あるべき少子化対策予算の議論とは? とあるポッドキャストへの感想

ようやく少子化対策予算増が主要なテーマとして国会で議論されるようになった。
首相が「倍増」だとか「異次元の…」とか声高にアピールするのだが、
「どこまで本気なのか?」
いまひとつ信用する気になれないのは困ったことだ。

では、いったい何がどのくらいハッキリすればすっきりするのか?
このポッドキャストを聴くとだいぶ整理されたような気がした。

特集「出生数、初の80万人割れ。少子化対策に必要な道筋とは?」

柴田悠×末富芳×荻上チキ×南部広美
(2023年3月2日TBSラジオ『荻上チキ・Session-22』)
https://www.tbsradio.jp/articles/66805/


いうまでもないことだが、議論されるべきは次の3点である。
1) どんな政策を実施・拡充すべきか、
2) どれくらい支出すべきか、
3) その負担を誰にどう課すべきか。

■エビデンスのある施策から


第一のどんな政策メニューを実施・拡充すべきかということに関して柴田悠氏は、エビデンスが確かめられているメニューは少なくそれだけに限るべきではないと断りつつも、すでに効果が確かめられている施策に力を入れるのは当然と捉えているようだ。

国内で出生数を上昇させる効果が確認されているのは保育園の定員増ぐらいで、出産一時金や子ども手当にもそれほどはっきりした数値でないにしても、影響を与えているという研究があるという。

■保育スタッフの処遇改善や学童保育も


保育スタッフの待遇改善が実施されなければ保育園の定員増もできないだろう。柴田氏は待遇改善のための予算も含めて試算を示していた。子ども手当ばかりでなく、やはり保育園も、そして学童保育も忘れずにキチンと議論して欲しい。

■フルタイムで就労中でなくても保育園に


末富芳氏は、「要介護4ぐらいではないか」と言って乳児の子育ての大変さは介護に匹敵すると強調。皆が安心して親になるためには、社会から必要な支援の手がすぐに差し出されるようでなければならず、親が働いていない場合でも1~2歳の子どもが全員入れるような保育制度が必要だという。

私の住むさいたま市でも、保育園に入れるようになったのは、両親がほぼフルタイムで働いている場合だけで、これから求職活動しようとする場合や、短時間勤務から始めようするケースも見捨てられたままであるのは気になっていたところだ。出産前後に退職した母親から見ると保育園からはまったく相手にしてもらえないというのが現状である。

■資産関連税の引き上げが妥当?


柴田氏も末富氏もどちらも財源としては資産関連税の引き上げを念頭に置いているようだ。政府はいま金融資産への課税を引き下げているようなので、とすれば相続税や不動産関連の税率の引き上げということになるだろう。不動産を売る人が増える一方で、賃貸価格の引き上げにならないかとも思うが、この点はどう評価すれば良いか、正直言って私にはよくわからない。

■子育て世帯の財政を改善する効果も正しく評価を


末富氏の話で最も共感したところは、保育園をはじめとする子育て施策が、消費財でも住宅でも消費を増やし景気や財政収入を改善する効果があることがキチンと評価されていないという指摘だ。

さいたま市に保育園や学童保育への支出増を求めると、あたかも財政支出が増えるだけだとも言わんばかりの議論になる。中長期に見れば所得税・不動産関連税といった地方財政を支えるのは間違いなく子育て世帯だ。社会が子育てを支え、子育て世帯が社会を支えているというイメージを誰もが共有しながら、未来像を描くこと。それが中心に据えられた議論をしなければならないと強く感じる。


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