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ミライの小石02. 人間は「声なきもの」の代弁者となれるのか

2019年、ユーグレナ社は「会社として未来を持続可能な形に変えていくために、未来を生きる当事者である世代が経営に参加していくべき」との考えから、18歳以下を対象としたCFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)のポストを新設し、大きな話題となりました(※1)。こうした、これまでは経営に関与していなかったものの声を取り入れる動きはどこまで拡大していくのでしょうか。

2022年9月末、その兆しになる動きがみられました。ボディ&ヘアケアブランドを展開するスコットランド企業Faith In Natureが、会社の定款を改正し、「自然」に他の取締役と同じ議決権を与えたのです(※2)。「自然」に事業戦略に対する法的発言権を与えた企業は、同社が世界初とのこと。もちろん、現実的には「自然」が発言することはできないので、取締役会には、自然界を代表して発言する社外取締役が参加します。

一方、オランダでは子牛と一緒に暮らす母牛のミルクが「Kalverliefde」(calf love)ブランド名で発売されました(※3)。通常、乳牛の子牛は、生後数分から数時間後に母牛から離されてしまいます。それが乳量を増やすからです。生まれてすぐに離れ離れにされてしまうはずの子牛と母牛が一緒にいられるなんて、と多くの人が温かい気持ちになるのではないでしょうか。そんな愛情にあふれた母牛のミルクなら、プレミアム価格を払ってでも買いたいという人も少なくないでしょう。

しかし、誰が子牛や母牛の声を聞いたのでしょうか。母牛と子牛は一緒にいた方が幸せ、という考えは、(私もそう信じる一人ですが)もしかすると人間の思い込みかもしれません。自然や動物を始めとする「声なきもの」の声を聞くはずが、結局のところ人間の声だった、ということが起こらないとは限りません。「声なきもの」の代理人となる人間の翻訳能力をどう測るのか、さらにいえば、人間は代理人としてふさわしいのか(忖度が生じないAIを代理人とするべきなのかもしれません)など、あらたな問いが生まれそうです。

注(リンク先の閲覧日はいずれも2023年1月22日)
※1 ユーグレナ社、未来を一緒に変える18歳以下のCFOを募集開始―株式会社ユーグレナ 2019年8月9日
https://www.euglena.jp/news/20190809-2/

※2 Eco beauty company ‘appoints nature’ to its board of directors―The Gurdian 
https://www.theguardian.com/environment/2022/sep/22/eco-beauty-company-faith-in-nature-board-directors

※3 Koe en kalf lekker langer samen met―kalverliefde
https://kalver-liefde.nl/

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