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シン・仮面ライダーは変な映画だがおれは好きだ

映画シン・仮面ライダーを見た。以下、ネタバレを含むので観賞後に。



冒頭から戦闘シーンでめちゃくちゃ血が出る。バッタオーグに改造された本郷猛の異常な戦闘能力がよくわかる。何より残酷で良い。戦って敵に勝つというのは殺人だとはっきり示されていて潔い。PG12だけどあんまり子供に見せない方がいいかとは思う。
その怪力をふるう殺人戦士本人はめちゃくちゃ繊細だ。本郷猛(池松壮亮)は常にこまかく震戦して悲しい顔つきの非力そうな男である。本郷視点になるとカメラも震えている。超やさしくて虫も殺せないような男が人間を殺す昆虫改造人間になった、というのがロマンチックで良い。藤岡弘おじさんの脂っこい感じとはまた違って情緒がある。

すべてを飛ばして一文字隼人(柄本佑)の話をすると、そもそもなんで柄本佑くんが仮面ライダーをやるのか、どちらかというとしっとりした映画や個性的なドラマなどで名脇役を演じるとか、本人が映画を監督するとか、そういう感じの役者さんではないのか、いやめちゃくちゃ好きなので見るけれども、という複雑なファン心理で見に行った。しかもなかなか一文字が出てこない。大丈夫なんだろうか、と思ったところで、ルリ子による一文字隼人のプラーナ解放シーンである。
号泣する一文字、め、めちゃくちゃええやないけ……。泣く男と鼻血の男が三度の飯より好きな人間としては、ヒーローとして生まれ直す瞬間にすべての絶望を思い出して号泣する推し役者はさすがに健康に良い。
そしてライダーとして覚醒し本格的に戦い始める一文字がめちゃくちゃいい。もともと変な人間で人と行動したがらず、「心がスッキリするか」「好きかどうか」ですべてを判断しているアホみたいに単純な飄々とした男。しかも身長が182cmあってライダー二人並ぶと一文字のほうがめちゃくちゃデカくて腰が高くて脚が超長い。敵に攻撃されて吹っ飛ぶと「痛ってえーーな……!!」と叫ぶのである。こんな、こんなの、好きに決まってるじゃないか!!!!
チョウオーグとの決戦ではがっつり鼻血(吐血)も出すし、なんだかんだ最終必殺技は頭突きだし、かわいすぎて心配になってきた。

ちなみに、どうせ一文字隼人にベロベロになるだろうと見越して、3月25日発売の仮面ライダー2号変身ベルト(DXのほう)(光って回る!)は公開前に予約しておいた。一文字隼人のぬいぐるみも同日発送予定である。仮面ライダーって手厚いジャンルでありがたいな……というのは仮面ライダーBLACK SUNにノコノコ参入したときにかなり恩恵に預かって理解したのだが、35歳男性のぬいぐるみが買えるのはちょっと意味がわからなくてすごい。

仮面ライダーBLACK SUNといえば、おれはこれを見て幼少時以来の特撮体験をし、特撮って……サイコー!!という心を取り戻して庵野シンシリーズの意味がわかるようになってきたところがある。特に今回のシン・仮面ライダーは、シン・ゴジラのお役所連携プレー&自衛隊超戦闘モノでもなく、シン・ウルトラマンの和製SFヒューマンドラマモノでもなく、いちばんコッテリとした「特撮み」がある感じなので、ふつうのオトナ向けの映画を見に行く気持ちだとずっこけてしまう可能性がある。めちゃくちゃ暇だったら事前に仮面ライダーBLACK SUNを数話見ておき、「あっ、ニチアサのすげえやつってこういう感じになるんだな、ケレン味な」と雰囲気を掴んでからシンに挑むのが良いと思う。

そういう意味でもぜんぜん万人向けでない。映画としてはなんか変だ。ストーリーラインは単純だが、シンプルすぎて説明を削ぎ落としてあるから後でなんのかんの「解釈」「考察」「資料を買う」とかしないといけない。庵野!!庵野すぎる!!!!「プラーナ」とかいう仕組みを新規導入してる割にその辺は見ながら理解してねという感じだし、オタク心はそそるが親切ではない。でも、変な映画だけどおれは好きだ。次は音がでっかい劇場で見ちゃお。


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