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沖縄のそこらへんの木でも紹介しておけ! 番外編2 リュウキュウマツ

Pinus luchuensis(リュウキュウマツ)マツ科

リュウキュウマツの学名は「Pinus luchuensis」です。

種小名の語尾「ensis」は、現代では、ほぼ固有種に対して使います。

分類学の父、リンネが生まれたのはダーウィンの約100年前でした。
当時はまだ、種が分化していく経緯がわかっておらず、語尾ensisを
「その地方でよく見られる」程度の軽い感覚で使っていたようです。

広域には「地方」という呼称がしっくりきません。
大陸については、americana、africana、australisなどで対応していました。
ただし、chinensis(中国の)という種小名は頻繁に使われましたので、
面積にかかわらず、西欧目線でいう「地方」に用いるということでしょう。

ダーウィンの死から140年以上過ぎました。
現在では、隔絶が種の成立に特別な役割を果たすことは共通認識です。
隔絶を作る要因の中でも、地理要因は特に大事なので、
種小名に地名を入れるときは慎重にします。
たとえば、単に「日本に自生している」と表現するときは「japonica」、
「日本固有。他にはない」と強調するときは「japonensis」で申請します。
規約ではなく、固有種の概念が広まるにつれ、そうなったという印象です。

日本はがっつり海に囲まれています。
もし、淡水魚にensisの命名がついていたら、
「ああ、きっと海に出られなくて隔絶が起きたんだな」と考えます。
もし、鳥にensisの命名がついていたら、
「ああ、飛べないか、渡りが苦手で隔絶が起きたんだな」と考えます。

固有種がとくに成立しやすい環境というのがあります。
そのような土地で発見された動植物の学名には、ensisの語尾が頻出します。
たとえば、世界遺産、ナマクァランドの植物の学名はnamaquensisまみれ、
世界遺産、小笠原諸島の動植物の学名はogasawaraensisまみれです。

前置きが長くなりました。
種小名「luchuensis」は「琉球(固有)の」という意味です。

ローマ字読みするとルチュェンシス → リューキューエンシスです。
Pinus luchuensisという学名は「琉球(固有)のマツ」を表しています。
「沖縄」の学術上の地理名は、昔も今も「琉球」です。

*ヤエヤマヤシの学名は、Satakentia liukiuensisだそうです。
 スペルを変えると検索から外れそうですが、大丈夫でしょうか。
*以下の案件は、luchuensisで落着したそうです。
 黒麹菌の学名が Aspergillus luchuensis になりました
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan/110/2/110_64/_pdf

なお、東京固有と言いたいときは「yedoensis」とします。
東京に固有種なんてあるのかって? 
雑種の身分でワシントンまで行った、
Prunus × yedoensis(品種名ソメイヨシノ)があります。
江戸っ子が愛するサクラ、都花でもあります。


1967年、リュウキュウマツは、沖縄の県の木に指定されました。

県の木であるにもかかわらず、今回、僕はリュウキュウマツを
ランクインさせませんでした。

現地で見ていたはずです。写真に写り込んでいます。
ですが、観察していませんでした。
観察していないので、まともな紹介を書けません。

マツは好きです。
実家にPinus coulteri(オオミマツ)の松ぼっくりを飾っています。
マツの防風林や名木も見に行っています。
迎賓館の入場を許されたときは、タギョウショウを観察していたりします。

たぶん。リュウキュウマツは風景になじむ木です。

視界を塞がない。通行を邪魔しない。
リュウキュウマツの林は明るく、風が通り、開放的です。

気に障らないこと、リュウキュウマツのごとし。

これから沖縄を訪れる方は、
「存在に気づかないほど、風景によくなじむマツがあるらしい」
という視点で、なんとか認識に上らせてみてください。

Googleのストリートビューで海洋博公園を歩きました。
リュウキュウマツは開けた場所で育つと枝先がテーブル状になるようです。
リュウキュウマツの明るい樹林  海洋博公園、じんぶんbox近くの遊歩道(Google画像)
海洋博公園公式サイト(https://oki-park.jp/kaiyohaku/plantsbook/detail/6717)で
リュウキュウマツの紹介に使われていた場所(Google画像)
ストリートビューの映りは撮影時の時刻や天候に左右されます。
左:カメラに映り込んだリュウキュウマツ(2月)  右:ストリートビューの拡大(7月)
リュウキュウマツの幹(Google画像)


観察したかったです。
せめて松ぼっくりがひとつでも落ちていたら。

サカタのタネ 家庭菜園・園芸情報サイト、東アジア植物記より引用
https://sakata-tsushin.com/yomimono/rensai/standard/eastasiaplants/20191023_007897.html

小杉先生・・・(汗)

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