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ミライの小石03. 「環境に優しく」と「人に優しく」が、対立する未来?

最近、耳にすることが多い「ヴィーガン」。動物の肉に加え、卵や乳製品も含めた動物性食品をいっさい口にしない「完全菜食主義者」を指す言葉ですが、もともと、1944年にイギリスにてヴィーガン協会が設立されたタイミングで命名されたといわれています。

そんなヴィーガンの生まれ故郷であるイギリスのとあるレストランが、「ヴィーガン向けのケータリングサービスをやめてしまったレストラン」としてニュースに取り上げられています(※1)。
どうやら、このレストランでは、以前よりヴィーガン向けのメニューやケータリングサービスを提供してきたらしいのですが、ヴィーガンのお客さんのあまりに偉そうな態度に辟易して、それらをやめてしまったようです。記事では、「顧客の尊大で『あなたよりも道徳的に優れている』という態度にうんざりした」というレストランの声を紹介しています。このお客さんは、「ヴィーガンの私は偉くて、ヴィーガンではない人々は劣っている」と思ってしまったのかもしれませんね。

SDGsが一般用語となり、環境、健康、人権などに配慮することが当たり前になった昨今。確かに、「配慮に欠ける言動や行動」は、後ろ指をさされる対象になってしまうのかもしれません。
しかし、少し考えてほしいのです。いまでも、有機栽培の野菜は他の野菜よりも高いように、また、ヴィーガン対応のメニューは、そうでないものよりも高いように、何かに配慮した食品や製品は、一般的に、コスト高となる傾向にあります。
例えばフランスでは、放し飼いで育てられた鳥の卵が「ケージフリーエッグ」として、通常のブロイラーの卵の2倍程度の値段で売られています。しかしながら、当然、全員が高い卵を買えるわけではありません。経済的事情によって、通常の卵しか賄えない人もたくさんいるでしょう。その時、ゲージフリーの卵を購入している人たちが、それらを買えない人たちを「劣っている」と思ってしまうとすれば、、、新たな差別、社会的排除のきっかけになってしまうのかもしれません。

「誰も取り残さない」ことを理念として掲げたSDGsが、新たな排除を生むようなことが無いようにするにはどうすればよいのか。少し未来にやってくる、新たな課題なのかも知れません。

参考
※1 「ビーガン向け料理を配達停止したレストラン 原因は『顧客の尊大すぎる態度』」―Sirabeeリサーチ https://sirabee.com/2022/08/25/20162922599/ 2022年8月25日

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