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花ざかりの校庭 第36回 『ヤヌスの瞳①』





浅子は駅の地下にあるラウンジに彼を連れていった。
浅子は軽くビールを一口飲むと、福山に手を合わせた。


「ごめんね、何で携帯のメールアドレス知ってたか……、怖かった?」


福山は少し戸惑った。
当たり前のことだが、浅子を見ると別に構わない気がする。


「……つまり、田畑に聞いたんでしょ?」
「ううん、違うの。勝手に覗いたの」


ナーバスな顔つきをしていた。
「……俺、しょっちゅうメールしてるから」
と、福山は笑った。
「まぶだち……みたいな?」
浅子は呟く。


「ほら、俺、探検部ですから……ローマ銀貨を見るときも、考えちゃうタイプで」


浅子は旨そうにビールを口に含んだ。
「だから、彼にたどり着いた?」
「ええ」




「わかるな……私もそうだもん。勿論、彼のお祖父さんのこと話を聞いているうちに付き合いだしたんだけど」


       ★


「田畑と別れた?」
「うん」
「あいつに言ったんですか……」


あーっ、嫌だな、自己嫌悪しちゃう。
「悪し様というか」

「まいったな……私、この期に及んで同じ失敗を……」
「え?」
福山は浅子をじっと見た。


「……自棄になって」
自分から麻里に彼の電話番号教えてしまった……と彼女は言った。
福岡の彼の時と立て続けなんだ。


「二人、いたんですか、彼氏?」
「うん、福岡の男が浮気してたから、当てこすりに高志とつきあって」
「えっ?」
「だから、高志くんに酷いことしちゃったなって……」


「まるで私小説の世界じゃないですか」
福山は息をのんでいた。



「なんであんなやけくそな別れかたしてしまうんだろう?」

「自分を守るため?」
「えっ?」

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