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Review articleからPick up〜アルコール性肝炎〜

論文紹介のnoteは第7段になります!
今回はすこし趣向を変えて、“Review articleからPick up”と題してお送りします。
Review articleはすでに十分まとまっているのですが、さらにその論文の中で日常診療にすぐ活かせる、必読(と感じた)ポイントをPick upし、日本語でスライドを作成してみる、という試みです。

今回は、2021年7月13日のJAMA Review論文

Diagnosis and Treatment of Alcohol-Associated Liver Disease
アルコール関連肝疾患の診断と治療

JAMA. 2021;326(2):165-176. doi:10.1001/jama.2021.7683
PMID: 34255003

の中から、アルコール性“肝炎”の部分をPick upしました。

review_article_アルコール性肝炎JAMA_表紙.001

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ここまで覚えておけば、日々の診療でとりあえず動くことはできそうです。


以下、おまけです。余力のある方、興味のある方はぜひ目を通してください。

重症アルコール性肝炎の患者 2111人を対象としたメタアナリシスでは、1ヶ月後の生存率が、ステロイド投与群は84%, 対照群は76%で、ハザード比 0.64 95%信頼区間[0.48-0.86]と、有意に予後を改善していました。(Gastroenterology. 2018 Aug;155(2):458-468.e8. PMID: 29738698 doi: 10.1053/j.gastro.2018.05.011

なお、UpToDateのManagement and prognosis of alcoholic hepatitisには、レスポンダーと判断し合計4週間投与したあとのステロイド減量プランについて以下のように書かれておりますので、参考にしてください。

For patients who respond to treatment, we continue prednisolone for 28 days, and finish therapy with a 16-day prednisolone taper (we decrease the dose by 10 mg per day every four days until a dose of 10 mg per day is reached, at which point we decrease it by 5 mg per day every three days).

なお、ステロイドを投与された場合、およそ60%がレスポンダーになるそうです。

このReview articleには、肝移植を考慮する対象として「6ヶ月間禁酒できていて、MELD>17または内科的治療に抵抗性の合併症をもつ患者」と書かれています。(日本の脳死肝移植レシピエント基準では、より長期間の 18 ヶ月の禁酒を求められています)
ところが、アルコール性肝炎の初回治療に反応しない患者は、6ヶ月後の死亡率が約75%といわれており、肝移植を待っていられません。

・早期肝移植を受けた患者は移植を受けなかった患者よりも1年生存率が高い(71% vs. 23%)
・早期肝移植を受けた患者の平均余命は、6ヶ月禁酒後に移植を受けた患者よりも長い(6.6年 vs. 1.6年)
・アルコール性肝炎で、早期肝移植を受けた患者と、6ヶ月間禁酒後に移植を受けた患者では、再飲酒率は有意差がなかった(20% vs. 13%)

(本文より和訳して引用. それぞれの引用文献は本論文にアクセスしてご確認ください)

というエビデンスをもとに、欧米では、重度の精神疾患がなく家族のサポートがしっかりしている場合は、早期の肝移植を推奨しているようです。

このReview articleを読むまでは「現在進行形で飲酒している人は移植できないだろう」と思っていましたが、そうと決まったわけではないと知りました。もちろん、海外での条件を日本の移植事情にそのまま持ち込むことはできませんし、各施設の環境にもよると思いますが、アルコール性肝炎かもと思った段階で、移植の可能性も含めて、早めに専門家へコンサルテーションしておいたほうがよいと感じました。

最後に、上記でご紹介したアプリ(項目によって課金が必要になりますのでご注意ください)のリンクを貼っておきますので、まだお持ちでない方はご活用ください。

文責:平松 由布季(東京ベイ・浦安市川医療センター 総合内科)

※当記事の内容は、所属する学会や組織としての意見ではなく投稿者個人の意見です。
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