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「子供のみらいと音楽の教育」

schola坂本龍一音楽の学校、ムジカピッコリーノと音楽教育番組にかれこれ10年近く携わっている。そんな中で僕が子供に対して教育番組だからできるということを一つ見つけた。それは、歌う力でもなく、演奏する力でもなく、音楽を聴く力を訓練すること。

スコラもムジカも世界中のあらゆる音楽を題材にしている。世界の音楽の中には聞き馴染みのいいやつもあれば、なんじゃこりゃってのもある。実際僕はスコラをやる前までクラシックが全くわからなかった。でも、簡単なルールさえわかればその美しさや独特のユーモアに飲み込まれ、すっかりはまってしまった。アフリカ音楽を扱った時もそうだった。太鼓をボカスカ叩いてる音楽というイメージしかなかったけど、その太鼓がどういうパターンかしっかり認識できるようになると楽しく聞けたりする。

そう「認識」できることが大事なのだ。

僕は子供たちにいろんな種類の音楽を「認識」してほしいと思う。それは世界にはいろんな人がいるんだっていうことを無意識にわかることとおんなじことだから。いろんな音楽があるんだってわかるだけでも、意味を感じる。


ーーーさて、少し話変わってじゃあ僕はどのようにして、新たな音楽ジャンルを開拓しているか、新たな種類の音楽を「認識」しているかという具体的な方法をお伝えしたいと思う。2種類の方法を紹介する。

方法論1】あるジャンルの音楽の特徴を書かれた文献探し当てる。そしてそのルール特徴が具体的にその音楽の中のどこにあるのかを実例を探し当てる。

方法論2】逆に文献は気にせず、ひたすら聞き続け、音楽を体に慣らしてしまう。体が慣れると無意識に法則性とか特殊なポイントを勝手に探し出してしまう。

上記二つの方法を行ったり来たりすることで、いろんなジャンルを開拓してきた。

難易度が低いのは方法論1】。これは小学校でもできると思う。例えばベートベンの運命。冒頭の「ダダダダーン」というあの有名なフレーズ。

この曲の中にはそれにに似た音の形がたくさん散りばめられている。生徒にオーケストラの譜面を渡してみんなでそのフレーズを探して当てる。多分それだけでも盛り上がると思う。他にもいろんな音楽に応用可能。ルールを伝えてそれを見つけ出す訓練。いつのまにかその音楽に対する違和感がなくなっているはず。


つぎに、難易度高いけど【方法論2】
これは、かなり荒っぽいけど、僕のやり方としてはこれが真骨頂。
要はナウシカがテトに指を噛ませて「痛くない」ってやるやつ。よくわかんないですね。でも、あれを音楽のリスニングでやるのです。超ハードですけど超大事。

なんども聞き馴染みのない音楽を聞くことで、体を慣らして、心を開く訓練をする。最初は、こんなもんわかるわけねぇと体が思っていてる。でも、だんだん慣れてくるとおぼろげに見えにくる。すると、だんだんと恐怖心もなくなってくる。恐怖心がなくなるとまた新たな音が聞こえてくるとという循環に入る。

僕は10年前、ほぼまったく楽譜が読めなかった。(ま、今もそんなに読めないけど。)しかし、どうしようもない状況に追い込まれてたのは、スコラの特別編を作っている時。どうしても、自分がベートーベンの5番についてわかる必要があった。

僕はひたすら楽譜を見ながらベートーベンを聞いた。何十回も。冒頭2ページくらい動画ごらんください。

2、3回でわかること。
あたりまえだけど楽譜って左から右に進むんだな。

5回くらいきくとわかること。
いろんな楽器の譜面が縦に積まれてるのか。

10回くらいでわかること。
音符が縦に一直線に並ぶと、ジャン!ってなるんだな。

15回くらいでわかること
ダダダダーンでできてるとは聞いてたけどまじでこの曲部品の変形を組み立ててるんだな。

20回くらいでわかること
つーか、楽譜の見た目って映像編集ソフトにそっくり。いや、映像編集ソフトが楽譜の見た目を真似たのか!なるほどー。

これって、音のパズルなのか。

そうJPOPとかロックとかになれてると音楽を音のパズルだとか思えないはず。メロディがあって伴奏があると思ってしまう。でも西洋クラシックはそうじゃない。音のパズル的側面がある。というか、音をどんどん組み立てていって、大きなレゴブロックの建物作ってる感じ。いやーベートーベンすごい。というか西洋の芸術音楽は強烈だ。

とか思いながら本パラパラめくってると最初は気づかなかったフレーズが目に止まったりする。

「西洋音楽は紙に書くことで進化した芸術音楽です」

なるほど、書くからこそこんなに複雑なことができるのか。たしかに口伝だとこんなの伝えられないし実現できない。今の打ち込みも全部書くことがベースにあるのか。どちらが良いとかではないけど、紙に書いて作る音楽と、口伝で伝える音楽は全然違いますね。

書くことで実現した複雑さ。重ね重ね恐ろしや西洋芸術音楽。

そう考えると、クイーンのボヘミアンラプソディもその延長線上にある。紙に書かないとあんな複雑なコーラス無理だろうし、そもそもマルチトラック録音自体が、紙ではないけどテープに音を一つ一つ記録して重ねてるわけだから。

マルチトラックに関する記事はこちら→「MTRというタイムマシン」 https://note.mu/jumpeiishihara/n/n783aef45e84c

ーーー苦手だと思っている音楽を聴く回路を開くことは、つまり新しい考え方を受け入れることだったりするから、難しいこと。でも、それを受け入れ、そして、聞きくことができる音楽のジャンルを開拓することに意味があると、感じている。それは、思いもよらぬ考えと出会うことであるから。僕は子供達に思いもよらぬ考えを受け入れられる大人に育ってほしいと思っている。

日々、音楽教育番組をつくりながらそんなことを思っている。

音楽を「聴く力」は、立派な力だと思う。

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やったぁぁぁぁぁぁ!!!いい音!
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石原淳平

映像、文章、DJ。音楽を通して世界を見つめてます。代表作ムジカ・ピッコリーノ スコラ坂本龍一音楽の学校。 Twitter:https://twitter.com/junpeisaaaaan FB:https://www.facebook.com/100002949040707

#音楽 記事まとめ

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コメント3件

まさしくその通りだと思います。
音楽の法則性は、回数を重ねると認識できるようになるし、もっと言えば「自分で演奏することで」認識できる感覚、つまり「音楽の中に身を置く」もわかるのかなと。
作曲家それぞれにも特徴や法則があり、ラフマニノフの半音の進行なんかは、ほんとうに「らしさ」であるし、音楽はやっぱりいいものだなぁと何度目かわからない感慨を覚えます。突然失礼しました。
コメントありがとうございます!本当にそうですよね。僕すごく久しぶりにギターを買って弾いてるのですが仕事でレコーディングしてる時にまったく聞こえなかった、忘れていた響きを思い出して感動してます。音楽の中に身を置くっていう言葉素敵ですね。
音楽だけでなく、音の高低や強弱に関しても「認識するかどうか」が大事ですし、音楽以外の芸術文化にも通ずるものがあると思いました。少し言葉は悪いですが、芸術を理解するための教育・教養は人生を豊かにすると思いました。
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