出し、新燃料船の開発を積極的に行っている。現在のマーケットは運賃の高止まり状態にあるが、脱炭素の新規制による船舶のコントロール下では、運賃は下がらない可能性が高い。そのため、海運企業の収益構造における割安感の剥落リスクは少ないと筆者は見ている。

新型コロナ感染症の影響で停滞していた経済活動が再開し、海運市況が上昇していること背景に新造船市況は2021年を底に回復傾向にある。世界的には既存のディーゼル船のGHG排出量を抑えるため、LNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)、水素、アンモニア、メタノールなどを使用する新燃料船に切り替えることが求められていた。そのためには、2030年以降で年間1億総トンレベルの建造が見込まれ、2022年の全世界における新造船建造量約5,500万総トンの約2倍増にあたる新造船ラッシュが始まる。まさに海運株と造船株は両翼の関係にあり、その中心に名村造船所があると考える。

※投資行動は自己責任でお願いします

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