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漫画『ドッグスレッド』感想

ゴールデンカムイの野田サトル先生の漫画だからという理由で読んでみたのだが…面白い。熱い。泣ける。

単行本が出ている1巻を読んだところ、要所要所で涙が溢れ出るではないか。

アイスホッケーを題材にした青春漫画なのだが、
読者はアイスホッケーのことは全くわからなくても大丈夫。なぜなら主人公のロウ君もアイスホッケー初心者だから。
帯に「全ての挫折を祝福へかえる!改善、成長、進化系アイスホッケー超回復コミック!!」とある。
出てくる者たちは、何かしら挫折だったり、諦めを抱えているのだが…今後どう回復していくのか、最後まで見届けたくなる。

キャラクターデザインがゴールデンカムイに似ているとか、もはやどうでもよくて「ドッグスレッド」自体が面白い。目が離せん。

ああ青春っていいなあ。熱い気持ちっていいなあ。
何かを好きになり熱中するっていいなあ。
でもこの漫画はそれだけじゃない。
ロウくんはもともとフィギュアスケーターで、双子の妹ハルナがいる。
ロウくんがスケートを続けるために、ハルナは大好きなスケートを諦めたのだ。一巻では暗い目をしばしば見せている。
ロウくんだけでなく、ハルナが今後どう「回復」していくのか。単なる熱い青春物ではない何かがドッグスレッドにはあると感じている。

それにしてもロウ君の真っ直ぐさが眩しい。
スケートを自分でできない状況にして、苫小牧でひょんなことからアイスホッケーの試合に出ることになるのだが、ロウくんの根底に流れるまっすぐさが胸にささる。シンプルに言うと「芯がある」と言うことだろうか。
あと、セリフがとても好み。
「おのれっ」とか、試合中にスケート靴壊れたときの「なんのッ、片足で行くわい!!」とか、なんか言い回しが好き。物事の判断基準が「美しい」「美しくない」なのもグッとくる。

この漫画はゴールデンカムイの前に連載していて打ち切られたのを描き直しているものだそうだ。
ゴールデンカムイもだけど、ドッグスレッドのために自腹でたくさんの資料を集めているらしい。

水木しげるも「家一つ描くのにも膨大な資料を参考にしている」と言っていたのを何かの本で読んだ。売れなくて貧乏な時から資料集めにお金を注ぎ込んできたという。あの迫力はそこから来ているのかと納得した。

野田サトル先生の漫画も、膨大な資料を自腹で集めて描いている。それこそ売れっ子になる前から。

なんとなくの手癖でさらーっと描くのではなく、凡人の私からしたら恐ろしいくらいに資料を集めて裏付けをとって作品を作る。
こうやって作られたものだから、何度も何度も読み返したくなるのだろう。

ああ、また素晴らしい作品に出会ってしまった。

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