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シナリオローカライズしてみよ!〜Claude3とChatGPTとDeepLで翻訳比較〜

Claude3の性能がスゴイ!ということで、お蔵入りしているゲームシナリオでローカライズの検証をして遊んでみました。
検証した人は言語表現って面白いよね〜と思っているだけの人で、何の専門家でありませんのでご了承ください…!


今回検証する知的な皆さんはこちら。
Claude3 Opus(有料プラン)
ChatGPT-4(有料プラン)
DeepL(無料プラン/5000文字上限)

ClaudeとGPTには人物設定を簡単に説明、DeepLには用語集に固有名詞の登録をした上で、日本語シナリオ5000文字の英訳に挑んでもらいます。
シナリオはこんな感じで、話者表示なしのセリフのみ記載したものです。

「ん? 声が……」
「ちがうんです、わたし、本当に何も知らなくて――」
「あ、いたいた。こんにちはー! 」

まずはスピード勝負!

Claude3 【2分】
ChatGPT-4 【4分50秒】※中断あり
DeepL 【10秒】

圧倒的DeepL。
ただDeepLはあくまで学習能力の高い翻訳ツールです。
チャットボット2つとは行う処理が違うのを念頭に置くとして…

それで言うとClaudeがめっちゃ速いですね!
GPTは5000文字あると3分の1くらいで一旦力尽きてしまうので、2回Regenerateを押さないと全部は生成しきれませんでした。
ユーザーが多いのでサーバー負荷もあるのかもしれません…?

簡単な会話はどう?

田舎のお屋敷見学に来た、普段は都会で大学に通っている主人公。
彼が屋敷の主人(桜井氏)に質問するシーンを見ていきましょう。

「桜井さん、さっきから気になってたこと聞いていいですか?」
「ん……何だい?」
「この壁の飾りって、本物の動物……ですよね」
「ああ、トロフィーのことか! そう、かつてこの野山を駆け回っていた牡鹿だとも」

上からClaude(C)、GPT(G)、DeepL(D)の順に、1セリフずつ並べてみます。

「桜井さん、さっきから気になってたこと聞いていいですか?」
C: Mr. Sakurai, I've been wondering about something since earlier...
G: Mr. Sakurai, can I ask something that's been on my mind?
D: Mr. Sakurai, can I ask you something that has been bothering me since a while ago?
ここはどれでもよさそう。DeepLがちょっともったいつけてる感じ?

「ん……何だい?」
C: What is it?
G: Hm... What is it?
D: What is it?
GPTだけ「ん……」を訳してくれました。

「この壁の飾りって、本物の動物……ですよね」
C: Those animal trophies on the walls...they're real, aren't they?
G: These decorations on the wall, they're real animals, right?
D: This wall decoration is a real animal ......, isn't it?
Claudeの主人公、トロフィーって単語知っとる!

「ああ、トロフィーのことか! そう、かつてこの野山を駆け回っていた牡鹿だとも」
C: Ah, the taxidermy! Yes, those used to roam these very mountains.
G: Ah, you mean the trophies! Yes, those are stags that used to roam these mountains.
D: Oh, you mean the trophies! Yes, a stag that used to run around these fields and mountains.
トロフィーを知っている主人公に剥製という単語を教えることで解決。でも「牡鹿」が消えました。

早速Claudeが変化球を投げてきました。
この中だと一番イメージに近い訳をしてくれたのはGPTかな。

説明ゼリフはどう?

お屋敷での過ごし方について、主人が説明するシーンです。
お屋敷には紅葉佳乃子・武里礼央という使用人がいます。

「そうだね、館の外については紅葉、中については武里に任せている。ただ使用人たちはどこにいるかわからないことが多いから、何か困ったらまず私に声を掛けてもらえるかい? 基本的に私はこの部屋の向かい、馬の間にいるはずだから。はい、館内図を渡しておこう」

これも切り分けつつ見ていきましょう。

「そうだね、館の外については紅葉、中については武里に任せている」
C: Kanoko handles the outdoors while Reo the indoors.
G: The exterior is managed by Momiji, and the interior by Takesato.
D: Momiji is in charge of the outside of the house, and Takezato is in charge of the inside.
日本語の苗字呼びを無視して名前で呼ぶClaudeである。

「ただ使用人たちはどこにいるかわからないことが多いから、何か困ったらまず私に声を掛けてもらえるかい?」
C: However, the servants often wander so it's best to find me if you need anything.
G: However, since the servants are often out of sight, if you need anything, could you first reach out to me?
D: The only thing is that the servants often don't know where they are, so if you have any problems, you can call on me first.

「基本的に私はこの部屋の向かい、馬の間にいるはずだから。はい、館内図を渡しておこう」
C: I'm usually in the Horse's Chamber across from this room. Here, let me give you a map of the manor.
G: I should be across the hall, in the Horse Room. Here, I'll give you a map of the mansion.
D: Basically, I should be in the horse room across from this room. Yes, I'll give you a map of the building.

うーん、これはClaudeがいいかもしれない。
今回は勝手に呼び方を変えられましたが、チャットボットのいいところとして、「AはBを姓で呼ぶ」という前提条件を伝えておけば従ってくれます。
そもそもキャラの名前を設定として正しく認識しているから、こういうClaude側での調整ができるわけで。
おそらく主人は使用人を名前で呼ぶのが自然と考えたのでしょう。

そして地味にこの訳は、翻訳元に忠実すぎるというDeepLの弱点が見えるような気もしました。
三点リーダ2つ使うのは日本のルールなので、英語なら「…」でいいわけですが、律儀に「……」って書いてくれるからなあ。

複雑な会話はどう?

お屋敷に連れてきてくれたタクシー運転手と主人公が別れるシーン。

「オーナーさんも偉ぶらないひとでね、地域の関係をそりゃ大事にしなさってて……っと、はい、着きましたわ」
「お、ありがとうござい……高っ……!」
「田舎なもんで悪いねえ、ちょうどいただきましたっと。じゃ、楽しんでおいで。その橋だいぶ古いから、渡るとき気をつけてな!」
「……柏木教授め、タクシー以外の足がないなら先に教えといてほしかったぞ――よっと。おー、ここが……!」

お屋敷に到着したシーンでもあります。
話が途切れたり、前提すっとばしたり、悪態や独り言が入り混じったりしていますが、果たして…?

「オーナーさんも偉ぶらないひとでね、地域の関係をそりゃ大事にしなさってて……っと、はい、着きましたわ」
C: The owner's an unpretentious guy who values community ties...Oh, we've arrived.
G: The owner's a down-to-earth person, truly values the local community ties... Ah, here we are.
D: The owner is a non-pompous guy, and he really values community relations. ...... and here we are.

「お、ありがとうござい……高っ……!」
C: Whoa, thank you... Wow, it's huge...!
G: Oh, thank you... Wow, that's high...!
D: Oh, thank you ...... so much!
値段が「高っ」なんですが、これだけで判断するの難しかったですね…。
ある意味DeepLが正しいか。

「田舎なもんで悪いねえ、ちょうどいただきましたっと。じゃ、楽しんでおいで。その橋だいぶ古いから、渡るとき気をつけてな!」
C: Don't mind the countryside. We just got here. Enjoy your stay. But be careful on that old bridge when crossing it!
G: Sorry for the countryside charm, just got it perfectly timed. Well, enjoy your visit. That bridge is pretty old, so be careful when crossing!
D: I'm sorry I'm from the country, but I just got it. Well, have a good time. That bridge is very old, so be careful when you cross it!
直前の「高っ」が値段の話だと伝わっていないために前半総崩れ。

「……柏木教授め、タクシー以外の足がないなら先に教えといてほしかったぞ――よっと。おー、ここが……!」
C: Damn you, Professor Kashiwagi. You could've warned me there's no transport besides taxis...Whoa. Oh, so this is...!
G: Professor Kashiwagi, you should've told me earlier if there was no other transport... Alright, this is...!
D: ...... Professor Kashiwagi, if you don't have any other means of transportation than a cab, I wish you would have told me first--yotch. Oh, here is ......!
恨み節はいい感じでした。

当たり前ですが、情報が少ないシーンの翻訳はどのツールも苦手ですね。
ふわふわになっておりました。

結局どう?

翻訳精度はどれも高い!!
けど、物語の翻訳はやっぱり難しいので人間も見よう!!!!

シナリオの場合、書き方や文体との相性もあるかもしれませんね。

AIで一括翻訳→人間が加筆修正
という協力体制のローカライズはめっちゃアリだと思います。

チャットボットは提供した情報が多いほど意図通りの翻訳を出してくれるので、
キャラの性別・固有名詞の読み方・どのような口調で話すか・他のキャラをどう呼ぶか…などをあらかじめ渡しておくのがいいと思います。

…が、それをすると、今のChatGPTは大変重くなります。
最後まで翻訳できたか、途中で諦めてないか、見張っておくのは結構ストレス。
今は速度の観点でClaudeに軍配があがるかなあ…

というところで、今回の検証はおしまいです。
ここはこうだと思うよ!という点があれば、お知らせいただけると嬉しいです!

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