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ホタル生息地での奇妙な体験

去年見つけたホタルの生息地を今年も訪れることにした。その地域では有名な生息地だから「去年見つけた」というのは大袈裟で、「去年知った」程度の言い方が妥当か。

現地に到着するとすぐに、闇の中でルシフェリン-ルシフェラーゼ反応が生じていることが確認できた。昨夜の雨で湿度が高く、しかも風が無い。絶好のホタルの夕べであった。 既に何人かが見物に訪れていた。その中に 「今年は多いなあ」 と呟いている男性がいたので「多いですか」と声を掛けてしまった。

ホタルを撮るのは難しい

男性はこの生息地の保護活動ボランティアの一員だという。私は静岡から来た者で、この生息地を訪れるのは去年に続き二回目であると自己紹介したところ、ホタル談義が始まった。

やがて、すぐそこにとても良い場所があるが、行ってみませんかと誘われ、それに応じてしまったのだった。すぐそこ、というからこの自生地が属する公園内のどこかだろうと思っていたが、男性は公園の外へと出ていく。私よりもだいぶ年齢が上と見えたが、驚くほどの早足だった。

去年私が来たときには気付かなかった観察ポイントを途中で指摘され、さすが保護ボランティアのメンバーだと感心するなどしたが、「すぐそこ」にはいつまでたっても着かない。やがて男性は山道へと進み始めた。全く人工照明の無い山道は、散策道が整備されていたものの、歩行は困難であった。ただでさえ暗くて歩きづらいが、男性の早足が緩むことはなく、むしろ加速していく。いや、既に早足ではなく、走っていると言うべき速度だ。だんだんと付いていくのが難しくなってきた。

気がつくと、見知らぬ山の中で一人立っている自分に気付いた。男性の姿はない。呆然とする。

「ここは一体どこなんだ?」

その夜以降、ホタル生息地から帰ってきた私の姿を見た者は無いという

…的なことがあったら面白かったのだけど、ものすごい早足で真っ暗な山道の中につれていかれたのは事実。 いや面白かったw

いつのまにか私の扱いが、「わざわざ静岡から来たホタルの専門家」みたいになっていて、電話でボランティア活動の会長さんを召喚することになったりしてちょっと困惑した。
生き物好きの単なるモブキャラなんですけど…

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