東大経済学部金融学科で学んだ内容

今回は筆者が大学時代を過ごした東大の経済学部金融学科の話をしていきたいと思う。
 
東大の経済学部は経済学科、経営学科、金融学科の3つに分かれる。
金融学科はその中でも歴史が浅く、2007年代後半にできた学科である。
経済学科では主にマクロ経済学やミクロ経済学更にはその応用としての国際経済学やゲーム理論を学習する。
経営学科では経営やマーケティング等を学習する。
それに対して金融学科ではいわゆるファイナンスがメインとなっており、会計やコーポレートファイナンスからリスク管理、デリバティブ等の金融工学の分野を学習することが出来る。
経済学科はどちらかと言うと真剣に取り組むのであれば研究者養成コースであり、経営学科だと少しライトな気がする。その点金融学科であれば割りと実務に直結した内容を学習可能であり社会に出てからも活かせる。
筆者は実際に現在の業務を行うベースとなっているのはこの時に学習した内容であり、金融学科で真剣に勉強して本当に良かったと思うことが多い。筆者クラスの発達障害持ちであればとっくの前に社会のレールから落ちていてもおかしくないのだが、そうなっていないのは金融学科で学んだ内容が実務的でかつ希少価値がそこそこあるものだからだと思う。
幸か不幸か筆者の場合は駒場時代に留年していたので、本郷では友人がおらず、学問に専念することが出来た(笑)
そんな感じだから、今お前は東大出ても金融機関で便利屋をやっているのだろうという批判はなしでお願いしたい。
それでは実際に筆者が学生時代に学んだ内容を振り返りたい。
全て列記すると数が非常に多くなるので印象に残ったもののみ記す。
 
【財務会計】
会計の基本的な内容は駒場時代に学習しているためここで扱うのは応用的な内容ばかりである。
筆者が覚えている内容としてはM&Aの際ののれんの取り扱いやIFRSとUSGAAPとJGAAPにおける会計処理の差異などである。B/S上の資産と負債の定義といった内容も扱った記憶がある。
会計士試験に直結するような予備校的な内容というよりかは、もう少し会計学とは何かといった学術的な側面を有する講義内容であった。
 
【コーポレートファイナンス】
ここでは企業価値評価の基礎(DCF法)やWACCの計算方法に関して学んだ。マーケット業務ではなく、投資銀行業務に直結するような内容であるが、コーポレートファイナンスの基礎をここで学べたのは証券アナリストの勉強などで役立った。
 
【デリバティブ】
当該授業で初めてオプション、スワップ、先物などのデリバティブ商品の理論を身に着けることが出来た。最初に聞いたときは二項モデルもよく分からかったが、粘り強く考えていくと何とか理解できた。確か宿題としてジョンハルの「フィナンシャルエンジニアリング」の章末問題を解いてレポート形式で提出していたと思う。
 
【統計学】
駒場の基礎科目として統計学は履修済みであったので、当該授業では更に応用を取り扱った。色んな分布の平均と分散を計算したり、最尤法などを取り扱った記憶がある。この授業も最初はよく分からなかったが、講義プリントが充実していたので最終的には何とかなった記憶がある。当該授業を受講したことで、今流行りのデータサイエンスの理論的なバックグラウンドも理解できるし、何より業務でも統計学の知見はかなり役立つ。
 
【金融機関のリスク管理】
当該授業は某メガバンクが東大経済学部にて公開していた授業である。
金融機関のリスク管理の基礎的な話から最新の金融規制の動向や先進的なリスク管理の手法に関して述べていた講義であり、筆者は今でも当時のレジュメを大切に保管している。Varのような金融機関では当たり前に活用されているリスク管理の手法やCDSのような複雑なデリバティブ商品、はたまた当時では最先端ともいえるCVA(Credit Valuation Adjustment)の話題も取り上げられていたので、内容としては非常に充実していたと思う。
当該授業を受講したことで、将来的には自分自身も何らかの形でマーケットに携わりたいと考えるようになった次第であるので、感謝するべきなのだろうか(騙されたという考え方も出来る)

【国際金融】
こちらはマクロ経済∔ファイナンスのような授業であった。
国際金融のトリレンマとか為替レートの決定要因などを学習した記憶がある。また日銀やFedなどの中央銀行の政策はマーケットに大きな影響をもたらすが、その政策決定がどのようになされているかに関しても学習した。
筆者は基本的に社会人になってからマーケット関連の職種に就いている期間が長いが、マーケットを見る際には、まずはマクロ的な観点で大枠をとらえ、そこから労働市場や物価動向などの細かいところを見ていくので、当該授業でマクロ経済の大枠を学習出来たことは現在でも活きており、当時の教科書は大切に保管している。
 
【保険数理】
こちらはアクチュアリーの実務内容に関する講義であった。伝統的な責任準備金の計算の仕方や保険会社のALM(Asset Liability Management)のような内容も学習した。また現在では一般的にはなってきているかもしれないが、保険会社の経済価値ベースでのリスク管理に関しても言及しており、割と最先端の内容を扱っていた。
金融工学∔統計学∔保険数理の合わせ技のような感じであった。

他にも演習形式の講義でプログラミングを用いてデリバティブの価値評価を行ったり、企業の配当政策や自社株買いの是非とかとかく色んな内容を学習出来た。
それらは全て現在に役立っているし、東大の経済学部の金融学科はきちんと勉強すればかなりの地力は着くのではないかと思う。

1点補足するとすれば、いずれも数学の力はかなり必要で、筆者の場合は高校時代に数学3Cまで勉強していたことや、ボッチで駒場時代を過ごした際に、大学レベルの数学をがっつり勉強していたおかけで問題なくついていけたが、そうでない場合は、結構ハードルは高いかもしれない。
経済学部金融学科で一番必要なのは実は微分積分や線形代数を含めた数学なのではないかと思う。

ただ、筆者を見て頂ければ分かる通り、別にこういう勉強しても稼げないんですよね。。。。
結局今の日本で稼ぐには、医師免許を取得したり、陽キャで総合商社に入ったりすることが一番近道なので、あくまで筆者の勉強履歴は自己満足の域を出ない趣味のようなものであるということは肝に銘じる必要がある。