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“プライマリ・ケア2022年春号”使える論文My Top5

 日本プライマリ・ケア連合学会の実践誌、”プライマリ・ケア”の『使える論文My Top5』は若手医師部門 病院総合医チームが紹介しているリレー連載です。

2022年春号は、平山が担当しました。
『これぞ総合診療編』と題して以下の5つの論文を紹介しています。

1.不明熱
2.血液培養の陽性率
3.椎体骨折は死亡リスクと関連するか
4.プライマリ・ケアで抗うつ薬を中止できるか
5.社会的つながりと健康の関係

1.不明熱
Burke A Cunha, Olivier Lortholary, Cheston B Cunha. Fever of unknown origin: a clinical approach. Am J Med. 2015; 128(10): 1138.e1-1138.e15. PMID: 26093175
 発熱はよく遭遇する症状の一つではないでしょうか。すぐに原因がわからない発熱は不明熱として考えていくことになりますが、そのときに参考にするような論文です。

すぐに診断がつかない患者さんに向き合うことは何から考えて良いのか分からずとても苦手意識がありましたが、この論文を知ってからはその気持ちが少し和らぎました。

2.血液培養の陽性率
Andrew Lee, Stanley Mirrett, L Barth Reller. et al. Detection of bloodstream infections in adults: how many blood cultures are needed? J Clin Microbiol. 2007; 45(11): 3546-8. PMID: 17881544
 発熱したら血液培養2セット採って抗菌薬、は今や多くの人がやっているプラクティスではないでしょうか。なぜ1セットでも3セットでもなく2セットなのでしょうか。その根拠となる論文です。

今まで疑問に思っていたことを、今回の企画を機に調べてみました。耳学問で知っていた知識を自分で読んで確認したことで納得できました。

3.椎体骨折は死亡リスクと関連するか
D M Kado, T Duong, K L Stone. et al. Incident vertebral fractures and mortality in older women: a prospective study. Osteoporos Int. 2003; 14(7): 589-94. PMID: 12827222
 超高齢社会において、診断・治療だけでなく疾病の発症予防も非常に重要です。椎体骨折はADLに大きく影響するので可能であれば予防した方が良いでしょうが、死亡リスクまで低下させるのでしょうか。

椎体骨折と死亡についてプロットされたグラフを見たことがあり気になっていました。今回その疑問が解決してスッキリしました。

4.プライマリ・ケアで抗うつ薬を中止できるか
Gemma Lewis, Louise Marston, Larisa Duffy. et al. Maintenance or Discontinuation of Antidepressants in Primary Care. N Engl J Med. 2021; 385(14): 1257-1267. PMID: 34587384
 抗うつ薬はプライマリ・ケアにおいて抑うつに対する治療の第一選択薬であり、ここ数十年の間に高所得国で抗うつ薬の処方数が増加しています。しかし様々な薬剤に共通していることですが、漫然と続けず中止可能な薬剤がないか意識しながら診療することは大切です。一度始めた抗うつ薬は中止できるのでしょうか。

以前勤務していた病院で、医師・薬剤師が合同で行っているポリファーマシーカンファレンスに参加していました。降圧薬や経口血糖降下薬など普段使うことの多い薬剤は調整しやすいのですが、精神科に任せがちな抗うつ薬を自分で調整する経験はあまりなかったので、今回この論文を選びました。

5.社会的つながりと健康の関係
Satoru Kanamori, Yuko Kai, Jun Aida. et al. Social participation and the prevention of functional disability in older Japanese: the JAGES cohort study. PLoS One. 2014; 9(6): e99638. PMID: 24923270
 高齢化社会において機能障害を予防することはとても重要です。多くの人が望む健康ですが、社会的つながりは健康を増進させるのでしょうか。

少子高齢化が進む日本において、健康な時間を長くすること、家族だけに頼らず生活していくことは切実な課題だと思います。ちょうど日本からの報告があったので読んでみました。

今回はあまり統一感のない論文紹介になりましたが、いずれも普段遭遇する可能性が高いものだと思います。
会員の方はぜひお手元の雑誌をご覧ください。今後もリレー形式で続いていきますのでお楽しみに!

文責:平山 果歩(自治医科大学附属病院 総合診療内科)

※当記事の内容は、所属する学会や組織としての意見ではなく投稿者個人の意見です。投稿者と出版社あるいは著者との間に利益相反はありません。
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