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ボードゲームの面白さを形作るのはルールだけではない

ボードゲームデザイナーというと、ルールを考えるのが仕事というイメージを持っている方が多いかもしれません。箱裏にも、デザイン担当と言えばルールを考えた人、アートワークやグラフィック担当は見た目を作った人、という感じで担当分けされており、基本的には「ボードゲームの作者」と言えばルールを考えた人のことを指します。

しかし、面白いルールさえあればそれだけでボードゲームは面白くなるか、というと、そうではありません。ルール以外にも、ボードゲームを面白いと感じさせる為の要素はたくさんあります。

イラストとグラフィック・デザイン

アートワークと言われるものには、イラストレーショングラフィックデザインの2種類があります。イラストとはその名の通り、カードやボードに描かれるイラストの事で、一般的には、そのイラストが無くてもゲーム自体は成立することが多いものです。その為、ゲームデザイナーはイラストを「ゲームを飾るだけの添え物」と軽視しがちですが、とんでもないことです。

プレイヤーはプレイ中、カードやボードのどこを見ているかというと、多くの場合、まずイラストを見ています。イラストによってゲームを認識しているのです。例えば「ドミニオン」というカードゲームにおいて、プレイヤーはカード名ではなくイラストでカードを認識しています。その為、字が読めないような年齢の子供であっても、親がついて教えてあげると、「イラスト」と「効果」を関連付けて覚える為、遊べてしまうことがあります。

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ここでもし異なるカード間でイラストの色合いやレイアウトが似通っていたりすると、認識が困難になり、ゲームを「面白い」と感じることができなくなります。ドミニオンのカード・イラストは、その辺まで考えて選別されているように思います。

こういった「視認性」の問題はイラストだけでなくグラフィック、つまりアイコンのデザインやテキストのレイアウト配色フォント選び、文字の大きさ改行位置枠線の飾り付けなど、様々なグラフィックデザインにおいても同様に起こり得ます。

例えば余白が適切に設定されていないアイコンやテキストのレイアウトは、単純に読みにくいだけでなく、アイコン同士の関係やテキストとイラストの境界があいまいな為、必要な情報がパッと頭に入って来ません。余白とはつまり、情報のグルーピングです。関係のあるものを近くに寄せ、違うタイミングで参照される情報は少し余白を入れて離す、背景色をそこだけ変える、等の配慮が必要です。

フォントは特に小さい文字の場合、明朝体よりもゴシック体の方が読みやすくなりますが、長い文章を読ませる場合には明朝体の方が目に優しくなります。また、文字やアイコンが複数ある場合、重要なものは太く、大きく、そうでないものは小さくしてメリハリを出す事で、情報を見る順番が分かりやすくなります。色も同様で、「なんとなくかっこいいから」ではなく、ゲーム中、その色にどのような意味を持たせるかを意識した配色が大事です。プレイヤーは無意識にそれらを頼って情報を得ようとするからです。

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