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泣かない子供、泣く大人

ここ最近よく見かけていた景色の中に、
卒業式終わりとおぼしき学生さん達の姿がありました。

彼ら、彼女たちは
嬉し気で寂し気で、
誇らしげで清々しく、

わたしはその姿を
目を細めながら眺めていました。


卒業式というものを
わたし自身何度か経験してきたけれど、
そのどれでも泣いた記憶はありません。

泣くどころか、
ホッとしてばかりでした。
あぁ、やっとこの場所から解放されるんだなぁ、とホッとしてばかりでした。

大人は子供に色々なことを言います。
大きな夢を持とうとか、友達を沢山作ろうとか、
好きなものを見つけなさいとか、ほんとうに色々なことを言います。

わたしはそのどれも持たない子供でした。

ただ、自分と、自分の反対側にある
世界をぼんやり眺めている子供でした。

そして、泣かない子供でした。

泣かないで
目を見開いて
耳を澄まして
じっとして感覚を研ぎ澄ましていました。

長い間。


それがある時、
自分と自分以外のものが繋がって、
開けていくのを感じました。


ぱっと、
嘘みたいに開けていくのを感じました。

それはもう本当に不思議なくらい。



あの時から
どうしてだか

わたしはすっかり泣く大人になりました。

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