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風は光ったりしないから


とてもよく晴れた午後。

細く長い道を
足早に歩いてみる。

髪や頬、
それから鎖骨のあたり、

乾いた風が
容赦なくぶつかってくる。


風は寂しさを孕んでいて
もう秋なのだ、ということを
実感する。


それにしても
よく晴れた午後。


悲しいことは何もなくて、
大笑いしてしまうようなことも何もない。


ゆらされる髪に触れようとして
こめかみのあたりの冷たさに気がつく。


心らしきものは
あてもなく動きまわり、


なにかを見つけては拾いあげ、
また何かを見つけては拾いあげを
繰り返す。


そのひとつひとつを
明らかにしようとすることは
途方もないことのように思える。

涙とか、傷とか、

あっちとか、

そっちとか。



道には何もない。

何もない中を
まっすぐに歩いていくことなんて

容易いことだと
ずっとそう思っていたのに、


何もない中を
まっすぐに歩いていくことが
こんなにしんどいだことだなんて。

知ってた、
知らなかった。



風がまたぶつかってくる。

本当によく晴れた午後だと思う。

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