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理解はされない、できないというスタンスで・・・

脱力して楽になれる『壁』シリーズ

昨年から養老孟司先生の本を本屋で見つけると購入して読んでいるのですが、先日こちらの『「他人」の壁』を読みました。こちらは、おなじみの養老孟司先生と精神科医の名越康文先生の対談形式の本です。

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『バカの壁』に始まる『壁』シリーズ(勝手にそう呼んでます)を読むたびに、世の中の人間関係のガタゴタや自分自身の面倒くささの本質のところに気づかされ、わざわざ自分で物事を難しくして疲れていることがわかります。そういったことに気づくと、そんなに考えなくても良いという気分になり、力が抜けて少し楽になります。

分かる必要がない!

冒頭、一番最初の書き出しが、以下のものです。

名越:他人の気持ちを理解したい、あるいは相手のことがわからない、どうしたら人を理解できるのかと悩んでいる人が、今の時代には非常におおいようですね。

養老:僕に言わせると、なんでわからなきゃいけないのかという話なんですけどね。わからなくたって、お互いがぶつからなきゃいいだけなんですよ。自分はこっちに行くけど、あなたはあっちへ行く。そういうことでまったく問題ないし、人ってそういうものだと思いますけどね。

その後、人が他人を理解できない理由として、『前提が違うから』ということをおっしゃっています。例えばということで、

猫が苦手な人に、猫のおもしろさを延々と語っても永遠に伝わらない。なんでこの人、せっかくこんなに話をしているのに、言葉を尽くしているのに、反応が薄いんだろう、こっちの言っていることが心に刺さらないんだろうって。当たり前なんです。猫に関する前提が根本から違うんだから。

と述べられています。

ではなぜ人は、他人にわかってもらいたい、わかりたいという衝動に駆られ、結果、衝突が起きて、最終的にストレスをためてしまうのでしょうか。

『脳化社会』の弊害

そういったことの原因のひとつとしては、人間におそらく普遍的に備わっている『承認欲求』があると思います。人間は群れどころか、社会を形成する動物ですから、やはりひとりでは生きていけないし、その社会の中で、自分自身を承認してもらいたい。それにより安心を感じるのだと思います。

その一方で、人間は頭(脳)で考えて、様々なものを作り、様々な問題を解決し、様々なことを理解してきたという前提もあるのではないでしょうか。ですから、対人関係においても、頭(脳)で考えることで、相手のことを理解できる、または相手に対して、自分のことを理解できるはずというふうな先入観を持ってしまっているのではないかと思っています。

さらに、考えれば考えるほど、自分の中にルールやあるべき論のようなものが出来上がってしまい、余計に他人と理解しあうことが難しくなってしまうということもあるのかと思います。

養老孟司先生は、『バカの壁』をはじめ、これ以外の著書でもそういった頭(脳)で考えた、若しくは意味があると思うものだけに価値があると凝り固まってしまっている社会を、『都市化』そして『脳化社会』というふうに呼んでいます。頭(脳)の中で考えることだけですべて決まってしまう、人間に備わっている五感が失われていくことに警鐘を鳴らしています。

黙って山や森へ行け!!

養老先生は、『都市、脳』の反対にあるものが、『自然、身体』ということもよくおっしゃっています。この本の中では、

山へ行って石につまずいて転んだら、「なんでこんなところに石があるんだ」と怒るんです。でも、自然には石があるんですよ。意味なんかなくても。人間の側が気をつけて歩くしかない。ところが今の世の中は意味のあるものしか価値がないと思っている。すべてが意味に直結する社会。それを情報化社会というんだけど、意味のないものを全部なくした1つの象徴が、たとえばオフィスでしょう。会社の無機質な会議室。あそこには意味のあるものしかない。机と椅子とホワイトボード。せいぜい花が飾ってある程度。それと対照的なのが、山とか森ですよ。自然の中にあるのは、都市文化には意味のない無駄なものばかりですから。

ということを述べられていて、時には黙って自然の中に帰ることを勧めています。たとえ自然が大事だと言っても、現代の社会から原始時代のような社会に戻るわけにはいかない。だから、都市の中で生きていくとしても、時には自然に身体を置くバランスも大事なんだと思います。

対人関係に戻ると、相手が言ったことの意味を理解しようとすること(理解してもらいたいと思うこと)も大事なことかもしれませんが、でも一方で『人(他人)はまあそんなものだ』と、ある意味脱力してやり過ごすということも大事なんだと思います。常に整合性がとれていないといけないと思うことが、人を苦しめるのかもしれません。

そうしてさらっとかわす余裕がないなと感じる時が、山や森に行く、身体を自然にさらすべきタイミングなんでしょう。対人関係がギスギスして、人にも言えないような問題を抱えている人に対して、

『今すぐ行けっていう話です。行ってしまえば即座に思うからね。そんな問題なんてどうでもいいんだって。』

とおっしゃていて、私もまさにそうだなあと思います。

ちょうど明日から、ワーケーションという都合の良い理由をつけて、福島の森に泊まりに行くところでした。緑の中で脱力してきたいと思っています。

私が『生命保険セカンドオピニオン相談』を行っている、株式会社ライフヴィジョンのホームページです。『シンプルイズベスト』がテーマ、そして『易しく、優しい(わかり易く、財布に優しい)』をモットーとした、生命保険の活用をお勧めしています。
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