社内の人種差別告発で La Marzocco が炎上

一時雇用停止措置が解除され、今週から仕事に復帰してバタバタ過ごしている今日このごろです。お昼休憩にインスタグラムをチェックしていたら、とんでもない投稿が目に入ってきました。

エスプレッソマシンメーカーのマルゾッコ社が炎上しとる。


周辺状況をチェックしたものの、事実は大幅に伏せられていてわかったことはとても少ないのですが、ひとまず時系列順に情報を整理します。

5月25日、アメリカ・ミネソタ州において、黒人男性が白人警官による過剰な拘束行為を原因として死亡するという事件が発生しました。これに端を発する人種差別への抗議活動が全米各地に拡大し、さらにその余波はSNSを通じて全世界に及んでいます。

6月2日火曜日には、#blackouttuesday というハッシュタグをつけた黒い真四角の写真を Facebook、Twitter、Instagram に投稿し、 Black Lives Matter ブラックリブズマター運動=黒人に対する根強い差別の存在とその周知、差別行動への抗議を表明するという運動が起こりました。

これに際してエスプレッソマシンメーカーのラ・マルゾッコ社のアメリカチーム La Marzocco USA が、インスタグラムに以下の内容を投稿しました。

La Marzocco USAは、私たちの国や世界中の黒人コミュニティに対する人種差別や暴力行為を非難していますが、感情的な言葉やキーフレーズだけでは十分ではありません。大きな変化の一端を担うために、企業として社内外でより多くのことをしなければならないとわかっています。
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今日、私たちは、積極的に活動している組織を支援することによって行動することを選択しました。黒人コミュニティへの暴力を止め、体系的な人種差別を解きほぐし、平和的な抗議の権利をサポートします。私たちの目標は、最大の影響を与えている国や地域レベルで活動している組織に資金を提供することです。(中略)これは小さなスタートにすぎず、解決策ではありません。私たちは、必要性が生じ、私たちが財政的に可能になったときには、組織を支援していきます。私たちはスタッフと協力して、平和的な抗議活動や街の清掃活動、心の健康のための時間などに参加できるようにしていきます。また抗議活動に参加している人たちを、ここシアトルのカフェを通じてサポートしていきます。私たちが解決策の一部となるために、内部的にも外部的にも変革することができるよう、コミュニティやスタッフとの会話を生み出すことにコミットしています。

この投稿についたコメントの一部がこちら。

―過去10年間に勤務した黒人の割合はいくらですか。
 (追記:La Marzocco社はこのコメントに対し4%だと回答した。)


そして、ここから流れが変わります。

―私は長い間、ラ・マルゾッコ社を信頼し尊敬してきました。(中略)今、私はイタリア本社の許しがたい、暴力的な反黒人文化と、その文化を長年放置し続けていたことを知って、愕然として心を痛めています。この恐ろしい事実についてきちんとした釈明を求めます。
―本社における人種差別的な労働環境をきちんと調査し、対処して下さい。そうでなければ、私はもう御社と御社の製品をサポートしません。(一部抜粋)


この次の投稿が、現在炎上しているLa Marzocco 社の公式声明です。

親愛なる皆様、

ラ・マルゾッコは、コミュニティ全体に開かれた文化を常に大切にしてきました。 今週、複数の従業員から人種差別的で攻撃的な発言が受けたと元従業員の一人から報告を受けました。私たちは事実確認を調査しており、その結果に基づいて適切な措置を取る予定です。調査結果に関わらず、ラ・マルゾッコの従業員による発言疑惑について、ブラックコミュニティ、コーヒー業界、そしてコミュニティ全体に深くお詫び申し上げます
また、Jenn Chen 氏と Michelle Johnson 氏を含む投稿者の方々に不当な精神的ストレスを与えてしまったことを深くお詫び申し上げます。彼らには直接連絡を取る予定です。
ラ・マルゾッコは、人種、宗教、性別に関係なくすべての人に開かれており、平等、多様性、尊重の価値観を守り、推進しています。ラ・マルゾッコは、現在アメリカで起きている人種差別をなくすための運動に賛同し、参画しています。ラ・マルゾッコでは世界中のどの拠点においてもすべての人と開かれた会話を歓迎します。ラ・マルゾッコは、感受性訓練を開発し、そのポリシーを強化することをお約束します。

現在、私たちは以下のような取り組みを進めています。
* 問題が存在する可能性のある場所を特定するために内部調査を開始し、問題を確実に解決するための解決策を見つける。
* 全世界のラ・マルゾッコ従業員の行動について、実行可能かつ強制力があり、結果が得られるようなポリシーを策定する。
* 多様性と受容(ダイバーシティ&インクルージョン)に関する研修を受けたハイレベルの委員会を設置し、全世界のラ・マルゾッコ従業員のレビュー(勤務感想)、採用方法や研修を発展させる。
* ダイバーシティ&インクルージョンの研修コースを全世界の拠点で実施する。
* 現在および将来にわたって、当社の価値観が一貫していることを確認するために、ダイバーシティ&インクルージョン活動の継続的な見直しを行う。

皆様のご協力とご支援に感謝いたします。皆様のおかげで私たちは成功を収めることができましたが、今後も皆様の信頼と尊敬を得るために責任感を持って前に進んでいきます。

ラ・マルゾッコCEO
Guido Bernardinelli

この声明文からは、元従業員からの社内における人種差別行為の告発があった、という漠然とした情報しか得られないため、まずは内部調査の結果報告を待ちたいと思います。

ダイバーシティ&インクルージョンについてはこちらを参照下さい


この投稿に関して、コメントを一部紹介しますと

―リンクドイン(ビジネス特化型SNS)上にマルゾッコ社の勤務者グループにいる88人の従業員と管理職全員が白人みたいだけど、どうやって多様性と平等を「促進」していくつもり?
―いちバリスタとして、人種差別主義者が経営する会社が作ったマシンを使うのは嫌です。イタリア本社のチームはどのくらい多様性がありますか?アメリカのチームは?採用方法の変更が実を伴っていて、形だけではないことをどうやって確認することができるのですか?
―ずっとこの会社が好きだったけど、間違いなくこれで信頼を壊しましたね... (中略)セカンドチャンスは必ずありますが、それ以上はありませんよ。今回の事件に限らず、もっと人種の多様性を高めて、もっと積極的にインクルージョンを推進してください。


以上のことから、一件目の投稿を受けて、元従業員が社内での人種差別の存在を告発し、それに対する釈明投稿(二件目)へとつながった、という流れのようです。それにしてもこの一週間で大きく世界が反人種差別へと動き始めています。特に世界規模の会社において人種・宗教・性別マイノリティとマジョリティのバランスがとれている会社って一体どのくらいあるんでしょうか。日本ではそもそもこういった議論を進められるレベルの企業は少ない気がします。

junko