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ニンニク

大学生というのは、とかく、バカなことをするものです。
今から、23年前、私が、大学二年生のときです。
当時、東京では、あるラーメン屋さんに行列ができていました。
そのころ、行列ができるラーメン屋さんは珍しく、私は、体育会系の先輩に連れられて行列に並びました。
カウンターに立ち、ラーメンを注文しました。
カウンターには、高さ20センチ、直径10センチほどの、円筒形の容器に入った、すりおろしたニンニクが置いてありました。
その店のニンニクは、無臭ニンニクではありません。
生のニンニクをすりおろしており、ものすごい臭いがします。
円筒形の容器には、半分ほど、1リットルほどのニンニクが入っています。
先輩は、「これ、全部入れて食ったら、1000円やる」と言いました。
極貧だった私は、喜びました。
「いいんですか」
「いいよ」
ラーメンの麺を食べ、スープを飲みながら、どんどんニンニクを入れていきます。味は、どんどん辛くなっていきます。
最後に、容器からニンニクを、ざざーっとどんぶりに入れました。
見ていた、店のおじさんは、笑いながら、「下痢するよ」と言いました。
辛く、しびれるような味のニンニクを飲み干しました。
2時間後から、下痢が始まりました。
翌日の夜、下痢は収まりました。
恐ろしいのは、全身の毛穴からニンニクの臭いがすることでした。
大学の1000人も入る大教室がニンニクの臭いでいっぱいになりました。
みんな、私の周りから離れて座ります。
教授も、教室に入った瞬間、「くさい」と言って、顔をしかめました。
爆笑が起こりました。
しかし、時間が経つにつれ、教授や学生の感情が怒りへと変わっていくのを感じました。
40分を過ぎたころ、教授が、「もう、我慢できない」と言って授業を終わりにし、教室から出ていきました。
学生たちも、走るように、教室から出て行きました。
私は、こうつぶやきました。
「終わった。もう、私の学生生活は終わったんだ」
まだ、二年生になったばかりでした。

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