(Prolog)私が伝えたいこと

私がこのエッセイを通して伝えたい事は、障害があっても、どれだけ理不尽なことがあっても、絶対に負けてはいけないということです。戦うべき相手向き合うべき相手と言うのは他人ではありません。自分自身です。これから語る人生の経験の中で、何か、今悩んでいるあなたに助けとなるもの、ヒントとなるもの、道標となるものがあったなら私は嬉しいです。エッセイには、いじめやいじめ後遺症、自傷行為、自殺未遂などの少し衝撃的な言葉も登場しますが、それはほんの一部でしかなく、温かい優しい経験もたくさんあります。そしてこれはこれから生きる人生の中で、たったの20年分でしかありません。これからもっと辛いこともあるだろうし、楽しいこともあるだろうと思っています。そんな時に、私自身も、このエッセイを読み返して、自分自身のことを奮い立たせていきたいと思っています。

(第1章)誕生から幼稚園、リハビリ、小学校入学前まで

私は2003年(平成15年)6月25日に生まれ、現在20歳です。子どもの頃は、フロッピーインファントといわれたそうで歩くことすら困難でした。両親が医師から確実に車椅子生活になるだろうと言われたと聞きました。しかし、両親の支えもあり、歩行訓練を受けました。3年間の歩行訓練の後、残りの2年間は筋力維持のための訓練に切り替えました。現在でも全身の筋力は弱いため、口の周りの筋肉や骨盤底筋などが弱い状態です。また、発達障害も関連していました。このような経験から、体の特徴や運動が苦手であることからからかわれることもありました。しかし私はそれらの困難を乗り越えてきました。幼稚園でもうまく馴染むことができず、1人でいることが多かったです。それに加え、癇癪を起こすこともあり、発達障害の特性は、やはり生まれつきのものだと、この頃のエピソードからも、理解できます。しかし訓練は悪いものばかりではありませんでした。知的障害や脳性麻痺、身体障害のある人と一緒の環境でやっていましたから、障害のある人は、居て当たり前の存在だったので、「特別」とか、「障害」という言葉に違和感を覚えていました。

(第2章)過酷なイジメに耐え続けた小学校生活

小学校生活は、私の20年の人生の中でも、特に過酷なものとなりました。入学しても、ほどなくしてからからかわれるようになりました。そしてそこから2年経って、本格的ないじめへと発展していきました。挨拶しても無視。黒板には悪口をびっしり書かれている。菌回しという謎の遊びが流行り、私の荷物や身体を「キモイ」、「汚い」といって、「○○菌」というあだ名になって、菌扱いされる。給食の班やグループ学習での仲間外れ、「死ね」や「消えろ」と言った悪質な言葉。私は、それらの言葉を目の当たりにして、洗脳されていて、その当時は、自閉症スペクトラム障害(ASD)とわかっていなかったので嘘か冗談かもわからず真に受けていました。だから「死なないといけない」という気持ちでずっと過ごしていました。すごく苦しくて、しんどかったです。うちは、教育に厳しい家庭でもあって、教育虐待がありました。小学校1年生の頃から高校受験の事についてものすごく厳しく言われていました。学校で何かあっても、高校受験が危なくなるからと言う理由で学校に頑張って通わなきゃいけませんでした。学校には必ず通わなくてはいけなかったので、逃げ場所が殆どありませんでした。当時相談に乗ってくれていた習い事の先生は、心の病気になり、亡くなってしまいました。ますます居場所がなくなった私は11年経った今でもいじめといじめ後遺症と向き合っています。小学校生活は本当に大変でしたし、綺麗事抜きで本当にしんどかったです。こんなにもこの世から消えたくなるとは思わず苦しかったです。この時には人生はそんなに長くなくても良いと言うふうに思ってしまっていました。だから生きるのに疲れたらやめようと思ったのです。これからの子供たちにはこんな辛い思いしてほしくないです。

(第３章)いじめ後遺症と中学校生活

私は小学校卒業した後、中学校は地元の中学校に入学しました。地元の中学校にどうしても行きたいと思えなかった。入学式の前まで、私は登校拒否をしていました。そんな私は、中学校に入って執行部に候補して学校を変えてやるんだと言う大きい目標を持ち、何とか中学校へと通いました。入学から3ヶ月ほどして夏休みになりました。私の体調の異変はこの夏休みに起きました。夜眠れなくなり、フラッシュバックを頻繁に起こします。日中もパニック状態で感情を抑えることができなくて、物に当たってしまったり、自分を傷つけてしまうことが増えていきました。体調が悪い日も増えて、ベッドで寝ていたり、部屋にこもってしまったりって言うこともありました。両親は共働きでしたが、私を家に置いとくことができず、学校に頼んで勉強を見てもらっていたこともありました。そんな中精神科を受診しました。そこで、いじめ後遺症、自閉症スペクトラム障害(ASD)、抜毛症などが分かりました。学校にも相談して、今後の対応を考えることになりました。学校では、いろんな先生方が私の体調や精神の状態を気にしてくれていました。すれ違うたびに、「今日は心の状態どう？」とか「無理はしないで、いつでも相談してね。」といろんな役職や学年の先生が声をかけてくださるようになりました。私のことを知らない先生は、中学校にはほぼいませんでした。私のことをサポートしてくださっていたのは、先生だけではなく、学校の事務員さんや、図書館の司書さん、教頭先生や校長先生なども積極的に関わってくださいました。私は中学校1年の時の国語の教科担当の先生がお気に入りだったので、その先生もすごくよくしてくださいました。その先生には迷惑をかけたこともありましたが、とてもいっぱい支えてくださいました。その先生に元気が出る言葉をたくさんいただきました。「○○さんは、○○さんのまんまで良いんだよ。」と声を掛けて下さりました。夏休みで学校に預けられた時も、大体その先生が担当でした。「今日はメンタルやばいん？」って笑ってお話ししてくださいました。3年間支え続けてくださった担任の先生もとても良い方で同じ女性として尊敬しています。大人になったら、こんな人になりたいと素直に思えた先生でした。私は中学校でお世話になった先生方のことを、『心の家族』と呼んでいます。血はつながっていなくても、心と言う絆でつながっている。私の学校生活での合言葉でした。私には先生がいるんだ。先生たちがいるんだ。たくさんの仲間がいるんだとそう自分を励ましていました。そんな暖かな中学校生活の中にもとてもとても苦労したことがありました。それは剣道部のことです。小学校の時に始めた剣道で、一緒にやろうと誘ってくれた親友の誘いに乗り、部活動は剣道部に入りまた。剣道部の雰囲気はどんどんどんどん悪くなっていき、親友も来なくなり、いじめが始まりました。やっといじめが収まったかと思いきや、再び私への攻撃が始まったのです。部員もその影響で1人やめ、剣道部は、ほぼ崩壊状態でした。こんな空気は良くないと、私は必死になって、いろんな先生に声をかけて協力し合いながら剣道部をよくしていこうと必死に1人活動していました。ただ私も夏休みに体調崩していたこともあって、お薬の関係で長い時間活動ができなかったこともありました。そんな中私は中学2年の時体調を大幅に崩してしまい学校で倒れてしまいました。救急車で運ばれましたが、足が動かなくなる位で済みました。なぜあの時足が動かなくなってしまったのか？いまだに原因は分かりません。中学3年の時はようやく目標の執行部に立候補するということを実現しようと思っていました。立候補説明会に行き、学年主任の先生に「障害があるのにできるわけない」と言われてしまいました。私は中学1年生の途中から教育支援を受けるようになり、最初 は、特別支援学級への通級、その後はカウンセリングを受けたり、3年生になって、通級指導教室への通級が行われていました。学校で倒れてしまった時、付き添ってくれた先生だったので、何も言えませんでした。夢も目標もなくしてしまいました。だけど、優しい先生方が見守ってくださいました。そのおかげで高校にも志望校に進学することができました。感謝しかありません。中学校ではそうやって感謝することの大切さを身をもって学びましたが、友達に裏切られたりして人のことを信用する事はできなくなりました。人のことを裏切ることも良くないと身を持って学びました。その友達の言っていることが嘘なことなのか、本当のことなのかわからない。私にはすごくショックだったし、傷ついた出来事でした。

(第4章)夢の高校生活

私は高校の志望校に無事に進学することができました。高校は私立の学校に通いました。仏教の宗門校で僧侶の先生がいたり、仏教行事がたくさんありました。私の学年の学年主任の先生も僧侶の先生でした。幼稚園も仏教の幼稚園だったこともあり、独特な雰囲気がとても懐かしく思え、温かかったです。高校ではこれといった大きな問題はありませんでしたが、新型コロナウィルスの感染拡大に緊急事態宣言、突然の休校、部活動に馴染めず、部活を退部したりそれぐらいでした。ただクラスには馴染めていなかったように思います。思ったように学生生活が送れなかったことがとても悔しかったです。1番普通に近かったような気がしたからでした。コロナさえなかったら、おそらく最も普通な生活ができていたように思います。高校生活で1番楽しかった事は、最後の1年間に所属していた写真部でした。たったの5ヶ月しか活動することができませんでしたが、とても楽しかったです。先生も部員のみんなも温かく迎えてくれて、とても感謝しています。修学旅行にも行けませんでしたが、写真部で思い出ができて楽しかったです。高校では、音楽コースで2年間学びました。ピアノや声楽や音楽理論について学び、音楽漬けの生活を送っていました。大学への進学は短期大学に進学することになりました。そこで福祉について学ぶことになりました。その時の将来の夢は教師だったので、短大生活が終わったら、四年制大学へ編入するつもりでしたが、この短大生活で進路が大幅に変わるとは思いもしませんでした。

(第5章)介護と福祉を学びに短期大学へ！行くが、出てきた新たな心と体の異変に大幅な進路変更。

私は介護と福祉を学べる介護福祉士養成校の短期大学に入学しました。そこで私は介護や福祉について、みっちりと講義を受け、体験学習をしたり、実習を行ったり、ボランティアをしたり充実した学生生活を送りました。そんな中、5回実習があるうちの4回目で、私の進路が大幅に変わることになります。当初は教師になるため四年制大学に編入するつもりでした。しかしなんと私は就職に進路変更しました。それは何故かと言うと、理由が2つありました。1つ目は、介護の良さに少しずつ気づき、実習で働く人を見ているうちに働きたいと思うようになったからです。2つ目は学生生活に疲れを感じ始めていたからです。何かといろいろあった学生生活なので、学生でいると言うことに限界を感じ始めていました。学校とは関係のないところに行きたい。そこに居場所を見つけたいそう思い始めていました。勉強が嫌なわけでも学びが嫌なわけでもありませんでした。ただ学生をすることが心に大きな負担になっていました。常に周りの人の視線を気にして、言葉を気にして、いじめられないか不安になって、そういうのがしんどくなってしまいました。何度も何度も気になってしまうのが苦痛でした。話を巻き戻しますが、私は実を言うと大学に入ってたった４ヶ月で自殺未遂をしてしまうことになります。それは大学で周りの人たちと大きく差を感じてしまうことになったからでした。自動車学校には入校せず、運転免許を取得しないことを自ら選び、一人暮らしもできず、自立した生活が全くできない。こんな自分が嫌で嫌でたまらなかったのです。運転免許を取らないことには明確な理由がありました。それは私は運転には向いてないと言う自覚があったからでした。手先の器用さもなく、体も不器用で、同時並行作業が苦手だったからです。これらは、ASDの特性から来ていました。運転しながら必要に応じてアクセルを踏んだり、ブレーキを踏んだりということが、私には難しいということは安易に想像できました。想像しただけでぞっとしました。これじゃ高確率で事故を起こしてしまう自覚があるのに、自動車学校に入るなんて、そうやって、運転免許取得から自ら身をを引いていきました。いじめ後遺症も治らず、抜毛症も治らず、発達障害は生まれつきで治らないものと知っていて。過去の辛さも消えないまま、絶望して、周りとの差だけを見せつけられ、「なんで生きているのか?」と言う問いで頭がいっぱいになっていき、いつしか、「死にたい」と思うようになっていきました。そんな中での自殺未遂でした。その頃からでした。学生生活に疲れを感じ始めているなと思いました。その後は何とか先生たちと協力して回復に努め、授業で自分の障害や人生の経験についてお話しする機会をいただいたり、学校の研修会に参加させていただいたりしました。そうやって、私の当事者活動が始まりました。そんな中行った実習の中で、利用者さんとの関わりの中で就職しようと言う気持ちに変わっていきました。大学も、先生方や学生はみんな家族のような関係でとても和気あいあいとしていました。先生といろんな話をするのがとても楽しかったです。今現在は薬を服用しながら希死念慮を抑えつつ、福祉の力を借りながら生活しています。新年を迎え障害者手帳を取得し、障害者雇用枠での就職となりました。普通に生活できないって言うこと普通に働けないっていうことについてものすごく劣等感を感じてしまっていましたが、周囲の力も借りながら頑張っています。

(第6章)未来に向かって歩んでいく、20年で学んだことと『一期一会』

生まれてから大学までの20年振り返り、私はいろいろな経験をしてきたことがよくわかりました。辛いことも悲しいことも嬉しいことも楽しいことも喜怒哀楽過ごしてきました。これから私は、社会人になり、社会の厳しい荒波に乗って、この人生を生きていくことになります。これからもっとたくさんの理不尽が降りかかってくることと思います。そんな時この20年で学んだことを思い出して、時々、初心に帰りながらこれからの人生を過ごしていきたいと思っています。学生生活をしていた14年間、小学校から大学までたくさんの先生方と出会えました。一人一人との出会いが一期一会であり、とても貴重な出会いだったと言うことを学びました。面白い先生や優しい先生、厳しいことも言うけれど、本当は誰よりも私たちのことを思ってくれている先生など、本当にたくさんの先生に教師に出会ってきました。大学では、私と同じようにいじめを経験し、心に傷を負ってしまった先生もいました。そして私の出会いを先生方だけではなく、友達や家族たくさんの人たちと今まで関わっていきました。どれもこれもが私にとっての大切な出会いであり、大切な仲間なのです。私はこれからの人生で出会う人たちも、先生方と同様に大切ににしていき、『一期一会』を大切にしていきたいと思います。未来に向かって進む船は、荒れ狂う波を進んでいますが、どうか負けないで、この社会で頑張る。皆さん一緒に頑張りましょう。そしてこの社会が少しでも、手と手を取り合い、助け合い、絆で繋がり優しい社会に願うだけでなく共に作っていきましょう。

(epilogue)小さな幸せを少しずつ見つけて〜これからも思いを伝え続ける〜

読者の皆様、ここまで大変、長い文章をお読みいただいて、とても感謝しています。本当にありがとうございます。題名にもあります、『小さな幸せを少しずつ見つけて』と言うのは、私が短大である先生と交わした会話の中で、私が人生で大切にしていきたいと思うことをお話ししたときに出た言葉です。少しずつでもいいから歩けなくなっても、這ってでもいいから、ちょっとずつちょっとずつ小さな小さな幸せを噛み締めて、そこにありがたみを感じて生きていくのもいいんじゃないかなと私は思っています。何でもいいんです。小さな幸せというのは、食事のおいしさだったり、毎日、朝が来て息ができていることだったり、自然の豊かさだったり。本当に何でもいいんです。何でもない出来事が本当は1番大切なものであるということはたくさんあります。人間は欲のある生き物です。だからこそ、大きな幸せを求めがちですが、足元に転がっている小さな幸せにも目を向けて生きていけたなら、あなたの進む、道の先は、きっとほのかな優しい温かな明かりで照らされていることと思います。私はこの小さな幸せをこれからも伝え続けていきたいと思います。人生には理不尽な事はつきものですが、この小さな幸せに気づいていくことができたなら、その理不尽も少しだけでも軽くなってくれるんではないでしょうか。私はこれからも精神障害者やASDの当事者生きづらさを抱えている人たちに、生きることの尊さを文章や言葉で届けていきたいと思っています。私も一、発達障害、精神障害の当事者です。共に生きやすい社会を作っていきましょうね。
青山晟和

青山晟和