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『地域の良さの伝え方』 【中編:「デジタル技術を活用して地方で働く」 "天理市企業×天理市長×ジョイゾー" トークセッション】

2023年2月27日に天理市で開催された『【出張J Camp】天理地域の魅了発信!「デジタル技術を活用して地方で働く」 "天理市企業×市長×東京IT企業"』のトークセッションを書き起こしたものです。
noteは3つのパートに分かれていますので、それぞれご覧ください。
本noteは中編です。

動画も是非ご覧ください!

このトークセッションでは、天理市の並河市長、天理地域を中心に活動する大一電化社上田さんとのお話を通して、地元企業がどのようにして、企業の強みを地域と結びつけているのか、地域の魅力を商品やサービスに取り入れているかについて探っていきます。天理地域でスタートしたテレワークなどの多様な働き方に対するアプローチなど、「地元×人×IT」をテーマとして展開しています。

天理スポーツツーリズムの取り組み

琴絵:今ちょっとスポーツツーリズムと話が出たと思うんですけど、この辺って市としても少し力を入れ始めているのでしょうか?

並河:そうですね。天理って何で聞いたことあるかっていうと、天理高校の甲子園がとかラグビーだとか、台湾のナショナルチームとかいろんな学校の方がよく来られたりします 。
特に柔道ですね、もともとフランス柔道のルーツの一つが天理にあったりして、フランスのナショナルチームや金メダリストも含めて毎年のように天理にきます。
コロナが少し落ち着いてからだけでも、ハンガリーだったり、東京 オリンピックの時にエジプトの公開ホストタウンになっていました。これは私が外務省勤務時代にエジプトに勤務してたっていうのもあるんですが笑

並河:けれども世界中の柔道家が、実は天理を目指してるって言うのはあるんです。これって一つコンテンツになりうるな、ということで去年JTBさんだったりも組んでですね、いろいろスポーツツーリズムもやりました。
そこにワーケーションも絡める形でANAの皆さんにもお越しをいただいたんですが、人事担当から客室乗務員などの皆さんが天理大学の柔道場に行ったんです。そこで、東京で2連覇した大野将平さんの兄貴分でもある穴井監督という監督さんですけども、その彼からいろんな話を聞いた時に、なかなかこんな本物の武道に触れ合える街ってないよね、と。
特に人事担当の皆さんとか、その精神性みたいなところすごく評価されたんで、これはちょっと是非御社の皆さんの社員教育とかにもいいんじゃないだろうかと思いまして。

琴絵:そうですね、そういう意味でいくと最近私たちさんの先ほど秩父に行ったという話をしたんですが、秩父では坐禅を組ませていただいて。そういった形で今、ウェルビーイングの経営だったりとか、働き方っていうところに注目している企業さんってとっても多いと思います。

琴絵:こういった点でも企業として、武道ってなんか日本の心というかそういうところがあると思うので、すっと自分たちに向き合えるという。私も一応経営者なんですけど、経営してると心が疲れてしまう。
そうすると会社にとってもよくないじゃないですか。そういう意味で武道の精神などに触れるっていうことで、ちょっと気持ちが変わってくるなというのはあると思います。

並河:きっと単に美味しいものがありますとかあるいはその自然があって、というのももちろんバケーションの要素でいろいろリフレッシュしながらお仕事するのにはいいんだと思うんですけども、礼だったりとか、あるいは相手をリスペクトする部分だったりだとか、それがどのように稽古の中で生かされてるんですか、っていうのを聞くのは、ちょっと他では得られない体験なんじゃないかなと。

地域とつながる大一電化社

琴絵:ちょうどそのスポーツツーリズムをやられた時に、やまのべ焙煎所にもいらっしゃったっていう話を聞きました。

上田:大学のラグビーの選手の方がコーヒー体験ということで20 数名来られてこの焙煎所内でいろんなコーヒーの味覚体験っていうのをしていただきました。

琴絵:つながる先がまさかコーヒー体験っていうのは特徴的で新しいですよね。

上田:そうですね、もともとやっぱりその開業とかいろんな相談にいろんな方が来られるというきっかけを自分も少しは作れたので、この コーヒーを通して天理を発信するとか、天理を知ってもらうきっかけ作りっていう意味では、どんな形でも協力させてもらいますっていう思いですね。

並河:今、大学生ともやってらっしゃるんですよね、サークル作ってね。

上田:そうです、今日飲んでいただいたコーヒーもそうなんですけども、あの天理大学と産学連携協定ってのも結んでいただいてまして、天理大学の学生が自分たちがキッチンカーに乗ってこのコーヒーを売るってなった時に、どういうのが美味しいかをじゃあみんなで考えて作ってみようということで今、販売させていただいてます。

琴絵:いや、すごいですね、キッチンカーも持ってらっしゃって。こういう形で色々と繋がっていくというのが、一つのコンテンツだけだとその例えば武道を目的にいらっしゃいじゃなくて、そこからの流れで例えばこういったコーヒーなどの専門的なものを体験してもらえる。これはだいぶ特徴的ですよ。

並河:武道というだけだと、聞いてらっしゃる皆さんからしたらちょっとなんか重くて、とかストイックなだけでも、みたいに感じると思うんですけども、こういったコーヒなどのライトな要素もあるとちょっとね、ホッとしながらいろいろやれるんじゃないのかなと思います。

琴絵:コーヒーって、特に好きな人もすごく多いですし、ワーケーションをやっぱり何度も経験させてもらってる中でコーヒーは切っても切れないというか。
やっぱり飲みたいなってなった時に、おいしいコーヒーをその土地でサードウェーブとかでやっているところで飲みたいなと思うんですよね。地方に行くとそういう贅沢感を味わいたい中で、ここの経験は贅沢すぎますよね。

地元の良さの伝え方

並河:実はお茶もあるんですよ。そこも今、放棄茶園を再生しようということでやってるんですけども。

琴絵:お茶もコーヒーもそうなんですけど、近隣の中で今活動されてる内容は、地元の人にとってはどれぐらいの感じで、そういう取り組みをしているっていうのが浸透しているものなんですかね?

並河:それがね、意外にこう近場の人が当たり前すぎて気づいてなかったりするんです。だから逆にあの市外の方に「それってすごいよね」って言っていただたことで、市民の皆さんも「あ、すごいんだ」って誇りになっていくっていう。だからそこの辺りのキャッチボールはものすごく大事だなと思うんですよね。

琴絵:そこは先ほど、東京に出て天理の良さをよくわかったって話に通じますよね。私は北海道釧路市が出身ですけれども、東京にいるからこそ釧路がすごくいいっていうのを言いやすくなったのかもしれないです。その辺は上田さん的には地元の人に伝える時ってどんな感じでお話しされてたりするんですか?

上田:え、考えてなかったです笑

琴絵:笑 意外と釧路も、「いや何もないよね」って地元の人は言うんですよね。

並河:言っちゃうんですよね、日本人のね性格っていうか、奈良は特にそうなんですけど。「美味しいものも見るものも何もないですね」と笑

上田:そういう部分で言うと、ちょうど昨日なんですが、青年会議所で全国から人が集まってきていただいて。でもたまたま天理教さんが月次祭で。しかもこれまであった人数の制限なく開催されたことで、多分何万人か教会の方の務めされてたり。その中でそういう多くの人を集める魅力があるまちだっていうのは、昨日多くの方に知っていただきました。

https://www.tenrikyo.or.jp/yoboku/ojibagaeri/saiten_gyoji/

そこで言うとイチゴとかラーメンとか、そういうコンテンツとしては すごく強いものがあるので、集客ツールとして実は僕たちは持ってるっていうのは結構お話しするけど、自分たちの日常っていうのはちょっと離れてみないと価値として見れないことがあったりするのが多いですね。

琴絵:釧路は「何でもあるから」っていう「なんかご飯も美味しいでしょ、海鮮もおいしいでしょ」って言われるんですけど、地元の人からすると当たり前すぎて、あんまり美味しいよとかってわざわざ言わないっていうか。
釧路は炉端焼きの発祥の土地と言われていて、焼いてくれる場所があってそういうところに行ったらおじさんが焼いてくれて、いい時になったあげてくれて食べるところまでちゃんとずっといってくれるんですよ。
おじさんは焼きながら「釧路何もないっしょ?」って言うんですけど、「いやおじさんがここで焼いてくれて、いい時にあげてくれる。これだけでもコンテンツ!」っていう話をしたら「そうなの?」って言うから「そうだよ」って。俺が コンテンツだよって、言ってねって話をしたんですけど。

並河:いろんなタイプがあると思うんですよね。だから去年あの人手不足に悩んでる柿農家さんの収穫期を旅行体験と組み合わせるっていうのをやってみたんですが、学生さんから80歳代の方までが参加をしましてね。
それで柿畑で収穫して、その空いてるところで周りを散策するっていう。それも 結局その農家の皆さんにとったら人手不足でどうしようみたいな、放棄地が増えてきて困ってんだよっていう話があって。
そこだけ見たら課題でしかないんですけども、旅行者の方からすればコンテンツになってるんですよね 。


スポーツ選手への新しい支援の形

琴絵:ちょっと話を戻すんですけど、上田さんがさっきあのスポーツツーリズムの中とかの話で学生さんとか色々と話をしてたと思います。
怪我をされたりとかしたスポーツ選手って、その次のステップとなった時に、スポーツに打ち込んできて怪我しちゃった時のお話もが、私にとって印象的で。そこのお話をちょっと聞かせていただいてもいいですか?

上田:はい、今ちょうど天理の若手農業者とチャレンジファームということをちょっと一部支援をいただいてさせていただいてるんです。
まさにその怪我をされた方がチームに対してどういう貢献ができるか、プレイヤーとしての貢献が難しければ逆に僕たちのそういうお仕事手伝っていただいて一部謝礼をお払いする。それがチームの活動費用になるっていう事で。
なんかどんな形でもチームに参画をして自分が貢献できてるんだっていう気持ちを持っていただけるというのが新しい支援の形じゃないかっていうことで、市長にお話しさせていただいて、今ちょっとその農園が出来上がりつつあるので、そこでできた今作ったスイカとか、コーヒー農園のチャレンジをしています。そういったもの収穫をご協力いただきたいということでお話を進めてます。

琴絵:なるほど、それを聞いた時並河さんはいかがでしたか?

並河:いや、やっぱりね、高齢化が特に進んでいる農業という業界で、若い皆さんがやりたがらないと思うんですが、収益がちゃんと上がってるところは担い手も続いていくんですよね。ただなかなか何を作っていったらいいのか、 販路をどうしていったらいいのか、がわかんないっていう部分があって。逆に上田さんは今まで農業はやられてないですよね?

上田:はい、そうですね。

並河:こうやって異業種で加わることによって、化学反応ができてですね、若手農家の皆さんもじゃあ頑張ろうっていう気になっていただけるのは大変ありがたい。さっきセカンドキャリアで関わりをどう作っていくかって話をしていただきましたが、そのあたりを含めてうちの市は、関わりしろを無理なく作るっていうのを結構大事にしています。

天理の地域通貨「イチカ」

並河:関わりしろで言うと、コロナの中でいろいろ交付金とか配ったじゃないですか、あの補助金をデジタル地域通貨で結構やったんですよ。
地域の店舗の皆さんにも参加をいただいたんですが、売上の一部が子供食堂だったりフードバンクに支援になりますという取り組みをやってましてね、その中で皆さんには特に共感いただいてます。
四宮さんは先程体験いただいたんですよね?

琴絵:これですね。すごく簡単でした、アプリを取り入れてプリペイドカード式で読み込んでポイントになって。今日お昼はみんなでそばを食べてきたんですけど、すぐ体験できました。その地域通貨がイチカっていうんですよね、そしてそれを地域に還元するのがイチカプラスで。
この子供食堂に支援をしたりとか他のスポーツ振興に支援したり、とかそういう取り組みができるって話を聞いてすごくいいなと思って。

並河:店舗ごとに設定してるんですけど、なかなかこの地方の街で地元で消費してくださいって言っても、大阪が近いですから。特に奈良県ってあんまり地域で使わないんですよね。
だからこれまでは今割引してるんで、って言うんですけど、割引が終わったら縁の切れ目でまた使わなくなるっていう。それよりは何かその共感できるポイントを作って、そういうことだったら地元で使いたいな、っていう風に市民の方もそうだし、来られた方にも思っていただける仕組みを作りたくて、それでやってみてるということです。

琴絵:私たち午前中に到着して、市長がSNS上でシェアしてたのを見て、これは体験してみたいなって思って、すごく簡単に体験できました。私、こう見えて釧路市のDXアドバイザーもさせてもらってるんですけど、やっぱりデジタルの取り組みって行政と一緒に取り組んでいくことって多いと思うんです。その中でうまくやっているところに関しては真似する、っていうのが言い方はおかしいですけど必要ですよね。

並河:そうですね、みんなで共有していければ。デジタル田園都市の交付金を使っているので展開可能な形でやらせていただいてる、つまりうちの使ってるアプリを他の市で活用いただいて全然大丈夫な仕様になってます。

琴絵:自分で体験してみて、やりやすいなって言ったところと、あとは最初に普及するときは大変だったけど、今普及率がすごく上がってるっていうお話をさっき聞いたので、300店舗以上が関わってい るっていうのは改めてすごいなって思いました。

並河:市のサイズとしては多いかなと思いますし、あとはどれだけね、自分でチャージしても使いたいと思っていただけるか、っていうことなんですけど。

琴絵:なんかこの支援につながってるって結構いいなって私は思います。
上田さんのところもイチカの取り組み始められるんですよね?

上田:もうちょっとで始まる予定で。やっぱりケガされた方のサポートじゃないですけど、自分たちがやってることが街に来たり、それで街で関わる人たちにプラスなるんやったら、いいんじゃないかと思って、会社として取り組もうと思ってます。

琴絵:そういう形で増えていくのはいいなっていう風にすごく思ったし、自分の企業だけじゃなく、経営者仲間の皆さんにも進めやすいですよね。

上田:そうですね、青年会議所に所属をしているのでやっぱり明るい豊かな社会を作る、っていうのを理念に今やってる活動団体なんで、そもそも街にとって良い事ってなんなのか考えた時に、余裕がある中でですが、せっかくだしやってみようよって声かけはしていこうと思っています。

行政と地域の距離感

琴絵:私からちょっと個人的に聞きたいんですけど、これに取り組もうとする時、行政として天理市さんがやるときに、すぐこうパッと切り替わって導入してるのがスピード感速いなと思って。
最初のテレワークセンターもそうなんですけれど、この辺ってどんな感じで号令をかけて、皆さんと一緒に取り組まれてるのか、行政としての取り組みを教えてください。

並河:うちだけが号令をかけて「はい、やりましょう」っていうような時代じゃないと思ってるんです。どうやって一緒にやりたい気持ちになっていただけるかがすごく大事で。

琴絵:そこはなにか市長から?

並河:デジタルって言うとやっぱりそれだけで誰かを排除してるとかね、高齢者の方で経営されてる方で、「じゃあうち参加できないじゃん」とか、そういうネガティブな部分から入る部分がないわけじゃないですから。それをどう解きほぐしていくかっていうのが一番のポイントになりますね。

琴絵:そうですよね。そこが結構丁寧にやられてるのかなっていうのと、やっぱり私自身こうやって関わって感じたのは、なんか役所の皆さんもすごく柔らかいという風に思っていて。
この辺は住んでいる人たちにとっても行政って、敵対する場所でもないし、やっぱり協力してもらったりサポートしてもらわなければいけない場所だと思うので、これって天理市の魅力の中の一つにあるのかなってちょっと思っていたんです。

上田:僕も窓口に友達いるんで「ちょっと頼むわ」みたいなので相談をしたり。やっぱり僕も関わらせていただくことがいろんな団体でも多いんですけど、すごく会話になるというか、ちゃんと対話をして話を進めていただける姿勢ができているので、相談もしやすいです。

並河:それは地方の一つの特徴かもしれないですね、距離感が近いというか。私も以前東京に住んでる時に区役所を利用しましたが、手続きの時しか行かないし、そんなに身近な存在でもなかったですね。そういうとその区の人たちに怒られちゃいますけど笑
我々ね、こうやって普段から普通に顔を付け合わせられる関係なので。 だからそこにね、来られる方も 溶け込みやすいってのはおっしゃっていただいたように重要かなと思います。


◆前編と後編もご覧ください

ご覧いただきありがとうございました。
後編へと続きます。まだの方は是非前編も含め、ご覧ください。



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