紳士服業界にイノベーションは起きるのか

1.はじめに

 季節柄スーツ関連の記事も活発化しているようにも見受けられますが、たまたま、たまたまですよ(別にここまで否定しなくてもよいですが)、先日スーツを買った際に思ったことなどを。

 スーツ業界というのは、傍目で見て、なかなか大変そうだなと思います。
季節集中が激しく、かつ、商品サイクルもそれなりにあり、廃棄も多そうに見えます。
 サイズ直しがほぼ必須で、一人が買うために店員さんも一人つかないといけません。
 年中値引きしなければならないのも、そういうビジネスモデルにしてしまったからというか、望んでいることなのかもしれませんが、必ず交渉から始まる商談というのも大変ではないかと。

 しかし、 イノベーションを起こそうとしているのかなと思われる、新しいタイプのお店にも行ってみましたので、それも含めながら、まとめてみたいと思います。

(2)DIFFERENCE
 そして、今回考えさせられた店がDIFFERENCEです。
 秋葉原店訪問。
 Webサイトを見るとアプリに誘導されます。
 https://difference.tokyo/
 この時点では、どんな商品があるか見られません。
 そこまで情報出さない必要ある?と思いますが、物は試しで、情報登録してログインします。
 調べてみるとコナカ系なんですね。佐藤可士和デザイン…最近私の中でブランドが低下しているので、若干不安を覚えつつ。見た目はよいけど…みたいな。
 お店の前まで来て驚きました。
 1畳分のスペースしかない!は言い過ぎですが、テーブルが一つ置いてあり、そこにお兄さん二人が立っている。あとは記事が1列ぶら下がっているだけ。
 こちらの写真でも見ていただければ、あながち嘘でもないかと。
 https://akiba.keizai.biz/headline/photo/4022/
 これを見て、これが、イノベーションかと思ったわけです。
 従来型の店舗で、豊富なラインナップを並べておいて、サイズも各種準備しておくことにより、それなりに自分に合ったものをそれなりの価格で購入できる、というモデルだったわけです。しかし、そのためには、膨大な売り場面積が必要という店舗側の問題を抱えることになりますし、本当にぴったり合ったサイズの服は選べない、というお客側の問題もありました。
 この問題を解消するイノベーションとして、スーツの本質は生地だろう、それは各種見えるようにしておきます。サイズも一人一人測って、本当にぴったりのスーツを買えるようにします。生地だけ置くこととして、店舗スペースも最低限でよいです。そんなソリューションを考案したということかと思います。
 ただし、イノベーションにはジレンマが付きまといます。確かに生地は見られます。しかし、服として見ないと、服になった時のイメージは意外と見えないのです。ストライプ等の柄物はまだ何となくイメージできます。しかし、無地のものは本当に、イメージしづらいです。これが一般化してくると、そんなものかと思って買うようになるのかもしれませんが、今回はそう思えませんでした。あるいは、選んだ生地で作られた服をあたかも着ているかのようなARが現れる、という方向のさ更なる進化もありかもしれません。
 もう一点、あまり安くないです。私の場合ツーパンツ必須です。そして、生地は安いのだと35,000円ですが、ウール100%だと5万円です。パンツ追加は30%とのことで、計65,000円です。
 確かに、サイズ測ってもらって、サンプルの服をクリップで詰めたりしながら調整されたものの印象は非常に良かったのですが、時期尚早と思って見送りました。
 ちなみに、SADAというお店も軽く見てみました。まあ、あまり変わりません。ていうか、なぜこの期に及んでなお社長の名前をそのまま店名にしたのでしょうかね。

(3)オンリー
 神田店訪問。訪問というか、たまたま通りがかって、センスの良い展示がされていたので入ってみました。
 こちらもオーダーを前面に出していますが、展示もそれなりに豊富かつ洗練されています。
 こちらもやはり良い生地は高くなるなという印象はありましたが、それでもウール100%でも3万円台もあります。ちょっと良いスーツにしようと考えるときの選択肢としてはかなり良いかなと思いました。
 現時点での紳士服店の在り方として考えたときに、基本をオーダーメイドにするならば、同じ生地の商品を複数サイズ置く必要はなくて、あくまでもスーツとしての見た目を確認するために置いておく。そうであれば、もっと店舗はコンパクトでよいかもしれないですし、むしろおすすめコーディネイトを展示するスペースに使えるし、種類ももっと増やせるのでは、と思いました。
 もう少し迷ったらここを再訪するつもりでしたが、次の店舗で見つかったので、今回は購入には至りませんでした。

(4)青山
 秋葉原店、津田沼店訪問。
 先に訪問した秋葉原店は狭過ぎです。品数も少ないし、もしかしたら上に書いたような、1種類1サイズ展示を実現しているのかな、という雰囲気もなくはなかったですが、それを青山ブランドでやってはダメなのかな、という気がします。
 津田沼点は、ヨーカドー内の店舗ですが、よくある青山タイプでバリエーション豊富でした。店員さんに、グレーで探しているという話をしたら、これでもかという位に持ってきてくれます。これは黒すぎますね、こういう柄は嫌なので、無地かシンプルなストライプでツーパンツ必須です、と言ったら「分かりました~」のノリで、さらにドンドン持ってきます。しかも、全部試着して着心地も確認できる特定のサイズです。
 結局、定価(って意味あるんですかね)は結構高いのを5万円にしていただいて購入となりました。
 一つのサイズでこれだけ品数揃えている、というのはさすが、という感じですが、この方向で続けていくなら、いかに店員さんの手間を減らしていけるかでしょう。客としても、別に店員さんの手間をかけたいわけではないのですが、思わぬところから商品が出てきたりすると、お願いせざるを得ないなとか、裾直しはお願いせざるを得ないとかあるわけです。
 スーツ以外は結構裾直しもしないでOKだったりもするわけですから、裾の長さも何種類か用意しておいて、柄はこれ、裾はこれ、で注文できれば良いような気がしますが、どうでしょうか。

3.通販サイトへの展開

 長くなったので、本記事では続けませんが、通販サイトでのスーツ販売も避けては通れないチャネルですね。
 要するに、オーダーメイド2.0的な世界を目指すのか、ロングテールも意識した多品種超格安割切り品を提供するか、的なことでしょうか。

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