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「色を通して心の声を聞く」吉原峰子さんがアクティブ・カラーセラピーを開発した理由

「私の中にこんな思いがあったんですね」

初めてアクティブ・カラーセラピーを受けたとき、驚きとともに漏れ出た私の言葉だ。

アクティブ・カラーセラピーは、12色のカラードットと名づけられた丸いカードを使って行うセラピーである。問いかけに対して、直感で色を選び、その色に対しての思いを言葉にしていく。手順はシンプルだが、色を通すことで自然と自分の本音が引き出され、「心の声」に気付きハッとする。

アクティブ・カラーセラピーの創始者は吉原峰子さん(78)。2009年に「アクティブ・カラーセラピー協会」を創立し、認定セラピストは約200人になるという。

鮮やかな色の洋服を着こなす品のあるお姿、柔らかくチャーミングな話し方の中にも芯が感じられる。吉原さんはなぜアクティブ・カラーセラピーを開発されたのだろうか。その経緯や仕事のやりがいのほか、ライフスタイルや人生観についても伺った。

専業主婦からカラーアナリストへ

——カラーに興味を持ったきっかけは何でしょうか?
30代の頃、いつも一緒に過ごしていた大好きな友達がいました。彼女はおしゃれで憧れの存在。モノトーンの服が好きな彼女とセンスが合うこともあって、私も彼女と似たような服ばかり着ていたんです。ですが一緒に買い物に行ったとき、店員さんに褒められるのは友達ばかり。いつの間にか「なんでだろう」とチクッとした思いを持つようになっていました。

その頃たまたまパーソナルカラー診断を受ける機会があり、「あなたにとって黒は一番似合わない色」と言われたんですよ。もう晴天の霹靂です。持っている服が黒ばかりだったので、ショックでショックで。だけど一方で、「私は彼女のようになれない。私は私のままでいいんだ」って言われたようで、救われたんです。その頃からカラーの魅力にすっかりハマり、勉強するようになりました。

——44歳のときに、パーソナルカラーのお仕事を始められたんですよね。
エステサロンをデパートで開業するという知人から、「エステに来るお客様のために、パーソナルカラー診断をやってほしい」と声をかけられました。それがカラーアナリストとして働きだしたきっかけです。結婚してからずっと専業主婦だったんですが、いつか働きたいなぁと思っていました。夫に相談したら「やってみれば」とあっさり言われ、驚いてしまいました。てっきり反対されると思ってたから拍子抜け(笑)。あと私がパーソナルカラー診断を受けたときと同じように、「あなたはあなたのままでいい」って伝えられる仕事って素敵だなと思って、飛び込んでみることにしました。

——「あなたはあなたのままでいい」。心が温かくなる言葉ですね。お仕事の中で印象的だった出来事はありますか?
パーソナルカラー診断をすると、お客様は自分の悩みを話して帰られるんです。離婚しましたとか失恋しましたとか。皆さん「こんなこと話すつもりなかったんですけど」とおっしゃっていて。個人的なことを一切聞いてないのになんでだろうって不思議でした。そのうち「色には人の心を動かす何かがあるのかもしれない」と思うようになり、色彩心理やカラーセラピー、心理学などを学び始めました。あの頃は日本各地のセミナーに参加して、まさに「セミナージプシー」だったわね。

——10年以上勉強されたそうですね。
ところが、勉強を重ねてもなかなかピンとこなかったんです。例えば色彩心理は色自体に意味を持たせたものです。赤だったら、「活力」「情熱」「闘争心」などの意味があるように。だけど同じ赤を見ても、人それぞれ感じ方が違いますよね。画一的に色の解釈を伝えても、それがお客様の心理状態に当てはまるのか、自信を持てませんでした。

ずっと悶々としていましたが、あるとき「心理状態を当てるのではなく、色を使ってお客様から答えを引き出せばいいのでは」とひらめいたんです。それでアクティブ・カラーセラピーの手法を思いつき、多くの人に試してデータを取らせてもらったり、有名な心理学の先生に見ていただいたりしました。その先生から「これは心理学でいう投影法を使っていますね」とお墨付きをもらったことで、このセラピーを広めていこうと決意しました。

「誰もがこの世に生まれてきた意味がある」

——アクティブ・カラーセラピーの魅力はどのような点にあると思われますか?
12色しかない色の中で、誰ひとり同じ答えの人がいないんです。赤を「誠実」と言う人もいるし、「クール」と言う人もいる。ピンクを選んで「耳がよくなる」って言った人もいましたね。セラピーは毎回がライブで、セッションの結論として最後に選んだ色が同じでも、紡ぎ出す答えが一人一人違います。その違いが、「あなたがこの世に生まれてきた意味と存在価値だ」といつも思えるのです。そして「良いところも悪いところもひっくるめて、あなたはあなたのままでいい」というメッセージが伝わるから、自己受容できる。そこが魅力だと思います。

——悩みがある人もたくさん見られてきていますよね?
そうですね、皆さんいろんな悩みを抱えていらっしゃいます。気持ちが落ち込んでいるときは、自分の悩みにしか焦点が合ってない状態。だから考えれば考えるほど、もやもやして、落ちていくんですよね。もうちょっと上の視点から客観的に見ると、「世界はここだけじゃない」ってわかるはずなんです。

——確かに、悩みの底にいるときって視野が狭くなっている気がします。
失恋した人に「男の人なんて星の数だけいるわよ」って声をかけても、何も響かないはずです。自分で心からそう思わなきゃ、納得できない。これは個人的な考えなんだけど、なぜ失恋に傷つくかっていうと、大好きな人と会えなくなったらすごく寂しいし、究極に否定された感じがするからですよね。あと、自己愛からくるものだと思っています。この人と一緒にいるときの自分が好き。そんな自分でいられなくなるから、つらいんじゃないかしら。だけど自分の価値は何も変わっていないんです。そこに気づかないと、立ち直れないんですよね。色の力を使うと、潜在意識の中にある言葉が自然と出てきます。その言葉によって傷ついた自分を認められるようになり、立ち直るためのヒントを思いつく人もいますね。

——色を通して自分で答えに気づければ、心の回復も早くなりそうですね。色の力は偉大です。
人から言われたんじゃなくて、自分で導き出した答えなので、納得感がありますよね。皆さん、セッションが終わったあとは晴れやかな良いお顔をして帰られます。その様子を見て、すごく満ち足りた気分になります。こんなに幸せで楽しいことで、お金をいただいていいんだろうかといつも思っています。

自分の色とスタイルを見つけるためには「観察」が大事

——SNSに投稿されている写真を拝見しています。ガーリーな服も、パリッとしたシャツスタイルも着こなされていて、色使いもとても素敵です。おしゃれのこだわりはありますか?
こだわりねぇ……うーん、ないかも(笑)メンズライクのファッションも、ブリブリのフリルも好きだし、ギャルのファッションを見てもかわいいと思うんですよね。ただ、着こなせるかは別よね。私は背が低いし、加齢で皮膚のたるみや体型が気になるようになってきました。だけど年をとったおかげで着れるものが狭まってきて、スタイルが確立されたという点ではよかったですね。

——私自身の悩みで恐縮ですが、30代の頃と比べると服が似合わなくなってきていて、最近何を着ていいかわからないんです。おしゃれ迷子になっているのですが……。

私もそんな時期がありました。若いときって、肌に張りがあって、体のラインにもたるみがないから何でも着れちゃうのよ。だけど、ある程度の年齢になると、自分の本来持っている目や肌を基本にした似合う色からはみ出せなくなります。鏡の前で洋服を顔に当ててみて、顔色が明るくなって瞳が輝く色が目安です。できれば蛍光灯の下じゃなくて、午後3時までの自然光の中で見るのがベスト。そうやっているうちに、自分に似合う色がわかってくるはず。

どんなスタイルが好きなのかを見極めることも大事ね。おしゃれだなって思う人を見つけてほしい。おしゃれな人はそのスタイルに行きつくまで、色んなものを試してきたはず。引き出しがたくさんあって、最終的な選択が形になって現れたものが、その人のスタイルになっているんです。だから、とにかくその人をじっくり観察して、なぜおしゃれなのか考えてみること。そして、まずは真似をしてみることから始めてみるのはどうかしら。新しい発見があると思います。

——人を観察して、自分のスタイルのお手本をみつけて、じっくり向き合うことが大事なんですね。やってみます。吉原さんはいつもお元気に見えますが、健康の秘訣があれば知りたいです。
若い頃はとにかく疲れやすくて、しょっちゅう寝込んでたんです。それが嫌で一念発起して、40歳ぐらいのときから水泳に通い始めたのね。泳いだあとは、血流が良くなったせいかポカポカ体が温かくなって、一年ぐらい続けると風邪すらひかなくなったわ。50代の頃、熊本に行き6時間講義して、そのあと運転して福岡に帰るという生活を10日間休みなしでしていたんだけど、疲れ知らずでした。

だけど、60歳をすぎて膝関節症になったんです。治療用の靴を紹介されたんだけど、死ぬほどダサい靴なのよ(笑)思わず病院の先生に「私、またハイヒール履けるようになりますか?」って聞きました。すると先生は「もう年やけんハイヒールなんて履けるようにならん」と頭ごなしに言われて、カチンときました。絶対治るはずと思って、治療法を調べまくりました。するとアメリカの膝関節症専門の医師が「膝周りの筋肉をつけるといい。膝に体重がかからず運動するには、プールがいい」と言っていて。水中でゆっくり歩くことから始め、だんだん運動強度を高めていき、最終的には床で正座までできるようになりました。すっかり治って、ハイヒールを履いて出かけたときに、偶然病院の先生にお会いしまして。先生は大変驚いた顔をされていましたね(笑)

——執念ですね(笑)吉原さんのおしゃれ魂と自分を信じる心が元気の源のように感じます。

そうですね。具合が悪くなったら体の声に耳を澄ませるようにしています。膝関節症のときと同じように「大丈夫」と感じられたら、その声を信じるようにしています。だけど、無理はしないようにはしていますよ。違和感を感じたら休んだり、すぐに病院に行ったりね。心と同じように、体の声を聞くことも自分を大切にするうえで大事なことだと思っています。

這い上がったときの景色が美しいと思えるような「味わい深い生き方」をしたい

——吉原さんは前向きに挑戦しながら、道を開拓されている印象があります。
いえいえ、自分からっていうのはなくて、周りに気づかせてもらったり、アドバイスをもらったり、ご縁をいただいたりして、やりたいことが見つかっています。そして「興味が持てたら、やってみよう」といつも思ってます。途中でやーめたって言ってもいいし、命さえあればいつだって引き返せるじゃないですか。私は慎重じゃないから、とりあえず飛び込んでみるんです。気が付いたら崖を飛んでいるといった感じで、周りはハラハラしているみたい(笑)だけど困ったら、ありがたいことに誰かが手を差し伸べてくださるんです。そんな感じで、お気楽に生きていますよ。

ずいぶん前のことですが、悩んでいるときに裏通りをぼんやり歩いていて、ふっとこんな言葉が頭によぎってきたんです。「この世のことは夢のまた夢。ならば味わい深き夢を」って。「あぁそうだな」と妙に納得したのを覚えています。

例えば、メリーゴーランドみたいに安定しているけど同じ景色しか見えない人生と、ジェットコースターみたいにアップダウンがある人生があるとしたら、私はジェットコースターのような人生がいいですね。どん底にいるからこそ、這い上がったときに見える景色が美しいと思える。それこそが味わい深い人生なんじゃないかと思うんです。

——つらい出来事があったとき、どのように乗り越えられてきましたか?
人に助けられてきた人生です。だけど、究極のところで自分を救えるのは自分しかいないと思っています。そして、つらいときは、神様から試されてると思うんです。潰れちゃってダメになる自分なのか、これがあったから今があるって言える自分になるのか。だったら私は「つらいことがあってよかった」って言える自分になりたい。こんな風に言うと、強い人間だと思われるかもしれません。だけどそうじゃないんです。自分を奮い立たせて頑張るのとは違うんですよ。やりすごせば何とかなるっていう気持ちかしら。だってずっと同じ状態が続くわけじゃないでしょ。だから若い人に言いたいんです。「つらいことがあっても、いつかは終わるから。自分を大切にしてね」って。あと、「しんどい人はアクティブ・カラーセラピーを受けて」って(笑)

——最後に、今後の夢を教えてください。
アクティブ・カラーセラピーが世界中に広まって、役に立ってほしいって心の底から願っています。このセラピーはシンプルなので、ジェンダー、国籍、価値観や宗教観が違うどんな人にもできますし、自分で自分を救えますから。「アクティブ・カラーセラピーは私が開発しました」という気持ちは全くないんです。このセラピーは色の神様からの預かりもので、私の役目はひとりでも多くの人に手渡すこと。そして必要な人に届いてお役に立てたら、これ以上の幸せはないですね。


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